[レビュー] TIN HiFi T2 Plus – 音は良いが装着に遊びが大きくベントがふさがりやすいのが難点

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今回はTin HiFi T2 Plus(Amazon/AliExpress)のレビューです。第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。

Tin HiFi T2 Plusの白背景画像
『T2』の名前は付いていますが過去作T2とは全く異なる仕上がりです。

製品仕様

  • ブランド:Tin HiFi
  • 型番:T2 Plus
  • ドライバ構成:1DD(10mm)
  • インピーダンス:32Ω±15%
  • 感度:104±3bBdB @1K HzV 0.126V
  • 再生周波数帯域:10Hz-20000Hz
  • ケーブル端子:mmcx
  • DDは10mm
  • ハウジングは航空機グレードアルミニウム合金のCNC加工
  • 付属ケーブルは4芯銀メッキエナメル銅線

外箱は大きめのやや豪華仕様です。

Tin HiFi T2 Plusの外箱の画像 Tin HiFi T2 Plusの箱の中の画像

付属品は4芯銀メッキエナメル銅ケーブル、シリコンイヤーピース1種類3サイズ各2ペアずつ、ウレタンイヤーピース1サイズ1ペアです。

Tin HiFi T2 Plusの同梱物の画像
シリコンイヤーピースは2セット付属しています。

アルミニウム合金をCNC加工したハウジングはとてもきれいに工作されています。テカりすぎず手垢も目立ちません。

Tin HiFi T2 Plusのハウジング画像1 Tin HiFi T2 Plusのハウジング画像2 Tin HiFi T2 Plusのハウジング画像3 Tin HiFi T2 Plusのハウジング画像4 Tin HiFi T2 Plusのハウジング画像5 Tin HiFi T2 Plusのハウジング画像6

音質

いつも通り長めに鳴らしましたが変化は小さかったです。低音が少し締まったかな?と言う程度なので必ずしもエージングする必要はなさそうです。

評価環境は主にFiio X7 MarkⅡ(AM3D)です。ハイゲイン音量20~22(シリコンイヤーピース使用時/大きな騒音のない屋内で平均50~51dB*1)で聴いていきます。

  • 1. 平均が出せるスマホの騒音計アプリで計測しています。

駆動力および相性の比較としてPC→aune BU1(Amazon/七福神商事公式)、Zishan Z3(AliExpress)、Xperia X Performance、iPod touch(第7世代)も使用しました。音源は主にFLAC、他にAmazon MusicおよびYoutubeの動画なども使用しています。

ケーブルは付属ケーブルです。

Tin HiFi T2 PlusとFiio X7 MarkⅡ(AM3D)の組み合わせの画像
評価は主にFiio X7MK2(AM3D)を使用していきます。

付属クリアイヤーピース

付属シリコンクリアイヤーピース(以下、付属クリア)の左L右Mを使用し、あまり奥まで押し込まずに装着しています。左M右Sで深く装着するとベントがふさがりやすい他、低音の量が増えやすく明瞭さが落ちると感じました。

なおこのイヤーピースは低域が膨らみ気味で増幅気味、ボーカルはすこしドライになりやすいです。基本的には変更をおすすめします。

Tin HiFi T2 Plusの付属シリコンクリアイヤーピースの画像
付属シリコンクリアイヤーピースは丸形に近い形状です。
高音の主張*
3.3
★★★★★
★★★★★
高域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
低域の音量
3.3
★★★★★
★★★★★
アタック感*
3.5
★★★★★
★★★★★
  • 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
  • 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
  • ボーカル帯域やや強め
  • 低音に厚みと量がある
  • アタック感やや強め
  • 沈み込み深め

周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは下は20Hzから音として聞き取ることができ、中低音域がやや盛られていて中音域に浅い凹み、中高域が強めで高音のピークが5kHzと7.5kHz、9kHz辺りにあります。上は中年の耳では13kHz以上まで聞こえます。

聴覚上は中低音域寄りフラット傾向に近いとは思うのですが、ボーカル帯域が強めなのでボーカル曲では低音が強いカマボコ型っぽく感じられることもありました。

高音域は音源に近めでありつつ刺さりを感じない主張具合です。きらびやかさは過不足ない程度で、T2、T3、T4、T2 Plusの中では一番控えめでマイルドです。楽曲によっては低音の量のせいで主張不足だと感じる場合もあるかもしれません。

中音域には周波数特性のU字の谷があるようですが浅めです。ボーカル帯域が盛ってありよく聞こえてきます。近すぎたり音量的に極端に大きめというほどではありません。楽器の音や物音とも上手く分離しています。現実の声の高さに近いと思いますが、付属クリアは少し低音が膨らむため若干太めにもかかわらずうっすらドライ気味に聞こえます。ただしドライさはこのイヤーピースの影響も大きいです。

分離も見通しも良いのですが低音の膨らみは中音域の明瞭さの妨げになることがありました。イヤーピースを変更することで改善できます。

低音域は沈み込みが深くややどっしりめで厚みと量があり、全体にややウォームさと濃さがあります。存在感がありつつも邪魔はしないベースラインを聴かせてくれます。気持ちの良い伸びも感じられます。

