LETSHUOER S12 PRO – サラウンド音源の再現能力が高い!立体的な音場表現は特筆モノ

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今回はLETSHUOER S12 PROのレビューです。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。

LETSHUOER S12 PROの白背景画像
  • LETSHUOERから製品提供を受けています。
  • 私の耳は耳穴入り口付近から外耳道が太めです。これまでの経験上、深く装着しすぎるとバランスが崩れるイヤホンも少なくないためアジア人の平均から外れる程度には太めではないかと思います。
  • 外耳道閉館共振帯域は意図的にずらさない限りはたいてい7.3~7.4kHzです。
  • イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
  • イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。

製品仕様

ブランドLETSHUOER
型番S12 PRO
ドライバ構成14.8mm平面磁気駆動型ドライバー
インピーダンス16Ω±1Ω
感度102db
再生周波数帯域20-20kHz
ケーブル端子2pin 0.78mm
ハウジング素材アルミニウム合金
LETSHUOER S12 PROの外箱の画像 LETSHUOER S12 PROの外箱裏面の画像 LETSHUOER S12 PROのパッケージの中の画像

同梱物はプラグ着脱式ケーブル、シリコンイヤーピース2種類各3サイズ、フォームイヤーピース1種類2サイズ3ペア(ケース付き/大サイズ2ペア)、セミハードケース、ユーザーマニュアル、保証書、製品カタログです。

LETSHUOER S12 PROと同梱物の白背景画像
付属品は充実しています。

ハウジングはアルミニウム合金です。表面はツヤ感があるマット寄りの色合いで汚れは目立ちにくいと思います。型番印字の「10」は製造月だそうです。そのため他の番号のものもあります。

LETSHUOER S12 PROのハウジングを並べた白背景画像
私のS12 PROは10月製造ということになりますね。

5軸CNC加工されたハウジングには丸みがあり、耳に当たって痛い部分はありません。ノズルの長さと角度もちょうどよいと思います。反響を最小限にするように配慮し、不規則な形状が歪みを起こさないように2pinコネクターはあえてキャビティに干渉しない出っ張った位置に配置しているのだそうです。

LETSHUOER S12 PROのハウジングを真横から撮影した画像1 LETSHUOER S12 PROのハウジングを真横から撮影した画像2 LETSHUOER S12 PROのハウジングを真横から撮影した画像3 LETSHUOER S12 PROのハウジングを真横から撮影した画像4

付属品

付属ケーブル

付属ケーブルは1本0.05mmの銀メッキ単結晶銅線を98本撚り合わせ4芯で編み上げた銀メッキ単結晶銅ケーブルです。プラグ着脱式で、3.5mmの他に2.5mmと4.4mm交換プラグが付属します。バランスプラグの方では超低域の減衰がありますが、機器の超低域がよほど弱くなければ不満を感じるというほどではなさそうです。

LETSHUOER S12 PROの付属ケーブルの画像 LETSHUOER S12 PROの付属ケーブルの着脱プラグ接続部の拡大画像

付属ケーブルは音に味付けするタイプで、低音の解像度と情報量を上げています。それが原因で相性が悪い機器があります。

付属イヤーピース

S12 PROには付属するイヤーピースは、シリコン黒軸お椀型、シリコングレー丸型、フォームイヤーピースの3種類です。

LETSHUOER S12 PROのドライバーは高出力で鳴らすほど超低域が弱って相対的に高域に寄るタイプで、逆にスマホ直挿しでは高音が少し控えめなこじんまりしたバランスになりやすいです。しかし3種類付属するイヤーピースを機器によって変えることでバランスを整えることができるようです。

シリコン黒軸お椀型はバランス型です。300~600mW@32ΩくらいのDAP直挿しやドングル型DACアンプで使用する際におすすめです。

LETSHUOER S12 PROの付属シリコン黒軸お椀型イヤーピースの画像1 LETSHUOER S12 PROの付属シリコン黒軸お椀型イヤーピースの画像2 LETSHUOER S12 PROの付属シリコン黒軸お椀型イヤーピースの画像3

