KBEAR 朱雀 Rosefinch – 聴き疲れるほどの低音と耳障りさなく自然なボーカルで70~80’sも今風に

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今回はKBEAR 朱雀 Rosefinchのレビューです。Easy earphonesから商品提供を受けています。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの白背景画像

製品仕様

ブランドKBEAR
型番朱雀 Rosefinch
ドライバー10mmDD
(10mm/5μm Silicon composite Biological Diaphragm)
インピーダンス16Ω
感度103±3dB
再生周波数帯域20-20kHz
ハウジングプラスチック
ケーブル2pin TFZ / 4芯OFC(18*0.05mm)
ケーブルプラグ金メッキ 3.5mm / マイク付き or マイクなし

低価格モデルなこともありスリーブタイプの簡素な箱入りです。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの外箱の黒背景画像 KBEAR 朱雀 Rosefinchの外箱背面の黒背景画像 KBEAR 朱雀 Rosefinchの内箱の黒背景画像

付属品は4芯OFC(無酸素銅)ケーブルとシリコンイヤーピース1種類3サイズです。イヤーピースのSとLは各1ペアでMは2ペア付属します。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの同梱物の白背景画像
Mサイズは2ペア付属しています。
KBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジング左右を並べた白背景画像

フェイスプレートは亜鉛合金です。柄の部分は浅く凹凸になっておりレンガ色と小豆色の間くらいの色合いです。

KBEAR 朱雀 Rosefinchのフェイスプレート画像

KBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジング画像1 KBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジング画像2 KBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジング画像3 KBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジング画像4

ハウジングの形状はKBEAR Larkと同じだと思います。Larkは途中で何度かチューニング変更されており、それ以外にもノズル開口部の形状が異なったりノズルの中間部分の太さが微妙に違ったりしています。しかしハウジング部分は変更されていないようです。

KBEAR LarkとKBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジングを並べた白背景画像1
KBEAR LarkとKBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジングを並べた白背景画像2 KBEAR LarkとKBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジングを並べた白背景画像3

付属ケーブル

付属ケーブルは4芯OFC(無酸素銅)ケーブルです。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの付属ケーブルの白背景画像

手元の個体は片側のピン穴の奥が狭くケーブルが奥まで入りませんでしたが、ピン折れに注意しつつぐっと強引に押し込めば入ります。私は念のため0.78mm 2pinの別のケーブルで広げてからやりました。付属ケーブルの反対側や他のケーブルも普通の力では挿さらないならおそらく同じ症状かと。

付属イヤーピース

シリコンイヤーピース1種類3サイズが付属します。KBEARのこのイヤーピースは中低域の量が増えやすく、全体の音の輪郭が緩む傾向がありますが、朱雀との相性は悪くありません。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの付属イヤーピースの白背景画像1 KBEAR 朱雀 Rosefinchの付属イヤーピースの白背景画像2 KBEAR 朱雀 Rosefinchの付属イヤーピースの白背景画像3

音質

エージング

いつも通り200時間エージングしました。箱出しは装着の微調整が甘いと高音が鼓膜に刺さるというより頭に刺さるような鋭い高音がピンポイントの帯域で出ることがありましたが短時間のエージングで改善されました。

装着位置

私の耳で何も意識せずに、付属イヤーピースMサイズで耳にフィットさせて装着すると外耳道閉管共振は7.7kHz、低音過多でやや飽和します。

朱雀の公式から想定される外耳道閉管共振帯域は8kHzです。私の耳ではやや深めに挿入する必要があるものの合わせることができました。メーカー想定通りと思われる装着位置で評価していきます。なお浅い位置にももう1ヶ所くらいベストに近い位置がありそうです。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの公式周波数特性画像
*公式周波数特性イメージは許可を得て掲載しています。

