今回はNICEHCK X49(Amazon/AliExpress)のレビューです。箱出しからエージング終了、イヤーピース選定までレビューして行きます。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろ、もしくは『総評』だけご覧ください。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:NICEHCK
- 型番:X49
- ドライバ構成:1BA
- インピーダンス:22Ω
- 感度:110dB/mW
- 再生周波数帯域:20Hz-20000Hz
- ケーブル端子:リケーブル不可
- NICEHCK X49
- セール中2,550円+30%OFF – NICEHCK 8/23
- $16.99-17.99 – NiceHCK 8/23
- ハウジングはメッキされた銅
- ケーブルは純銅線
シンプルな外箱です。
同梱物はシリコンイヤーピース1種類3サイズ、ケーブルクリップ、ケーブルバンドです。ちなみに中国語の製品名は「某49」と書かれています。中国語で「某(mou)」は「確かな」と言う意味らしいです。
ハウジングは非常に小ぶりです。
少々見えづらいもののケーブルの根本にLRの表示があります。また、L側のケーブルに識別用のリングが通っています。「NICEHCK」のロゴは片面のみで、ケーブルを下に垂らす装着の仕方だと後ろ側に来ます。
音質
エージングは必須です。箱出しはひどくぼやけた音でしたがエージングでどんどん明瞭になっていきます。
評価環境はPC→aune BU1(Amazon/七福神商事公式)のハイゲイン、駆動力および相性の比較として同ノーマルゲイン、Fiio X7 MarkⅡ(AM3D)、Xperia X Performance、iPod touch(第7世代)も使用しました。音源は主にFLAC、他にAmazon MusicおよびYoutubeの動画なども使用しています。
付属イヤーピース(シリコングレー)
左M右Sで耳の奥にしっかり押し付けて密閉させるように装着しています。なお付属イヤーピースは高音を抑え気味です。パワフルな環境で鳴らすことができないなら音がぼやけやすくなります。
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- ややマイルド傾向
- 重低音はそこそこ
- 中高域中心のややカマボコ型
周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックした限りでは、低音は25Hzから下も聞こえますが音量的には小さいです。中高域が強めで高音のピークが3.5kHzと7kHz辺りにあり、中年の私が普通に聞き取れたのは13.5kHzくらいまでで音量を上げると14kHzくらいまでです。中高域中心の軽くカマボコ型なくらいだと思います。
高音域はややマイルドで刺さらず。駆動力の影響が大きいためできるだけパワフルな環境で鳴らしたいところです。付属イヤーピースは高音のピークを少し落としてしまうためシンバルなどは高音成分が若干足りずうっすらこもり気味に聞こえます。実際はもっと高音は出ているので、イヤーピースの変更をおすすめします。
中音域は高音成分が微妙に少なめで物音も人の声もややマイルドです。ボーカルの歯擦音はあまり聞こえず、サ行の不快感はありません。やや近めです。実際の声よりも落ち着いて聞こえます。
低音域はやや量があり、付属イヤーピース含め低音が膨らみやすいイヤーピースでは音がぼやけやすいです。重低音はそこそこでEDMでは軽さがあるもののスカスカというほどでもありません。伸び不足で尻切れトンボになることもないです。
低音のアタック感とタイトさにも駆動力の影響があります。高音と同じくパワフルな環境が欲しい部分です。駆動力が十分でないとぼやけてしまい、音数が多い時にこもった感じになりやすいです。
分離は普通、定位はやや甘いです。これはイヤーピースを変えて音が締まってもあまり変わらないようです。
付属イヤーピースでは情報量は価格相応、解像度は価格を考慮すると低くはないと思います。いずれもイヤーピース変更で向上の余地があります。
AZLA SednaEarfit Short
