[レビュー] TRI Starsea – 広めな音場と適度な距離感と案外破綻しないスイッチ機構

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今回はTRI Starseaのレビューです。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。

TRI Starseaの白背景画像

製品仕様

  • ブランド:TRI
  • 型番:Starsea
  • ドライバ構成:2BA+1DD
  • インピーダンス:9.5Ω
  • 感度:106±2dB
  • 再生周波数帯域:20Hz-20000Hz
  • ケーブル端子:2pin 0.78mm
  • Knowles ED-29689(低域-中域-高域)を1基搭載
  • 独自BA「TRI-HI-A」(高域-超高域)を1基搭載
  • DDは8mm「Composite Silicon Crystal biological」振動膜
  • ハウジングはドイツ製レジン
  • 付属ケーブルは8芯銀メッキ
TRI Starseaの外箱スリーブの画像 TRI Starseaの外箱からスリーブを外した状態の画像 TRI Starseaの外箱の中の画像

付属品は8芯銀メッキ銅ケーブル、シリコンイヤーピース3種類各3サイズ、ウレタンイヤーピース2種類各1サイズ、スイッチ変更用のピン、ケース、清掃用の布です。

TRI Starseaの付属品の画像
イヤーピースが豊富に付属します。

スイッチ機構のせいか2BA+1DD構成のわりに厚みがあります。ノズルは金属、フィルターはパンチングです。

TRI Starseaのハウジングの画像1
厚みは装着にはさほど影響しません。

若干ずんぐりとしたシルエットですがステムの角度は適度で装着感は良いと思います。

TRI Starseaのハウジングの画像2 TRI Starseaのハウジングの画像3 TRI Starseaのハウジングの画像4 TRI Starseaのハウジングの画像5 TRI Starseaのハウジングの画像6

フェイスプレートはStarseaという名前に似合う濃淡のある紫とブルーのラメ入りマーブル模様です。TRIのロゴがあしらわれています。

TRI Starseaのハウジングの画像7
上品な色合いのマーブル模様がきれいです。

音質調整用のスイッチ機構が搭載されておりピンが付属します。

TRI Starseaのスイッチが見えるハウジングとスイッチ変更用ピンの画像
スイッチ用のピンは使いやすいです。

音質

評価環境はFiio X7 MarkⅡを使うことが多いですがTRI Starseaは駆動力が必要だったためPC-aune BU1(ハイゲイン)*1代理店サイト/eイヤホン/ヨドバシ)で評価していきます。音量は付属イヤーピース使用時、ほとんど騒音のない屋内で平均50~51dB*2)で聴いていきます。

TRI Starseaとaune BU1の組み合わせの画像
今回はアンプにaune BU1を使います。

駆動力および相性の比較としてPC→iFi Audio ZEN DAC*1公式製品情報/Amazon)、Fiio X7 MarkⅡ(AM3D/可聴帯域外フィルタ:Slow Roll Off Minimum Phase)、Xperia X Performance、iPod touch(第7世代)も使用しました。音源は主にFLACです。他にAmazon MusicおよびYoutubeの動画なども使用しています。

  • 1. PCからの再生はfoobar2000+WASAPI(event)
  • 2. 平均が出せるスマホの騒音計アプリで計測しています。

ケーブルは付属ケーブル、付属緑軸グレーシリコンイヤーピース(左右L)でベントが塞がらない程度に深めに装着して聴いていきます。『装着感』でも後述しますが、耳穴入り口が広い方は深く押し付けすぎるとベントが塞がる可能性があります。装着の深さにご注意ください。

付属シリコン緑軸グレーシリコンイヤーピースは超低域~低域が若干減衰、高音の伸びが良い傾向があります。

スイッチ上部の”ONKE”の文字が正しい向きでスイッチが上か下か、以下画像の状態を「上/上」として記述します。

TRI Starseaのスイッチを「上/上」にした状態のハウジング画像
この状態を「上/上」とします。

balanced tuning(上/上)

高音の主張*
3.5
★★★★★
★★★★★
高音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
3.3
★★★★★
★★★★★
中音域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
3.2
★★★★★
★★★★★
低音域の音量
3.3
★★★★★
★★★★★
アタック感*
3.0
★★★★★
★★★★★
  • 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
  • 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
  • 比較的素直な音色
  • 明瞭だがくっきりしすぎない
  • やや音場広め(要駆動力)