シリコン黒丸型は高音が良く出ます。スマホ直挿しなど低出力な機器で使用する際におすすめです。

LETSHUOER S12 PROの付属シリコングレー丸型イヤーピースの画像1 LETSHUOER S12 PROの付属シリコングレー丸型イヤーピースの画像2 LETSHUOER S12 PROの付属シリコングレー丸型イヤーピースの画像3

フォームイヤーピースは表面がツルッとしたタイプで、高音を鈍らせずに高音成分を減らします。高出力な機器で使用する際におすすめです。3ペア入っていますが大きい方の2ペアは同じサイズなようです。

LETSHUOER S12 PROの付属フォームイヤーピースの画像1 LETSHUOER S12 PROの付属フォームイヤーピースの画像2 LETSHUOER S12 PROの付属フォームイヤーピースの画像3

音質

エージング

箱出しから十分な音色でしたが、一応レビュー前にいつも通りエージングしました。あまり大きくは変わっていない気がします。

装着の深さと角度

沈み込みが深く、低音の広がりが良く、高音が悪目立ちせず、自然な音色になる挿入位置と角度で聴いていきます。映画音楽やゲーム動画で音が最も自然に聴こえる位置に合わせるのがわかりやすいです。

音のリアリティに不満がある場合は耳への挿入が深すぎる可能性があります。しかしアルミ合金ハウジングは耳から浮かせすぎると音が変わりやすいことには注意が必要です。逆に高音が細るようなら浅すぎるはずです。

評価環境

音源は主にwavとFLACです。Amazon MusicおよびYoutubeの動画も使用しています。

主な評価機器は以下の通りです。PCからの再生はfoobar2000+ASIOです。

  • FiiO Q5s Type-C (AK4493EQ *2 / 220mW~@32Ω)詳細
  • Hiby R6Pro (ES9028Q2M *2 / 245mW+245mW@32Ω)詳細
  • Cayin N3PRO (AK4493EQ *2 / 3.5mm 250mW 真空管使用時 130mW@32Ω)詳細
  • iFi Audio ZEN DAC (Bit-Perfect DSD & DXD DAC by Burr Brown / 2.1V)
  • TempoTec V6 (AK4493SEQ *2 / 3.5mm 330mW@32Ω)詳細
  • XDUOO Link2 Bal MAX (CS43131 *2 / 3.5mm 200mW@32Ω)詳細
  • Questyle M15 (ES9281AC / 11.97mW@300Ω)
  • FiiO K7 (AK4493SEQ*2 / 6.35mm ≧1220mW@32Ω)詳細
  • Xperia 1 ii (オーディオ詳細不明)詳細

使用しているケーブルおよび変換アダプターは以下の通りです。

付属ケーブル

いつもはイヤーピースごとの評価を行っていますが、S12 PROは機器の出力によって3種の付属イヤーピースのうちどれが合うか異なるため、XDUOO Link2 Bal MAX(機器詳細)と付属シリコン黒軸お椀型イヤーピースでの評価を主軸に総合的にレビューしていきます。

LETSHUOER S12 PROとXDUOO Link2 Bal MAXの組み合わせの画像
高音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中音域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
低音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
超低域の音量
3.3
★★★★★
★★★★★
  • 広めで立体感ある音場
  • ジャンルを問わないバランス型
  • 機器による差が出やすい

周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックすると、超低域は20Hz以下から聴こえ30Hz台やや強め、380Hz付近に谷、中高域やや強め。7.3kHz辺りに私の外耳道閉館共振のピークがあるはずですがピンポイントで尖ったピークにはなっておらず中高域から山なり、9.5kHzから10kHzにかけて大きめに減衰、11kHz付近に軽くピークがあって減衰。

左のVが少し深いW字くらいのf特でしょうか。低音はしっかり出ていますが超低域のコントロールで音楽を聴いている時には音量的にドンドン強くはなくバランスが良い弱ドンシャリと言ったところです。

高音域は刺さりや刺激は控えめ、きらびやかさと主張は適度、繊細で細やかです。シンバルやスネアドラムの高音がシャーンと細かく拡散するように鳴りやすいため他の音域と比較してやや繊細すぎると感じることがあります。サラッとした質感で、抑揚は控えめ、伸びやかさに過不足はありません。

