今回はKB EAR F1のレビューです。第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。
BAはBellsing 92257。後から発売されたクリアの画像をTwitterで見ましたがそちらはBAが違うように見えます。このレビューは初期ロットブラックのものですのでご了承ください。
- 中華イヤホンには個体差・ロット差がよくあります。必ずしも本レビューと同様の音が出るとは限りません。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
製品仕様
- ブランド:KB EAR
- 型番:F1
- ドライバ構成:1BA
- インピーダンス:22Ω±10%
- 感度:105db±2db
- 再生周波数帯域:20Hz-20000Hz
- ケーブル端子:mmcx
- KBEAR F1
- 3,599円 – NexAudio 20/07/25
- $27.44 – Wooeasy Earphones / $36 – KBEAR Official / $35.51 – AK Audio 20/07/25
付属品はケーブル、イヤーピース2種類各3サイズです。
ハウジングは非常に小振りです。
若干漂う手作り感。左右の区別はないようなので、私はロゴが前を向くようにケーブルを取り付けています。
ステムは金属、先端のフィルタはパンチングメタルです。付属イヤーピースではもちろん問題ありませんが、ステムに返しや段差がないので合わない(抜ける)イヤーピースもあります。
ツイッターを見ている限りべっ甲飴カラーが人気だったようですね。mmcxやステムの根本の粗はべっ甲飴の方が目立たないかもしれません。
音質
箱出し
やや中高音域寄りでフラット傾向に近めのカマボコ型です。低音控えめ。 箱出しでもきれいな音が出ていますが低音が控えめでちょっとぼやけた感じもあります。エージングは必要とのことなのでさっそく鳴らしていきます。
エージング200時間~
エージングによって低音が少し強まり全体的に締まりも増し明瞭さが向上しました。付属ケーブルで聞いていきます。
付属イヤーピース(溝入りブラック)
KZの付属イヤーピースに酷似した溝入りの黒いイヤーピース(以下、溝入りブラック)です。低音が少しだけ膨らむ傾向があると感じます。
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- フラットに近いややカマボコ型
- 高音は刺さらないが再生環境によっては結構主張する
- 低音は控えめ
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは全域の音量差は大きくありません。低音が立ち上がってからは比較的フラットに近いややカマボコ型だと思います。
高音域はピークもしっかり出ていて金属音の主張がわずかに強めです。ただしスマホなど駆動力が足りていないと出切っていない感じがします。また、シングルBAで超高域が出ていないからでしょうか、伸びやかさときらびやかさは惜しい気がします。
中音域には気になる凹みはないようです。柔らかめな音色ながらぼやけていません。アコースティックギターの音などは特に良いと感じます。
人の声や物音は比較的現実の音に近く聞き取りやすいと思いますが、男性ボーカルのハスキー感や色気を感じにくくなった楽曲がありました。また、女性ボーカルの伸びやかさがあまり感じられません。ボーカルは近すぎず遠すぎず、歯擦音の強い英語圏の女性歌手でも刺さりは気になりません。
低音域は低価格シングルBAイヤホンとしてはわりと出ていて適度な厚みもあります。ただしあくまで「シングルBA機としては」なのでDDが出すような分厚さではありません。20Hz近くは音量的にかなり小さいです。私はあまり重低音好きではなくむしろ出過ぎは好まないため個人的には低音不足だとは感じませんが、シングルBAということを忘れて聞いてみればやはりやや控えめではあると思います。なおエージングで低音が出て締まる傾向があるので低音不足だと感じたら少し鳴らしてみると良いでしょう。
全域のアタック感が適度で強すぎず弱すぎず、立ち上がりは早すぎず遅すぎず。アタック感不足だと弱々しくなる楽曲でも不満なく鳴らしてくれます。低音が控えめなのにあまり不満を感じないのはアタックがしっかり出ているからかもしれません。
分離は良く定位はまずまず。音場はあまり広くありませんが狭いと言うほどでもありません。
付属イヤーピース(赤軸グレー)
- 溝入りブラックより中高域が伸びやか
- 溝入りブラックより音の距離感が近い
- 溝入りブラックより低音のアタック感が音量的にやや強い
溝入りブラックは音の響きがやや衰える傾向があるようで、赤軸グレーに変えると伸びやかさが少し向上し、ややきらびやかさも出るようです。
ボーカルが近い方が好みなら赤軸グレーの方が良いと思います。音の距離感は溝入りブラックよりも近いです。そのせいか同じ音量で聞いていると低音のアタック感が音量的に強く感じられます。
その他
装着感