評価環境

音源は主にwavとFLACです。Amazon MusicおよびYoutubeの動画も使用しています。

主な評価機器は以下の通りです。PCからの再生はfoobar2000+ASIOです。

  • Cayin N3PRO (AK4493EQ *2 / 3.5mm 250mW 真空管使用時 130mW@32Ω)詳細
  • Shanling M6 ver.21 (ES9038Q2M *2 / 3.5mm 12~190mW@32Ω)詳細
  • iBasso DC04PRO (CS43131 *2 / 3.5mm 2.0Vrm@32Ω)
  • Shanling UA3 (AK4493SEQ / 3.5mm 125mW@32Ω)詳細
  • Xperia 1 ii (オーディオ詳細不明)詳細
  • iPod touch 7G (オーディオ詳細不明)詳細

付属ケーブル+付属イヤーピース

付属品ではむしろ非力な機器との方が相性が良いです。味付けが薄くフラットなiPod touch 7GとCayin N3 Pro(ローゲイン)の評価を中心にレビューしていきます。

KBEAR 朱雀 Rosefinchの白背景画像
高音域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中音域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
4.3
★★★★★
★★★★★
低音域の音量
4.5
★★★★★
★★★★★

周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックした限りでは25Hz以下から聴こえるものの30Hz以下は小さめ、36Hz辺りが少し強め、1.3kHz付近にF特上の谷、8kHzに私の耳の外耳道閉鎖共振でそこから9kHz付近まで8kHzほどではないもののやや強め、12kHzくらいで音量的にかなり弱ってきます。

ハーマンターゲットカーブ(IE 2017)に低域を盛った周波数特性かつ外耳道閉管共振がやや強く出たチューニングなようです。超低域~中低域はだいぶ強められています。

高音域は刺激的すぎず細らず、やや暗いものの重いわけではなく、低~中低域の量とのバランスが取れています。十分な強さと量と伸びで過不足ありません。中高域は騒がしくなる最大値ギリギリを上手く攻めている印象です。

装着時の耳への挿入の深さが適切でない場合は金属音が音量的に強すぎる、中高域が騒がしいと感じることがあります。

中音域は全域の中で最も味付けがない音域です。ボーカルは自然な声の高さで、歯擦音やブレスは控えめです。日本人歌手の発音はこもらず、JPOPとも好相性です。物音も比較的リアルです。Michael Jackson『Black or White』のアルバムバージョン(もしくはPV)の冒頭に入る、ドアをドンドン叩く音にはかなりリアリティが感じられました。

低音域から中低域は音量的にも強く、機器が高出力なほど中低域を中心に量的支配力が強まります。適切に装着できていれば沈み込みは深く、伸びやかです。キックに重さを付加する帯域が強いため少し古い音源やJPOPのキックに重さがありパスパスしません。

体の奥に音の芯が響く、聴き疲れも感じられる低音です。強すぎると感じる場合はイコライザーで63Hz付近を弱めたりイヤーピースを交換することでも改善されます。

装着時の耳への挿入が深すぎると中低域が増えやすいです。JPOPで中低域がぼやっと膨らむように感じられるなら装着を少し浅くすると改善されると思います。

低音の量は定位にあまり影響しないのですが、中低域に量を感じる優しい音色の機器では定位中心が下方向にずれることがありました。特にHiBy R6PROは付属イヤーピースとの相性が悪いようです。

低出力な機器では自然な分離感です。高出力なほど低音の量が増え、他音域をマスクするほどではないものの分離が悪くなります。低音の量が増えにくいすっきりめな機器なら出力を上げることができそうです。

ハーマンターゲットカーブ(IE 2017)に低域をがっつり盛った周波数特性ではあるもののただ盛っただけということはなく、楽しい低音に仕上げた上でハーマンターゲット寄せらしい味付け薄めな中~高域と上手く馴染ませています。

ボーカル曲に向いていると思います。器楽曲では高音の刺激と伸びやかさや明るさに物足りなさを感じます。ですがクラシックなどでなければ違和感を感じるほどではありません。楽器のみの音源であってもゲーム音楽などは楽しめる範囲です。