同条件なら高出力で鳴らすほど金属音の鋭さやきらびやかさが強まりますがそのぶん高域側に寄り、細りやすいです。付属黒軸お椀型イヤーピースではDAP直挿しかドングル型DACアンプくらいの出力がちょうど良いと思います。

中音域は自然で見通しが良く、謳い文句通りに鮮明です。アコースティックギターの音には弦の張りと、それを弾く指先を感じられるリアリティがあります。

ボーカルの歯擦音やブレスは控えめです。高出力な機器ではボーカルに高音成分が増えやすいものの付属フォームイヤーピースで解消されます。基本的にはボーカルとの距離感は近くも遠くもありませんが、声が高めな男性ボーカルが若干遠くなりやすいです。ボーカル近めが好みなら少し物足りないかもしれません。

低音域は伸びの良さとタイトな張りを両立しており、沈み込みは深め、適度な重さと太さで厚みもあり、少し離れ気味です。力強いですが音量的にはドンドンと強すぎません。全体の中では解像度が高めです。打楽器にスティックやバチが当たった時の跳ね返りと振動が感じられます。

ただしこの低音の解像度は付属ケーブルが若干底上げしているようです。そのためリケーブルすることで低音の質感がかなり変わる場合もあります。

高い音域ほど抑揚が控えめです。また、機器が高出力なほどその傾向が強まります。アンプを使った場合にフォームイヤーピースを使用しても情感不足を感じるのならより低出力な機器を使うことをおすすめします。

残響音は音量的に少しだけ控えめですがリケーブルで引き出すことが可能なので、この点についても付属ケーブルの影響があると思います。

低域を中心に情報量の多い音色です。聴こえにくかった新たな音が聴こえるのではなく、ひとつの音に含まれる成分が増えたような情報量の多さと解像度の高さです。

高音質な音源は高音質に、低音質な音源は粗を目立たせずに聴きやすく鳴らしてくれる万能型です。JPOPのナローレンジな海苔音源でもバランス良く聴こえます。音数が多くごちゃつきがちな楽曲も楽しく鳴らしてくれますし、疾走感には過不足ありません。

分離は良好、音場は広めで立体感があります。サラウンド音源の再現能力が高く、5.1chサラウンド対応の動画は頭の周囲に立体的な音が広がります。ただし音が近づきにくいせいか音場の広さほど奥行き深めだとは感じません。過剰な演出がない音場表現だと思います。もちろん定位も良好です。

小音量にもかなり向いています。あえてアンプを使用して高音に寄せて刺激を強めつつ音量を下げて聴くことで物足りなさを感じません。

リケーブル

HiBy R6Proとは直挿しでは相性が悪いS12 PRO(後述)ですが、リケーブルすることで機器を選びにくくなります。この点については付属ケーブルの影響が大きいようです。リケーブルによる味変は効果的に作用します。

LETSHUOER S12 PROとNICEHCK SpaceCloud Ultraの組み合わせの画像
リケーブルでHiBy R6Proとも好相性に。

再生環境と駆動力

LETSHUOER S12 PROのドライバーは高出力なほど超低域が弱り相対的に高域側に寄るタイプで、比較的変化が大きいです。この点は単純に出力に応じた変化の仕方なように感じます。

高出力な方が音が引き締まり解像感、分離、音場の広さ、奥行きなどが向上するものの、パワフルすぎても高音側に寄りすぎてバランスが良くありません。ポータブル環境に適しています。

スマホ直挿しでも問題なく音量が取れます。DAPやアンプを使用した場合と比べると高音が控えでこじんまりとしており迫力も控えめですが、シリコングレー丸型イヤーピースを選択することで音色がくっきりします。

LETSHUOER S12 PROとXperia 1 iiとの組み合わせの画像
スマホ直挿しはグレー丸型イヤピで。

Hiby R6Proでは中低域の伸びが良くなりすぎて、他音域をマスクはしないものの中低域がゆるく飽和したようになり相性が悪いです。ボーカルも少し膨らむのかサイズが大きくなったような印象です。ゲイン変更もバランス接続もあまり変わらず。H6Proの音色との相性が悪いようです。