耳にきっちり入れて角度を整えないと音がくもります。L字のハウジングからそのまま続く形の細いステムはジャストサイズのイヤーピースで栓をするような装着の仕方になります。ハウジングが軽いので耳穴付近への負担は小さいです。
私は耳掛け(SHURE掛け)で使用していますが耳からケーブルが外れた拍子にケーブルの重みで動いてしまうなど、少々ずれやすいです。
音漏れ・遮音性
遮音性は普通です。BAが完全に樹脂で包まれていてベントもないので、イヤーピースが耳に合っていれば音漏れも気にならないと思います。
ビルドクオリティ
音に影響はなさそうなもののBAが曲がっていたりハウジング形状が微妙にガタついていたりと言った個体差はあるようです。
再生環境と駆動力
スマホなど駆動力が小さい再生環境だとメリハリがなくなりました。スマホや安価なDAPで聞きたいならメリハリが強まるタイプの銀メッキ+銅線ミックスケーブルを使うと良さそうです。
画像のケーブルはYYX4807(Amazon/AliExpress)ですがAmazonではmmcx欠品です。AliExpressを使っていないなら後述するTRN T1をおすすめします。
付属ケーブル
音質的な相性は良いものの付属ケーブルは若干チープ。KB EAR F1の実力を出し切れていないのでリケーブルをおすすめしたいのですが、F1自体が安すぎるので実力を出し切れるケーブルを選ぶとケーブルの方がF1より高くなってしまうこともあります。また、耳掛けせずに使いたい場合、低価格ケーブルには選択肢が少ないです。
リケーブル(ストレート)
YYX4849(16芯銀メッキOFC)
16芯銀メッキOFCケーブル YYX4849(Amazon/AliExpress)との組み合わせでは高音も低音もわりとしっかり出て付属ケーブルよりも明瞭、情報量と解像度も向上し全体的に明るめの印象になります。KB EAR F1は音が締まり過ぎると音場が狭まる傾向があるのですがYYX4849は引き締まり具合が適度でバランスが良いです。
NICEHCK HCYCX-123(4芯銀メッキ高純度銅)
商品名に型番がないのでリファレンス番号です。NICEHCK HCYCX-123(Amazon/AliExpress)には4芯と8芯があり、こちらは4芯の評価です。
KB EAR F1の高音のピークとは異なる部分が少し強化されるようで金属音のきらびやかさが向上します。高音の主張が強めに出ている再生環境だと音色が少々キツくなるかもしれません。
低音は付属ケーブルより重くなった楽曲と厚みが減った楽曲がありました。低音域がごく部分的にわずかに弱っているのかもしれません。厚み重視なら向きませんが、すっきりしつつ高音がキリっとするので高音の主張不足だと感じるなら試す価値はあるのではないでしょうか。
リケーブル(耳掛け付き)
TRN T2(16芯銀メッキ)
16芯銀メッキケーブル TRN T2(Amazon/AliExpress)は高音強化傾向がありイヤホンの実力相応の高音が出るようになることが多いです。KB EAR F1と再生環境の組み合わせで高音不足を感じるなら改善できる可能性があります。
低音は付属ケーブルと同じかちょっと重いかというくらい。明瞭さ、情報量、解像度も向上しますので高音が欲しいならおすすめ。
ただしTRN T2のmmcxタイプはAmazonで品薄気味になっているようです。T2には色違いがあるので銀色以外も線材は同じはずですから、見つけたら他の色を買っても問題ないと思います。
NICEHCK TDY4(8芯銀メッキOFC)
8芯銀メッキOFCケーブル NICEHCK TDY4(Amazon/AliExpress)は安価(1,899円)でコスパの良いケーブルです。高音を強めすぎず低音は少しだけ厚みが出やすい傾向があります。KB EAR F1との組み合わせでは高音の主張具合は微妙に抑え気味のような気がしますが不満のない程度で、伸びは良いです。低音域は少し強化傾向で少しウォーム寄りに感じられます。
自然な空気感があり聞き疲れない音色です。付属ケーブルで足りなかったボーカルの質感に魅力が少し復活して自然さが向上します。安さ重視ならおすすめですが、付属イヤーピースではぼやけて聞こえることがあるのでイヤーピースも変えた方が良いと思います。final Eタイプ(Amazon欠品/楽天市場)のブラックが音場の立体感があって良さそうでした。
KB EAR 4833(8芯銀メッキ)
8芯銀メッキケーブルKB EAR 4833(1,999円)との組み合わせでは16芯ほどではありませんが情報量と解像度が向上します。安さ重視かつ耳掛けチューブ付きでも良ければ相性は良いと思います。予算が足せるなら他のケーブルの方がよりおすすめ度は高めです。
TRN T1(8芯銀メッキ&OFCミックス)
再生環境次第ではメリハリ不足になるためそれが気になる場合は銀メッキ+銅線のミックスケーブルが良いと思います。8芯金銀メッキOFCケーブル TRN T1(Amazon/AliExpress)との組み合わせでは全体的にくっきりとし、低域が少し重くなって中高域の伸びが良くなりました。音場はちょっと狭まるので気になるならイヤーピースを変えた方が良さそうです。