中~高域の魅力はそのままに低音全体が足されることで、70~80年代の音源が今時っぽさのある楽しい音になりました。

KBEAR 朱雀 RosefinchとCayin N3PROとの組み合わせの画像
ABBAもちょっと今時風に。

再生環境と出力

機器が高出力すぎると低音の量が増えやすく、装着が深すぎるとバランス的に中低域が強めに聴こえやすいです。付属イヤーピースも中低域がややぼやっと膨らみやすいため、使用する機器と合わない場合はイヤーピースを変えるのがおすすめです。

味付けがほとんどないフラットで非力なiPod touch(7G)と付属イヤーピースでは明瞭さと音のくっきりさが少し物足りない気もしますがぼやっとしているというほどではありません。

KBEAR 朱雀 RosefinchとiPod touch(7G)との組み合わせの画像
iPod touch 7G直挿しもそう悪くありません。

iBasso DC04PRO(付属ケーブル/Low/Normal)はちょっとだけ抑えられる4kHzが、朱雀のギリギリ最大値を攻めている中高域を少しだけ抑えてくれます。耳への装着の加減が多少雑でも良さそうです。低音の力強さい重さもほんの少しだけ低減され聴き疲れにくいです。

KBEAR 朱雀 RosefinchとiBasso DC04PROの組み合わせの画像
iBasso DC04PROは使いやすく好みのバランス。

前述した通り、相性が悪かったのは前述したHiBy R6Proです。低~中低域のバランスの相性が悪いことと3.5mmローゲインでも高出力すぎるようでした。

しかし中低域寄りならダメかというとそういうわけでもなく、iBasso DC03PRO(付属ケーブル/Low/Normal)はむしろ適度に低~中低域が軽くなってより楽曲を選ばなくなります。iPod touch 7Gよりも低音がほんのちょっとではあるものの聴き疲れにくく感じられます。

逆に低音すっきりめ傾向な音色のShanling M6 ver.21では朱雀でも低~中低域が減ることで器楽曲にもほどほどに合うようになり、生楽器を含むボーカル曲がより楽しめると思います。しかし超低域の力強い重さと中低域の伸びやかさは残るため、やはりクラシックでは味付けが強すぎるようには感じられます。

その他

装着感

装着感はこのタイプの中華イヤホンとしては普通です。私の耳ではけっこう深めに耳に挿入する必要がありますが、浮いてくることはありません。ノズルが太いため外耳道が細い人は圧迫感を感じる可能性はあるかもしれません。

KBEAR 朱雀 Rosefinchをシリコン耳モデルに装着した状態の画像(側面側) KBEAR 朱雀 Rosefinchをシリコン耳モデルに装着した状態の画像(正面側)

音漏れ・遮音性

耳に当たる側に小さいベント(通気穴)が2ヶ所開いています。DDの真上と脇の辺りです。装着感も悪くありませんので、イヤーピースのサイズが合っていれば遮音性も十分です。

KBEAR 朱雀 Rosefinchのハウジングにあるベント2ヶ所が見える角度からの画像

他のイヤホンとの比較

Kiwi Ears Cadenza

Kiwi Ears Cadenzaはベリリウムコート振動膜採用の10mmDDイヤホンです。しかし箱書きがベリリウムコートからベリリウムに変更されているという噂もあり、実際のところはよくわかりません。ニュートラルなやや弱ドンシャリ。低音の適度な量と厚みと全体のクリアな明瞭感を両立しています。

スペック
ブランドKiwi Ears
型番Cadenza
ドライバー10mm(ベリリウム?)
インピーダンス32Ω
感度110dBSPL/mW
再生周波数帯域20-20kHz
ハウジング医療グレード レジン
ケーブル2pin 3.5mm
価格一覧
Kiwi Eares Cadenzaと付属品の白背景画像 Kiwi Ears CadenzaとKBEAR 朱雀 Rosefinchを並べた白背景画像
  • 高音の主張:Cadenza ≦ 朱雀
  • 高音域の音量:Cadenza ≦ 朱雀
  • 中高域の音量:Cadenza ≦ 朱雀
  • 中音域の音量:Cadenza ≒ 朱雀
  • 中低域の音量:Cadenza ≦ 朱雀
  • 低音域の音量:Cadenza < 朱雀
  • 超低域の音量:Cadenza < 朱雀
  • 低音の量:Cadenza < 朱雀
  • 重低音・沈み込み:Cadenza < 朱雀
  • いずれも付属ケーブルと付属イヤーピースでの比較です。
  • Cadenzaでは付属クリアホワイトイヤーピースを使用しています。