しかし機器との相性は付属ケーブルの影響が大きいようで、相性が良くない機器ではリケーブルが効果的です。相性が悪いHiBy R6Pro直挿しでも不満なく聴くことができるようになります。

LETSHUOER S12 PROをNICEHCK GreenJellyにリケーブルしてHiBy R6Proと組み合わせた画像
画像のケーブルはNICEHCK GreenJellyです。

TempoTec V6はS12 PROと好相性です。4.4mm接続ハイゲインで鳴らしてもV6の音の太さで高音が細らず、イヤーピースは黒軸お椀型で問題ありません。V6の狭まりやすい音場はS12 PROの広めな音場とV6の出力の影響を受けた高音のおかげで狭まらず。中域の凹みも気になりません。

LETSHUOER S12 PROとTempoTec V6の組み合わせの画像
TempoTec V6は細りやすいイヤホンによく使っています。

所有するドングル型DACアンプで特に相性が良いと感じたのはQuestyle M15(ケーブルはddHiFi TC09S)とXDUOO Link2 Bal MAX(付属Type-Cケーブル使用)です。軽く中高域寄りでパワーもあるM15はS12 PROをよりニュートラルに寄せ、M15とS12 PROの音場の広さの相乗効果が得られたような音場再現と定位が素晴らしいです。3.5mm接続でローゲインが一番リアリティがある音色だと思います。イヤーピースはシリコン黒軸お椀型イヤーピースがおすすめです。なおM15では低音が若干控えめになります。

LETSHUOER S12 PROとQuestyle M15とddHiFi TC09Sの組み合わせの画像
M15をお持ちならぜひ試して欲しいです。
  • Questyle M15はスマートフォンと相性があるらしく、ノイズがひどい場合があるらしいです。新規にご購入を検討なさる場合はご注意ください。私のXperia 1 iiでは問題ありません。

ポータブルアンプを使用するとローゲインでも特に女性ボーカルに高音成分が多めです。また、全体的にも冷静な印象で情感を感じにくい音色になりやすいです。付属フォームイヤーピースで整えることができますが、私は小音量で聴きたいときに黒軸お椀型イヤーピースと合わせています。小音量でも物足りなさを感じません。

LETSHUOER S12 PROとFiiO Q5s Type-Cとの組み合わせの画像
小音量派にはアンプ+黒軸お椀型もおすすめ。

その他

装着感

装着感は良好です。私はやや浅めに装着していますがズレやすくはありません。全体的に丸みのあるハウジングなので当たって痛いことはなさそうですが、耳が小さい方は耳のくぼみにぴっちりくらいのサイズ感になる可能性はありそうです。

LETSHUOER S12 PROをシリコン耳モデルに装着した状態の画像1 LETSHUOER S12 PROをシリコン耳モデルに装着した状態の画像2

音漏れ・遮音性

ケーブル接続部脇の耳側に1ヶ所、耳に当たる側のドライバー上部に1ヶ所、小さなベント穴が開いています。ケーブル接続部側のベントも音が外側に出にくい位置なので、音漏れは最小限だと思います。

LETSHUOER S12 PROのケーブル接続部根本のベントの画像 LETSHUOER S12 PROのベント2ヶ所が確認できる角度のハウジング画像

他のイヤホンとの比較

TinHiFi P1 Max

TinHiFi P1 Maxは14.2mm平面駆動型イヤホンです。2022年初夏に発売されました。S12 PROと同様に鳴らしやすく、DAP直挿しやドングル型DACアンプと相性が良いです。発売時の相場は$169でS12 PROと同価格帯です。ちなみにP1 MAXは徐々に値下がりしておりセール時は$100前後、お買い得な時で$80前後です。