AZLA SednaEarfit Short(公式/Amazon 2ペア977円~)はSednaEarfitより軸は細く短くやや固めで傘がわずかに柔らかいイヤーピースです。SednaEarfitほどは鋭い高音が出ません。軸の長さは8.8mm、軸の厚みは2.2mm、軸の内径は4.5mm、傘の幅はSSは10.4mm、Sは11.2mm、MSは11.9mm、Mは12.6mm、MLは13.3mm、Lは14mmです。
- 高音はこもりがなくなる程度に強すぎずに出る
- 低音がタイトでどっしりめ
- フラットに寄る
付属イヤーピースではシンバルなど高音成分が多く必要な楽器の音がうっすらこもったように感じられますがSednaEarfit Shortではそれが消えつつも主張が強すぎない程度にまで高音がシャープに強まります。
SednaEarfitシリーズはタイトな音色になりやすいですがSednaEarfit Shortはシリーズの中では比較的伸びを衰えさせづらく、タイトにしつつもX49独特の音の広がり感をいくらか残してくれます。
若干フラットに寄るためボーカルが遠くなったように感じる場合があります。パワフルすぎない環境でカマボコ傾向やや強めで鳴らしている場合に向いています。
丸七長楽
丸七長楽(Amazon/12ペア880円)は安価ですが重低音を上手く拾いつつ低域がぼやけず、高音もきれいに出してくれるイヤーピースです。軸の口径がやや太めで抜けやすいイヤホンが多いのが残念。X49では問題ありません。
- 重めの重低音
- 中高~高域は付属イヤーピースよりすっきりめ
- 付属イヤーピースで感じるのと同じ広がり感がややある
重低音が出つつもボワボワにならず、ややすっきりして明瞭です。ボーカルがそれ以外の音とよく分離して聞き取りやすいです。適度な広がり感もありバランスが良いです。
A-Focus es-T1(傘がクリア)
A-Focus es-T1(Amazon)は球形のシリコン製汎用イヤーピースです。KZのイヤホンとも相性が良いことが多いので中華イヤホンファンならストックしておいて損はないのでは。軸の内径は3.8mm、傘の幅はS:10mm、M:11mm、L:12mmです。3サイズ各2ペア666円。今回おすすめするのは傘がクリアカラーのものです。傘がブラックの方とは音が違います。
- 高音のピークが高めに出る
- 少し中高~高域側に寄る
- 中低域が少し弱まりつつタイト
低域が少し衰えてすっきりし、少し中高~高域側に寄ります。高音のピークも比較的高めに出て音が必要な楽器で感じる若干のこもりが改善します。音の相性が良い上に安価なのでX49には良い組み合わせだと思います。ただし低音の量を減らしたくないなら合わないかもしれません。
iPod touch(第7世代)はこのイヤーピースとの組み合わせが良かったです。ただしこのイヤーピースとX49との組み合わせでは、高音がよく出る駆動力が小さい機器との相性があまり良くありません。ご利用の機器で高音域不足を感じる場合にのみおすすめです。
KZ付属溝入りイヤーピース
KZ付属溝入りイヤーピースは中華イヤホンファンなら余らせているのではないでしょうか。若干低音が膨らみ気味ですが高音の減衰が少なくドンシャリ傾向の製品が多いKZイヤホンにはよく合っているイヤーピースです。
- 高音のピークがやや高めに出る
- 付属イヤーピースよりは低音がタイト
A-Focus es-T1ほどすっきりしませんがX49との相性は良いです。低音の量を極力減らしたくない、イヤーピース変更に予算をかけたくないならおすすめです。
その他
装着感
ケーブルを下に垂らす装着の仕方とケーブルを耳掛けする装着の仕方ができます。しかし私は耳穴が大きいため深く入ってしまいケーブルが下に垂れる方法ではケーブルの根本が当たって奥まできちんと入りません。タッチノイズの改善のためにも耳掛けで使用しています。
基本的には小さめサイズのイヤーピースを選んで耳にしっかり押し込むのが良さそうです。私の耳(起き耳かつ耳穴広め)で耳掛けするとハウジングはほぼ耳珠の内側までに収まった状態になります。
ケーブルに張りがあるため耳掛けするときにそのままでは耳から外れやすいです。私はfinalのイヤーフックBタイプを使っています。これを装着してしばらく置いておくとケーブルにカーブのクセがつくので、フックが苦手な人はクセ付けだけして外すと良いですよ。
ハウジングは小ぶりでスリムです。画像はfinal E500との比較です。
音漏れ・遮音性