アタック感はやや強めです。立ち上がりは特別早くは感じませんが不自然ではない範囲です。分離は良好、定位は普通です。音場は普通か、やや広めに感じることが多いです。

付属ウレタンイヤーピース

付属ウレタンイヤーピース(以下、付属ウレタン)は表面がコーティングされているタイプです。このタイプはウレタン素材としては高音の減衰が小さいので音がぼやっとしません。

Tin HiFi T2 Plusと付属ウレタンイヤーピースの画像
付属品で済ませるならウレタンイヤーピースの方がおすすめ。
  • 付属クリアよりもわずかに高音が減衰
  • 低音は膨らまない

減衰しにくいとはいえウレタンなので高音がごくわずかに減衰しますが不足は感じません。ボーカルはさほど遠のかずドライさもなく、低音は膨らまず適度に締まります。付属クリアよりも楽曲を選ばなくなります。

付属クリアで低音の量が多すぎて邪魔になっていると感じるならバランスが良いと思います。私も付属品だけで済ませるとしたらこのウレタンイヤーピースの方を選択します。

acoustune AET07

付属クリアは音の変化が大きいため、あまり音のバランスを変えないacoustune AET07(公式/Amazon)でもレビューしていきます。開口部が広めなイヤーピースです。傘の幅はSは11mm、Mは13mm、Lは14mmです。※M-は廃盤になりました。

左L右Mで深く入れ込まないように装着しています。付属イヤーピースと同様にジャストサイズで深めに入れると低音の量が増えすぎてバランスが悪いです。

  • ボーカルはごくわずかにドライ
  • 付属クリアよりも低音が弱る
  • アタック感の強さが引き立つ

付属クリアのように低音が増幅されたりはしないので比較すると低音が弱ったように感じやすいものの、アタック感の強さが引き立ちやすいイヤーピースなので、より力強いです。

ごくわずかですがボーカルのドライさがあります。T2 Plusの本来の音としてボーカルはわずかにドライ気味なようです。

大きめを選択して浅めに装着すると低音がかなり弱り中高音域寄りになります。中低域が強すぎると感じるなら試してみると良いかもしれません。

TRN標準シリコンイヤーピース

TRNのイヤホンに付属する黒い傘で赤い軸のシリコンイヤーピースです。おすすめイヤーピース編を書くうちにまた意見が変わるかもしれませんが今のところ試したシリコンイヤーピースの中ではわりと相性が良いです。TRNイヤホンを持っている人ならストックをお持ちな人が多いかもしれないので紹介しておきます。

  • 高音のピークが少し高まる
  • 低~中低音域の量が減る
  • 残響音がより伸びるようになる
  • 音場が広がる

高音の7kHz辺りのピークが高く(音量的に強く)出るようになり高音のシャープさが向上します。このイヤーピースは低~中低音域の量が減りやすくT2 Plusでも同様なため低~中低音域の量が多いと感じていたならそれも改善されます。

響きを拾いやすい傾向もあるイヤーピースなため、T2 Plusの伸びやかさとTRNイヤーピースの残響効果の両方が得られ音場が広がります。

付属クリアの音が好みでも多少は感じそうな不満点ふたつの改善がいくらか見込めるので、もしもこのイヤーピースが余っているようならぜひ試してみてください。

その他

装着感

付属イヤーピースと耳の形状によっては耳の穴に沈み込んでしまい、ベントが耳に当たって1ヶ所もしくは2ヶ所ともが耳に当たってふさがって膨らみ気味のかなり強い低音が出ることがあります。

Tin HiFi T2 Plusを耳モデルに装着した画像(側面側) Tin HiFi T2 Plusを耳モデルに装着した画像(正面側)

また、耳のくぼみの中で動かす余裕があります。装着の調整が効くというと聞こえは良いのですが、人によって異なる音のバランスで聞いている可能性があるイヤホンなのではないかと思います。装着感自体は良いもののベストポジションを見つけるまで手こずるかもしれません。

付属クリアイヤーピースをステム先端に引っ掛けるようにして使用する場合、耳で押されて位置がずれて困るようなら余っているイヤーピースからカットした軸で支えると装着が楽になりますよ。画像はKZ付属イヤーピースの軸を利用したもの。

Tin HiFi T2 PlusのステムにKZ付属溝入りイヤーピースの軸を一部カットして嵩上げしている状態の画像
嵩上げにならない程度なのは2mmくらい。

音漏れ・遮音性

ベント(通気穴)の位置的に音漏れへの影響は小さく、遮音性も普通です。ベントは2ヶ所です。『装着感』にも書いたとおり、装着の仕方によってふさがりやすいです。ベントがふさがるのを避けて浅め装着になってしまう場合は遮音性は落ちるかもしれません。

Tin HiFi T2 Plusのベント位置が見えるハウジング画像
2箇所のベントは深い装着でふさがりやすい位置に…。

再生環境と駆動力

非力な環境では高音の主張がわずかに弱くなるようですがスマホや小型DAPでも駆動力不足というほどもないと感じます。また、非常に安定しており駆動力が一定を超えるとほとんどバランスは変化しなくなるようです。機器は選ばないと思います。