詳細仕様
ドライバーΦ14.2mm Planar Magnetic drive
感度98±3dB @1kHz  0.126V
応答周波数帯域10-20kHz
インピーダンス16Ω±15%
定格出力5mW
最大消費電力10mW
最大歪み3% @1kHz  0.126V
ケーブル2pin
3.5mm金メッキプラグ carbon fibre tube
TinHiFi P1 MAX 価格一覧
TinHiFi P1 MAXと同梱物の白背景画像 TinHiFi P1 MAXとLETSHUOER S12 PROを並べた白背景画像
  • 高音の主張:P1 Max ≧ S12 PRO
  • 高音域の音量:P1 Max ≧ S12 PRO
  • 中音域の音量:P1 Max ≧ S12 PRO
  • 低音域の音量:P1 Max > S12 PRO
  • 低音の量:P1 Max > S12 PRO
  • 重低音・沈み込み:P1 Max ≦ S12 PRO
  • いずれもドングル型DACアンプXDUOO Link2 Bal MAX/ノーマルゲインを主に使用
  • ケーブルはいずれも付属ケーブル使用
  • TinHiFi P1 MAXは付属シリコンイヤーピースの味付けが強いためフォームイヤーピースを使用
  • LETSHUOER S12 PROは付属シリコン黒軸お椀型イヤーピースを使用

高出力な機器で高域側に寄りやすいS12 PROに対し、TinHiFi P1 MAXは高出力なほど高音の刺激が強まり、場合によっては低音の一部が音量的に強まります。高音寄り(赤軸)、低音寄り(グレー)、ニュートラルバランス(フォーム)の3種類の付属イヤーピースで調節が効くのも同様ですがイヤーピース選びはS12 PROの方が上手いと思いました。

f特的には似ている部分がありつつもS12 PROの方が低域も高域も強めなドンシャリ寄りで、P1 MAXの方が中域の凹みが浅いフラット寄りです。P1 MAXの方が少しだけ音色が濃く、バランス的な問題もあって高音はS12 PROよりも主張が少し強め、ボーカルが近めです。

音場広めでサラウンド感がうまく再現されているS12 PROに対し、P1 MAXは音場の広さ、奥行き、サラウンド感はいずれもそこそこです。高域はあまり伸びず抜けず、温かみがあり聴きやすい音色です。

LETSHUOER S12 PROの方が完成度が高いと感じました。TinHiFi P1 MAXの音が好きな人もいるとは思うんですが、生楽器の音質重視な私には好みからも外れます。しかし、P1 MAXとS12 PROのドライバーの鳴りに共通点を感じます。サイズが異なるので同型ではないはずですが、開発供給元が同じだったりするのでしょうか…?

Celest Pandamon

Celest Pandamonは角型の平面駆動型ドライバーを採用したイヤホンです。幻獣パンダモン柄が不評でイマイチ人気はないようですが音は良く、高出力で鳴らすことで実売$60ほどとは思えない音で鳴ってくれます。価格帯はかなり違いますが、最近の平面駆動イヤホンでかなり気に入っているイヤホンなので比較してみます。

詳細仕様
型番Celest Pandamon
ドライバー10x10mm SPD
感度108dB
インピーダンス
応答周波数帯域20-20000Hz
ケーブル線材 OFC
長さ 1.25m
2pin 0.78mm
重量ハウジング 5.4g
ケーブル 17.2g
Celest Pandamon 価格一覧
Celest Pandamonと同梱物の画像 Celest PandamonとLETSHUOER S12 PROを並べた白背景画像
  • 高音の主張:Pandamon ≒ S12 PRO
  • 高音域の音量:Pandamon ≧ S12 PRO
  • 中音域の音量:Pandamon ≒ S12 PRO
  • 低音域の音量:Pandamon ≒ S12 PRO
  • 低音の量:Pandamon ≦ S12 PRO
  • 重低音・沈み込み:Pandamon ≒ KS2
  • いずれも付属ケーブルと付属イヤーピースでの比較です。

高音の伸びと抜けが良く比較的ニュートラルなPandamonに対し、S12 PROの方が低音に量があり落ち着いた音色です。音場の外周はどちらも広めですが一番近く感じられる音の距離はS12 PROの方が離れているため自分の周りに空間を感じやすく、より広めだと感じやすいです。

Pandamonは1,000mW@32Ω以上のアンプを使って鳴らすと厚みが増し音場が拡張され$60そこそこのイヤホンとは思えない音を出してくれます。スマホでも普通に鳴るものの一度高出力なアンプを使用して聴くと戻れないものがあります。しかし聴き比べてしまうと総合的な音質では上位価格帯のS12 PROにはやはり負けていますね。