駆動力が十分な再生環境だとメリハリが過剰で自然さが衰えて音場も更に狭まる傾向があるため、スマホや低価格DAPなど音色が平坦に感じられる場合限定でおすすめします。
NICEHCK GCT4(4芯OFHC)
KB EAR F1は基本的には銀メッキケーブルの方が相性が良いことが多いと思うのですが、4芯OFHC NICEHCK GCT4(Amazon/AliExpress)との組み合わせでは高音もしっかり出ていて中高音域の伸びが良く一皮むけたようなきれいさ。GCT4にリケーブルすると付属ケーブルではフォーカスがぼやけ気味だと感じられるようになります。
ただし音の輪郭がふんわりとしていることで柔らかに広がっているように錯覚気味だったのか音場が少し狭まったように感じられます。また、GCT4は低音を強化しないタイプで付属ケーブルよりも低音域の下の方が出ない(30Hz以下はだいぶ聞こえにくくなる)ようで、低音が軽くなったと感じるかもしれません。
NICEHCK HCYCX-173(4芯銀メッキOFC)
AliExpressを使っている人には4芯銀メッキOFCのNICEHCK HCYCX-173もおすすめ。耳掛けが針金なのでストレートにして使うことができ、通常価格でも1,000円ほどと安価で音の相性も良いです。
高音の主張の程度は付属ケーブルと大きくは変わらず、低音が少し重くなります。付属ケーブルよりもややはっきりとした明瞭さです。音場が狭まるのでイヤーピースも変更した方が良いでしょう。
総評
ややカマボコ型で低音域の下の方と高音域の上の方は控えめです。高音のピーク自体は低くもないので金属音などもわりとちゃんと出ます。ただし付属ケーブルでは伸びときらびやかさは惜しいです。この辺りは低価格シングルBA機なので仕方がないのかなと。
所有する低価格シングルBA機の中では厚みがある低音が出ている方だと思いますが重みはそこそこ。リケーブルでいくらか強まりますがそもそも低音が強いイヤホンが好みな人にはシングルBA機はおすすめしません。
高音の主張具合は再生環境によってやや違いが感じられ、駆動力が小さいとメリハリがなくなる傾向がありました。メリハリが強化される傾向のある銀メッキ&銅線ケーブルに変えることで補うことはできますが駆動力が十分な場合はメリハリが効きすぎるので、平坦な印象を受ける場合のみミックス線を選択すると良いでしょう。
付属ケーブルで相性が良いと感じたのはジャズで、イマイチだと感じたのはボーカル曲全般です。声に伸びやかさがないため色気がなくあっさりしているというか、魅力が衰え気味に感じられました。しかしこの点はリケーブルすることでかなり改善できます。いかんせん付属ケーブルがチープです。
音の輪郭はやや柔らかいもののぼやけてはいませんし、くもりもありません。自然だと感じられる程度の情報量と解像度ですがこれも付属ケーブルのチープさが影響しており、リケーブルすることで向上させることができます。
リケーブルしたKB EAR F1は明瞭で、情報量と解像度も向上、付属ケーブルで不満に感じていたボーカルの味気なさも改善し、アコースティック系楽器との相性が更に良くなります。低音ドンドンが欲しい楽曲以外なら幅広く合わせやすくなりますしF1を選ぶ理由のひとつはリケーブルできることだと思うので、是非とも試してほしいと思います。
中華低価格ケーブルには耳掛けチューブ付きが多いので、どうしてもストレートで安く済ませたいのならばチューブを剥きとるという手もあります。
エージング時間は長めに取った方が良さそうです。箱出しは付属イヤーピースでは音がぼやけていて「変更必須だな」と感じていましたがエージング後は「付属ケーブルとの組み合わせなら付属イヤーピースもそう悪くない」と思えるくらいになりました。
まとめ
3千円前後のシングルBA機自体が多くなく、更にリケーブル可能となると他に該当するイヤホンが見つけられませんでした。低価格シングルBA機としては音も悪くなくリケーブルで音質向上できるだけの余力があります。
しかしながら少し上の価格帯にはリケーブル不可なものの評価の高いEARNiNE EN120(Amazon/Yahoo!ショッピング/楽天市場)が控えていて、KB EAR F1がEN120以上の音かと言われると特に初期装備ではお値段なりの差はあると感じます。F1もリケーブルすれば大幅に音質が向上する余地があるのですが、聞こえるレンジの幅がEN120に若干負けている気がします。
KB EAR F1をおすすめできるのは、リケーブル可能な低価格シングルBA機に興味がある人、シングルBA好きな人、聞き疲れない安価なイヤホンを探している人、厚く重い低音を重視していない人です。アンプやある程度駆動力のあるDAPを使っている人、リケーブル予定の人には特におすすめできます。
KB EAR F1をおすすめできないのは、重い低音がしっかり出るイヤホンが好きな人、上位価格帯に投資できる予算がある人です。しかしリケーブル可能で音の評価の良いシングルBA上位機はだいぶ価格が上がるので、安価でリケーブル可能なことを重視するならF1を選択することになりそうですね。
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