周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックした限りでは超低域は20Hz以下まで聴こえ、低域はフラットよりは強め、中域には大きな凹みはなく、中高~高域がやや強めな弱ドンシャリ傾向です。高域のピークは5kHzと7kHzにあるようですがさほど高くはありません。商品ページにある周波数特性イメージから分かる通りごく緩やかなU字型なようです。

高音域は明るめで明瞭です。柔らかな空気感に包まれつつも一定のきらびやかさと主張があります。このモードは若干強めなバランスではあるものの鋭さはやや控えめで、刺さりは感じません。高駆動力な方が余韻がリアルで美しいです。

中音域は音の輪郭に若干の緩さがあります。これには付属イヤーピースの影響があり、どうしても気になるなら変更することでよりはっきりと見通しの良い音になります。ボーカルは近すぎず遠すぎず、やや落ち着きがありつつも自然です。歯擦音の不快感などはありません。

低音域は少しだけふくよかな量があるものの他の音域を邪魔しません。付属イヤーピースの影響があり、変更するとよりタイトになることが多いです。音量的にはさほど強くはなくドンドン言うような力強さではありません。

重低音の音量自体には不足は感じないものの超低域もさほど強くはなく、重低音がドゥーンと唸って伸びるDaft Punkの楽曲や、Perfumeの楽曲なども重みと芯の濃さがほんのちょとだけ足りないと感じることがありました。exquisite pure toneではより超低域まで強いので低音に不満があるならそちらのモードの方が好みに合うと思います。

分離と定位は概ね良好、情報量と解像度は価格を考慮すると普通、音場は広めです。残響音は音量的にやや小さめに感じられますが柔らかに音が広がります。派手に音が響くタイプではありません。ただしこの緑軸グレーイヤーピースは全体的に伸びを強化しているようで、変更すると残響が若干短くなったように感じられる場合があります。

聴き疲れないリスニング向きのややゆったりめで素直な音色です。アタック感は音量的に強すぎず弱すぎず、立ち上がりの速さは普通です。楽曲によってはキビキビさが物足りないと感じることはありました。こもりを感じる場合は装着の加減が適切ではありませんので微調整してください。

exquisite pure tone(下/下)

  • 高域がシャープ気味に強まる
  • 疾走感がやや向上
  • 超低域~低域がやや強まる
  • 重低音の重みが増す

4パターンの中では最もすっきりとしたやや寒色系のフラット寄り弱ドンシャリです。低音も高音もわずかに強まってbalanced tuning(上/上)よりもドンシャリ側に寄ります。高音は音量的に大きくなるのではなくよりはっきりとする方向の強まり方です。伸びも良くなります。

また、balanced tuning(上/上)で感じた重低音の重み不足と伸び不足を感じにくくなります。より低音が強まりつつより明瞭ですっきりしており、この音を好む方は多そうです。

amazing bass(上/下)

  • 低音の厚みが増す

低音が強まるモードなようです。低音の沈み込みはあまり変わりませんが厚みが増します。exquisite pure tone(下/下)と非常に近いですが、重低音の変化についてはこちらの方が好ましく感じられました。

beautiful vocals(下/上)

  • 高音の主張が強まる
  • 中高域で定位が後ろ気味のはずの音が前に出すぎることがある

このモードは付属シリコンイヤーピースとの相性が悪いです。balanced tuning(上/上)に近いのですが若干中高~高域のバランスに変化があるのか定位感が微妙に崩れてしまいます。ウレタンイヤーピースを推奨します。

確かにボーカルモードっぽい変化ですがコーラスもボーカルごと押し出されてしまいます。また、一部の楽器の音は更に前に出てきて気になることがあります。シリコンだと高音の主張も強まって楽曲によっては少し目立ちすぎている気がします。

その他

装着感

耳にフィットしやすい形状で装着感は良好です。しかしあまり深く挿入しすぎると吸い付いてしまい外耳道閉鎖効果が生じて音がこもってしまいます。こもりを感じたり外す時に耳の中に強く吸い付いている場合はイヤーピースのサイズと装着の深さを変えましょう。

TRI Starseaを耳モデルにはめた状態の画像1 TRI Starseaを耳モデルにはめた状態の画像2

音漏れ・遮音性

遮音性は普通です。装着時には2pinコネクターの脇にあるベント(通気穴)が前方に向きますが穴のサイズが小さめでさほど音漏れしていないようです。耳に負担がかかるような大音量でなければ気にしなくても良さそうです。