Tin HiFi T2 PlusとiPod touch(第7世代)の組み合わせの画像
iPod touch(第7世代)でもさほど駆動力不足だとは感じません。

また、中華イヤホン付属ケーブルや中華リケーブルでは特にマイクなしケーブルで一部スマホでジリジリノイズが入ることがあるのですが、T2 PlusのケーブルとXperia X Performanceではノイズは発生しませんでした。これはイヤホンというよりケーブルの端子の精度(?)の問題だろうとは思います。

Tin HiFi T2 PlusとXperia X Performanceの組み合わせの画像
Xperiaとの組み合わせでもノイズが出ません。

付属ケーブル

付属ケーブルは4芯銀メッキ銅ケーブルで太すぎず細すぎず取り回しも良いです。重低音もよく出ており沈み込みも十分で伸びやかですが、低音がやや緩く高音のピークがわずかに抑え気味なようです。

Tin HiFi T2 Plusの付属ケーブルの画像
付属ケーブルは低音の量が多くなりやすいような?

味付けの少ないながら重低音から高音までしっかり出る銅線ケーブルNICEHCK CT4(Amazon/AliExpress)で確認すると全体的に更にくっきりと明瞭でタイトな音色になります。

付属ケーブルも特別相性が悪いわけではありませんがリケーブルすることでタイトかつ高音がよりシャキッとさせることが可能です。付属ウレタンイヤーピースを使用しても低音の量が多すぎる、高音のシャープさが足りないと感じるなら低音の量が増えないタイプのケーブルへのリケーブルをおすすめします。

Tin HiFi過去作との比較

Tin HiFiの過去作はT2(AliExpress)、T3(Amazon/AliExpress)、T4(Amazon/AliExpress)を所有しています。

Tin HiFi T2 Plus、T2、T3、T4の画像
画像左から時計回りにT2、T3、T4、T2 Plusです。

同じ型番を冠するTin Audio T2は聴覚上は高音がやや主張するややカマボコ気味で、比較するとT2 Plusは高音は控えめで低音が強く、より低音側に寄っています。形状も大きく異なりますし後継機という印象はありませんね。

T3は高音寄りで全くバランスが異なり比較対象としては適切ではなさそうです。

T4はこの中では価格帯がワンランク上でバランスの良い上品な万能機です。T2、T3よりは低音の量は多いのですが特別盛られている印象がない程度で、T2 Plusは更に多いです。高音がしっかりめな過去作と比較するとT2 Plusのバランスは結構違っているようです。

総評

ややウォームで音が柔らかに広がりつつも分離と見通しが良くボーカルが聞き取りやすい音のバランスです。高音が強く出ているわけではないのですがボーカルはわずかにドライなようです。低音の量がやや多いものの聴覚上はわりとフラットに近いと思います。Tin HiFiの過去作と比較すると低音が強く高音は弱いと感じられるかもしれませんね。

TIN HiFi T2 Plusの画像
傾向は異なりますがTin HiFiのイヤホンは好みに合うことが多いです。

低音に量があるイヤホンはぼんやりしたりこもったりすることがあり、T2 Plusも付属クリアイヤーピースは低音の膨らみが強く明瞭さを妨げています。実際はもっと見通しが良いので付属ウレタンイヤーピースもしくは市販イヤーピースへの変更をおすすめします。リケーブルは更に効果的です。

また、シリコンイヤーピースを使用して深く装着した場合はベントがふさがりやすいです。うまく装着できない場合にベントがふさがるのを避けて浅めに装着すると低音がかなり減り中高音域に寄りつつも案外バランスは良く、これまでのTin HiFiのイヤホンが好きならこちらの方が好みという人もいるのではないでしょうか。

耳との間にわりと遊びがあるため装着とイヤーピース次第で特に低音の量が変わりやすいです。耳の形状、つまり人によって異なるバランスで聴いている可能性がわりと高めなイヤホンかもしれません。

ライトな環境ではわずかに高音の主張が弱るもののきちんと装着できていれば駆動力の違いによる音の変化が小さいです。ライトユーザーからマニアまで幅広くおすすめできそうです。

初期装備のTin HiFi T2 Plusをおすすめできるのは、フラットなバランスが好きだけれど低音が少ないのは物足りないという人です。

逆に初期装備のTin HiFi T2 Plusをおすすめできないのは、やや主張する高音が好みな人、低音の量とタイトさを両立して欲しいけれどウレタンイヤーピースは好きじゃない人です。

付属ケーブルとシリコンイヤーピースでは低音の量がタイトさを上回りやすいため、リケーブルを念頭に入れておらずウレタンイヤーピースも苦手ならタイトさ不足だと感じるかもしれません。

Tin HiFi T2 Plusのレビュー、第2回はおすすめイヤーピース編の予定ですが、付属ケーブルであれば付属ウレタンイヤーピースで良いような気もします。付属ウレタンイヤーピースよりおすすめ度が高い市販イヤーピースがなければおすすめイヤーピース編はスキップするかもしれません。