パワーが欲しいPandamonに対し、S12 PROは付属イヤーピースを変えるだけでスマホからパワフルなアンプまで幅広く対応することができ、間口が広いと思います。最もバランスが良いのがDAP直挿しやドングル型DACアンプで、鳴らしやすいのも幅広いオーディオファンにおすすめしやすいポイントです。

価格を考慮するとPandamonもかなり健闘していると思います。しかしS12 PROの方が価格帯が上なこともあり、ひとつひとつの音に含まれる情報量が多く音場表現が良好です。深く沈み込む超低域がすべての低音成分を下支えてリアリティのある音を鳴らしています。

総評

  • 楽曲を選ばないバランス型
  • ひとつひとつの音の成分が増えたような情報量の多さ
  • 広く立体感のある音場再現力
  • どんな機器にも対応できるモジュラー式付属ケーブル
  • ドライバーの特性に合わせた3種のイヤーピース
  • ケーブルが若干重め
  • 相性が悪い機器あり

「高いディテール再現性、力強い低音域、鮮明な中音域、スッキリとした高音域を実現している」という謳い文句通りで、価格に対しての出来栄えは高めだと思います。

LETSHUOER S12 PROの画像
謳い文句に偽りなし!

音場が広いのはもちろん、特筆すべきはサラウンド音源の再現力です。5.1chサラウンド対応の動画を観ると、ヘッドホン並とまでは言わないまでもイヤホンとしては驚くほどちゃんとしたサラウンド音声として再現されます。

高情報量な音だと思います。聴き取りづらかった微細な音が聴こえるようになるということではなく、ひとつの音の内訳が細分化されたような情報量の多さです。

解像度は高いのですが高音の刺激が抑えられているためわかりやすくカリッとくっきりとした高精細さではありません。全体の中では高音だけがわずかにシャラッと軽めな気もします。

本来のバランスはおそらく軽く中低域寄りの弱ドンシャリだと思いますが、ドライバーの傾向として鳴らす機器が高出力すぎると超低域が弱り、相対的に高域側に寄りやすいです。しかし3種類付属するイヤーピースは機器の出力の影響を調整することができます。非常に上手く選定されていると思います。

更に2.5mm/3.5mm/4.4mmの切り替えが容易な着脱式ケーブルが付属しますから、使い分けることで付属品だけでも多様な機器に対応できるはずです。

LETSHUOER S12 PROと付属イヤーピースの画像
付属品だけで幅広く対応可能です。

リケーブルにも適度に反応します。もうちょっとだけ好みに寄せたり、機器との相性を整えたりするのに有効です。

初期装備のLETSHUOER S12 PROをおすすめできるのは、音が近いイヤホンが苦手な人、JPOPを含む幅広いジャンルの音源を聴く人、小音量でも聴きたい人、音数の多い楽曲が好きな人、音場に立体感を求める人です。

音源の質が良ければ良いほど気持ち良く、そうでないなら粗は目立たせずに聴かせてくれます。いわゆる海苔音源も気持ち良く聴くことができ、ボーカルが変に近づかないのでJPOPとは相性が良いです。分離が良く解像度も高めなことで音が詰め込まれていても潰れずに聴こえてきます。

逆に初期装備のLETSHUOER S12 PROをおすすめできないのは、ボーカルが近めで生々しい音色のイヤホンが好きな人、重低音強めなのが好みな人、刺さるくらいの高音もそのままに鳴って欲しい人です。

低音は十分なのですが、近年の深い重低音の迫力がある音楽が使われた映画を観ていると、もうちょっと音量的に強い重低音が欲しいと感じました。音楽を聴く上でも重低音強めが好みなら物足りないかもしれません。アンプのBASSスイッチで盛ることは可能です。

機器に合わせて微調整するのは面倒だと考える方もいらっしゃるかもしれません。ですが聴いていてなにか不満を感じるなら付属イヤーピースやプラグの種類を変えてベストな音を探して欲しいです。

LETSHUEORのイヤホンは2020年発売のSHUOER Singerを所有しており、正直音質面ではあまり高くは評価していませんでした。いつのまにかものすごくレベルアップしていたんですね。今後も楽しみなブランドです。