TRI Starsesaのベントが見える位置のハウジング画像
ベントはここ1ヶ所のみです。塞がらないように注意してください。

再生環境と駆動力

インピーダンスが9.5Ωしかないため音量はかなり取りやすいです。しかし駆動力が大きい方が高音がすっきりと出て音場も広がり、低音も力強くなります。高駆動力な機器を使わないと特に音場は期待するほどの広さを得られないかもしれません。

一番明瞭で力強く伸びやか、音場が広く感じられたのは据え置き機(ZEN DAC)でした。よくイヤホン評価に使用しているFiiO X7MK2(AM3D)ではハイゲインでも若干不足を感じました。ポータブルアンプを併用した方が良いと思います。

TRI StarseaとiFi Audio ZEN DACの組み合わせの画像
駆動力の大きさは音場の広さにかなり影響します。

付属ケーブル

付属ケーブルは8芯銀メッキ銅ケーブルです。低音はわずかに強め、高音は強すぎず弱すぎず。TRI Starseaとの相性は非常に良いです。キャラクターを変えたりバランス化したいなら別ですが、そうでないなら変更する必要はないと思います。

TRI Starseaの付属ケーブルの画像 TRI Starseaの付属ケーブルのパーツ部分の拡大画像

個人的にはStarseaはアンバランス接続の方が音場感が自然に整っていると感じます。ですがもしも極力付属ケーブルの音色に近い音色でバランス化したいのであればKBEAR 4833(AliExpress $15.99)は付属ケーブルに似ています。被膜が微妙に違っていますが線材は同じなのかもしれません。ただしAmazonではすでに終売間近なようで2pinの在庫はありません。AliExpressで購入する必要があります。

他のイヤホンとの比較

BQEYZ Summer

BQEYZ Summer(Amazon 13,999円/AliExpress $129)は5層ピエゾドライバー、13mmのPU(ポリマー)とLCP(液晶ポリマー)振動膜採用の複合DD、独自BAユニットを搭載しており濃さと爽やかさを両立する音色のイヤホンです。付属品との相性が良く、追加投資なしでも満足できる方が多いと思います。

BQEYZ Summerと付属品の画像 BQEYZ SummerとTRI Starseaを並べた白背景画像
  • 高音の刺激:Starsea < Summer
  • 高音域の音量:Starsea < Summer
  • 中音域の音量:Starsea ≦ Summer
  • 低音域の音量:Starsea << Summer
  • 低音の量:Starsea << Summer
  • アタック感:Starsea < Summer
  • それぞれの付属ケーブルと付属イヤーピースを使用した状態での比較です。
  • Starseaは最もバランスが近いexquisite pure tone(下/下)モードで比較しています。

Summerの方が高音がしゃきっと強めに出ていてクリアさがあり、よりドンシャリ傾向です。きらびやかさと刺さりのなさを両立しています。Starseaの方が落ち着いた音色でSummerの方が元気で鮮やかです。

私が所有する他のピエゾドライバー搭載機の高音ほどはクセはない思っていましたが、Starseaと並べて聴き比べるとSummerの高音は若干人工的な印象はあるかもしれません。思ったほど似ていませんでした。Starseaの方が自然な音色です。

ただしStarseaは耳穴入り口が狭く外耳道の細い人には低音控えめに感じられそうな装着感なので両者の差は私が感じているよりも小さめかつ低音と迫力が欲しい人にはSummerの方が評価が高いかもしれません。

Kinboofi KBF MK4

Kinboofi MK4(Amazon スイッチ付き実売20,000円強/AliExpress $242.81)もスイッチ付きイヤホンです。高域にBellsing 30095、中域にKnowles ED-29689を2基、低域にknowles CI-22955を搭載した4BA機です。構成は全く異なりますがスイッチ変更による変化について比較してみました。

Kinboofi KBF MK4の付属品の画像 Kinboofi KBF MK4とTRI Starseaを並べた白背景画像

KBF MK4は1番スイッチが高音、2番スイッチが低音を変化させ、ONにした方が強まります。基本的な音域バランスはシャープすぎでもソフトすぎでもない弱ドンシャリからフラット寄りです。上/上は最もドンシャリ感が強めで元気な音色、下/下は最もフラット寄りでおとなしく、上/下は中高域寄りでシャープ気味、下/上はソフト気味。