KBEAR 朱雀とKiwi Ears Cadenzaの中~高域の周波数特性はかなり似ており、いずれもハーマンターゲットカーブを意識したチューニングです。

低音があまり強められていないCadenzaは付属品では音の輪郭が自然な範囲でソフトでやや温かみがありつつニュートラルな音色です。好みに左右されにくく、価格を考慮すれば大きな不満を感じる人は少ないでしょう。

ブレスや歯擦音がやや控えめながら味付け薄めなボーカル、強すぎず弱すぎない高音の主張は朱雀との共通点です。低音の量の違いからCadenzaの方が中~高域の見通しが良いため人の声の聴きやすさはCadenzaの方が上回っています。

主な違いは低音側にあります。朱雀はひたすら力強くビートを刻みつつも空間を優しく包みます。低出力な方がバランスが良い朱雀に対しCadenzaは硬めな振動膜の影響でいくらか高出力な方が音が良く、パワーのあるDAPを使った時に朱雀との価格差相応の実力差を感じます。

リケーブルすると朱雀も健闘するのですがそれはCadenzaも同じです。特に低価格帯は少しの価格差が埋まりそうで埋まらない差に出てしまうんでしょうね。

総評

  • 高出力を要求しない
  • 自然なボーカル
  • 力強い低音
  • 付属品との相性に問題なし
  • 相性の悪い機器はある
  • 高音に耳障りさを感じたら軽くエージング
  • 体が弱っていると低音に疲れる
  • リケーブルによる変化がわかりやすい

朱雀の音は再生機器や出力との相性から察するにちょっと崩れると地味に破綻しそうなバランスでありながら、耳との相性は最小限だと思います。聴き疲れすら感じる力強い低音とやや控えめな高音のバランスをなかなか高レベルにまとめているんじゃないでしょうか。

KBEAR 朱雀 RosefinchとShanling UA3との組み合わせの画像
意外と攻めたチューニングなのかも。

人の声の高さの自然さにハーマンターゲット寄せ中~中高域の恩恵を感じます。味付け薄めで刺激も控えめなことで、低音の量のわりに濃厚になりすぎていません。思い切り低音を盛っているのに低音成分過多もしくは高音成分不足でこもったりはしないのは優秀だと思います。

再生環境によっては中低域に重低音成分が多く力強すぎる気もしますが、これは私の耳の可聴域の下限が広いせいかもしれません。

朱雀はリケーブルによって比較的音が変化しやすく、をあれこれ試すのも楽しいイヤホンです。中~高域はハーマンターゲットに寄せたおかげかボーカルの印象を変えず調整することができます。ですが付属ケーブルで十分にバランスは整っており、リケーブル必須というほどだとは思いません。変化が激しいケーブルも合わないような気がします。

初期装備のKBEAR 朱雀 Rosefinchをおすすめできるのは、スマホ直挿しで使える低音ホンを探している人、鋭い高音は求めていない人、ボーカル曲を中心に聴く人です。

逆に初期装備のKBEAR 朱雀 Rosefinchをおすすめできないのは、パワフルなDAPを愛用している人、常時アンプを使用している人、生楽器メインの楽曲を好んで聴く人、体に響く超低域の力強いアタックが苦手な人です。

レビューがだいぶ遅くなってしまいましたが音には型落ち感もありません。今からでも買って良いイヤホンだと思いますよ。特にAliExpressでは朱雀は値下がり傾向です。現在AliExpress Black Friday & Cyber Monday Saleでセール対象になっています。