一般的に1BA機にはベントは必要ないらしいのですがNICEHCK X49にはベントがあります。ここから多少は音漏れしているみたいです。しかしイヤーピースを押し当ててきっちり耳穴をふさいでも減圧状態になりにくいのはメリットですね。それにより低音を確保しやすいのではないでしょうか。
再生環境と駆動力
本領発揮するためには駆動力が必要です。より高音のピークが高く低音の力強さと厚みが増します。同じくNICEHCKの1BAイヤホンであるDT100も同じだったので根本思想が同じなのでしょうか。
駆動力が大きい方が高音のピークが高めに出て重低音も強まります。逆に駆動力が小さいほどメリハリが衰えて平坦になったりカマボコ傾向が強まるようです。
スマホ等でも音量は問題なく取れますが付属イヤーピースでは音はぼやけ気味です。駆動力があるDAPやアンプを使わないのであればなおさらイヤーピースの交換は必須だと思います。
他のイヤホンとの比較
KBEAR F1
KB EAR F1(レビュー/Amazon/AliExpress)は昨年発売されたシングルBAの中華イヤホンで、3千円と低価格でリケーブルに対応しているのが特徴のひとつです。BellsingもしくはTENHZの刻印のあるBAが採用されています。私が持っているのは初期ロットでBellsingのBAでした。
KB EAR F1はややカマボコ型で、シングルBA機としては厚みのある低音域、生楽器は悪くないもののボーカルはやや味気ない中音域、そこそこ出ている高音域といった感じ。
初期装備のKBEAR F1は低音域の厚さからくる輪郭の緩さと中~高音域のシャープさのバランスが取れていないのですが、NICEHCK X49は付属イヤーピースでも全体的にバランス良く揃っています。F1の方が高音にきらびやかさがあるように感じるもののボーカルはX49の方が魅力的です。
総評
$20以下でこれくらいまともな1BAイヤホンが作れるんだなと驚かされました。重低音はスカスカではなく、高音もカット気味ではなくわりと上の帯域まで出ています。とてもこの価格とは思えません。ただし本領発揮させるためには駆動力が必要です。
個人的にはぜひリケーブル対応バージョンも作って欲しいなと思いました。X49には純銅線が採用されているようですがリケーブルできればもっとシャープになるのでは…。
付属イヤーピースは音の輪郭がややゆるく重低音と高音が減衰気味です。交換をおすすめします。再生機器の駆動力によってイヤーピースとの相性が若干変わります。まず付属イヤーピースで音の傾向をチェックしてから選んでください。
私はフラットに寄りつつ明瞭で伸びもあるAZLA SednaEarfit Short(Amazon 2ペア977円~)を使用しつつ、低音強化と少し遠くなるボーカルを復活させるため評価に使用したaune BU1(パワーがあって低域がすっきりしやすい)ではなくFiio X7MK2(AM3D)のハイゲインで聴いています。
他、重低音と高音不足なら重低音が出て広がり感がありつつもすっきりしている丸七長楽(Amazon/12ペア880円)、中高域側に少し寄せたいならA-Focus es-T1のクリアカラー(Amazon 6ペア666円)、余らせているなら一度はKZ付属溝入りイヤーピースも試してみると良いでしょう。
また、エージングによる変化が長時間鳴らした後でもまだ感じられ、明瞭になって行きます。イヤーピースを変えても駆動力のある機器を使ってもぼやっとしていると感じるなら長めに鳴らし続けてみてください。
NICEHCK X49をおすすめできるのは、低価格1BAイヤホンに興味にある人です。駆動力のある機器を持っているならなお良し。
NICEHCK X49をおすすめできないのは、高音の主張が強めのキビキビシャープ系1BAイヤホンが好きな人です。また、駆動力が大きい機器を持っていない場合にイヤーピース変更の予算が取れないないなら価格相応の音にしか感じられないと思います。
NICEHCK X49はリケーブルできませんしおすすめのイヤーピースは紹介済みですのでX49のレビューは今回1回で終了です。
レビュー記事公開の時点でAmazonで販売中のNICEHCK X49が30%OFFになっています。週末セールだそうです。また、AliExpressでは8月24日16:00からセール価格になります。
- NICEHCK X49
- セール中2,550円+30%OFF – NICEHCK 8/23
- $16.99-17.99 – NiceHCK 8/23