Kinboofi KBF MK4とTRI Starseaのハウジングを並べた画像1 Kinboofi KBF MK4とTRI Starseaのハウジングを並べた画像2 Kinboofi KBF MK4とTRI Starseaのハウジングを並べた画像3 Kinboofi KBF MK4とTRI Starseaのハウジングを並べた画像4

Starseaは2BA+1DDでMK4は4BAですがいずれもスイッチ機構を搭載するためのスペースが必要なのか結構な厚みがありますね。

TRI Starseaはスイッチを変更してもあまり音量が変化しないのに対しKBEAR MK4は一部モードでDAPの3メモリ分くらいの音量変化があります。

総評

  • 付属イヤーピースが豊富で各モードに合わせやすい
  • 付属ケーブルとの相性も良い
  • 良好なビルドクオリティ
  • 聴き心地の良い音色
  • ベントが小さいため装着の加減に注意する必要がある
  • 一部モードの変化が小さい
  • 実力を出すために駆動力を必要とする

広めの音場が気持ち良いです。イヤーピース選択さえ適切ならスイッチでどのモードに切り替えても案外破綻はせず、なかなかバランス良くまとまっています。

TRI Starseaの画像
実際は好みのモードが決まればその後はほぼ変えないとは思いますが…。

装着感』に書いた通り、耳に押し付けすぎると吸い付いてしまい外耳道閉鎖効果が生じて音がこもってしまいます。装着の加減に注意してください。

適切に装着されたTRI Starseaはフラット気味~弱ドンシャリ傾向で、スイッチの変更により柔らかなリスニング向きの音色(balanced tuning)、明瞭ではっきりしたやや元気な音色(exquisite pure tone)、明瞭でありつつ低音に厚みがある音色(amazing bass)、ボーカルが押し出され高音がはっきりした音色(beautiful vocals)と変化させることができます。私はbalanced tuningexquisite pure toneが好みに合いました。

私の耳の形状はは耳穴入り口から広く外耳道も太いためLサイズのイヤーピースでもきっちり深めの装着が可能で、低音には明瞭さを妨げない程度のふくよかさがありやや濃さも感じられます。そのため中高~高域は明るめですが低音がやや強いbalanced tuningamazing bassでは低音の濃さによって柔らかさと若干の温かみが付加されます。外耳道が細い人は私の聴こえ方よりももっと低音控えめな中高域寄りかもしれません。

スイッチによる変化は個人的にははっきり感じられました。しかしおそらく周波数特性上の変化はさほど大きくはなく、リケーブルの効果(概ね3dB以下の音量的変化)が感じられない人にはスイッチ変更の変化もごく軽微にしか感じられない可能性はありそうです。

また、実力通り鳴らすために駆動力を必要とします。最低限ポータブルアンプは併用した方が満足度は高いでしょう。

個人的には高駆動力で鳴らしたときの音場感が気に入っています。また、私はボーカルが近すぎるのは好みではないためStarseaの適度な距離感は聴きやすいです。特別高解像度なわけではないものの価格に見合った解像度はありますし、あえての高精細すぎない音色をうまく活かしたバランスだと思います。

付属ケーブルとの相性も良く、付属イヤーピースだけでもスイッチ変更による4種類のモードに対応できます。追加投資しなくても概ね満足できると思います。

初期装備のTRI Starseaをおすすめできるのはウォームすぎないリスニング向きのイヤホンが欲しい人、スイッチ機構に興味がある人、高駆動力な再生環境が用意できる人です。

逆に初期装備のTRI Starseaをおすすめできないのは、伸びやかに唸る重低音が欲しい人、重みがあって音量的にも強めな低音が欲しい人、解析的な聴き方ができる解像度優先のイヤホンが欲しい人です。スマホや低価格DAPに直挿しを想定している人にもあまりおすすめしません。

TRIのイヤホンはTRI-i4(レビュー/Amazon/AliExpress)、TRI i3(レビュー/終売)、TRI Starseaのいずれも良い出来だと思います。高価格帯のStarshine(AliExpress $400台後半)やStarlight(AliExpress $700台半ば)も気になっているもののちょっとお高いですし静電型の中華イヤホンはクセがある製品も少なくない印象で、おいそれと手が出ません。試聴が難しいのはネックですね。

TRI Starseaにいくつかイヤーピース変更とリケーブルも試しましたが、今のところ付属品だけの組み合わせで気に入っているためレビューはひとまず1回だけで終了です。