今回はTRI-i4のレビューです。第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。エージング後&付属ケーブルの最終評価だけでよろしければ『エージング100時間~』から後ろだけご覧ください。
- 以前よりだいぶ減りましたが、中華イヤホンには個体差・ロット差が生じることがあります。必ずしも本レビューと同様の音が出るとは限りません。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:TRI
- 型番:i4
- ドライバ構成:1BA+1DD
- インピーダンス:12Ω
- 感度:103±3dB
- 再生周波数帯域:20-40000Hz
- ケーブル端子:mmcx
- TRI-i4
- セール中7,500円→1,000円OFF(7%OFFコード XYXCTD2A) - WTSUN Audio / セール中7,500円→1,000円OFF - Kinboofi 8/13
- 7/25 取扱なし
*7%コードの有効期限は2019/12/31です。
- BAはKnowles製ドライバ
- DDはアルミニウムマグネシウム合金ドーム型振動板*
- 付属ケーブルは銀メッキ
*セラーに問い合わせたのですがDDの種類に詳しくないため厳密には間違っているかもしれません。ご了承ください…。マグネシウム合金は金属の中でも軽く内部損失が高いのが特徴らしいです。
外箱は黒。高級感があります。
箱の中身。ポーチ入りですね。
同梱物はケーブル、ポーチ、イヤーピースはシリコンが2種類各3サイズ、ウレタンフォームが1種類1サイズです。
ブランド名が「TRI」でこのマークということはTrident(銛)の略なのかな?
ピカピカ過ぎない塗装の金属ハウジングです。
耳の窪み全体で支える形状で、ステムの長さは普通。ステム先端のフィルターはパンチングメタルです。
側面に1ヶ所、画像では上部に1ヶ所、ベント(通気穴)があります。どちらも耳に接する側なので音漏れの原因にはなりにくいです。
音質
箱出し
箱出し付属イヤーピースでは高音域に対して低音域がやや緩い印象がありましたが、ひと晩鳴らしただけでかなり改善しました。その後も低音の変化に期待してエージングを100時間行いました。
エージング100時間~
エージングによって低音が少し強まりました。
なおTRI-i4はイヤーピースによって音域感のバランスの印象が変わりやすいようです。イヤーピースを変更した場合には以下バランスではないと感じる場合があります。ご注意ください。各種イヤーピースでのバランスについてはレビュー第2回のおすすめイヤーピース編で書いていきます。
付属イヤーピース(クリアグレー)
軸が黄緑のクリアグレーのシリコンイヤーピース(以下付属クリアグレー)です。このイヤーピースは高音の主張が少しだけ抑えられつつ低音域がやや膨らむ傾向があります。また、低音のアタック感が衰えにくいです。
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- アタック感は音量的に少し強め
- 伸びやか
- 音場はやや広め
- 情報量多め、解像度高め
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは全域の音量差は大きくありません。低音域の上の方の帯域がわずかに盛り上がって中音域になだらかな凹みがあります。付属クリアグレー使用で音楽を聞いていると軽く中低音域寄り弱ドンシャリだと感じることが多いです。
低音域はイヤーピース次第では弱りやすいため、付属イヤーピースと耳との形状の相性が悪かったりすぐに好みのイヤーピースに変えてしまう人の中には低音が控えめ過ぎると感じたり、中低音域寄りだと感じない人はいると思います。また、高音の主張をもって中高音域寄りだと評価する人もいるでしょう。微妙なバランス。
高音域にはKnowles製のBAが採用されています。はっきり主張しますが強すぎず刺さらない程度です。情報量多め。高音の凹凸のチューニングが上手くできていて解像度が高めです。金属系楽器の主張は適度ですがシンバルの音に若干の線の細さを感じました。
中音域はなだらかに凹んでいる部分があるようです。そのおかげか音の距離感のわり音場は広めに感じられます。基本的にはボーカルはやや近めですが、コーラスも含めて少しだけ遠く聞こえる楽曲がありました。また、付属クリアグレーは低音がわずかに膨らむ傾向があるため、音がくもりやすい楽曲ではそれが感じられることがあります。その場合はイヤーピース変更をおすすめします。
低音域は適度に厚みがあります。アタック感が音量的にやや強めな音があります。低音域全体で強いのではなく一部の楽器の音が強めなように感じます。前述した通り付属クリアグレーでは低音がわずかに膨らむため、低音域をもっとくっきりさせたいと感じる場合もイヤーピース変更をおすすめします。リケーブルも効果的です。
特に中・高音域の解像度は高めで、解像度が低いと聞き分けが難しい一部金物系楽器を聞き分けることができました。人の声や物音は比較的現実の音に近いのではないかと思います。聞き取りやすいです。ボーカルの刺さりは歯擦音の強い英語圏の歌手でも気になるか気にならないかという程度です。
低音域の解像度は中・高音域に譲るところがありますが不満はなく、バランスの悪さもつながりの悪さも感じません。全体を不自然なくうまく支えているのではないでしょうか。
分離と定位は良好です。音によっては距離感が若干近いことがありますが全体的に伸びやかで、音楽を聞いているとむしろやや広いと感じられることが多いです。残響音は適度。
付属イヤーピース(シリコン・ブラック)
シリコンでブラックの付属イヤーピース(以下、付属ブラック)はLとMで大きさの差が大きく、一般的な市販イヤーピースと比較するとMは小さめです。私の耳には間のサイズが欲しい感じです。Lサイズの方を使うと押し込んでいるせいかこもり感が出てしまいMサイズでは音が漏れてしまいますので、評価なしとします。
付属イヤーピース(ウレタン)
- 高音の主張が抑えられる
- 低音の広がりが抑えられる
- 低音のアタック感が音量的に弱まる
- サ行の不快感が軽減
高音の主張が抑えられ、若干ですがきらびやかさが衰えます。シリコンでは音量的にも大きめに主張していたシンバルや、スネアドラムの高音成分もやや抑え気味です。若干高音の解像度が衰えてしまったように聞こえ、惜しい感じです。
ボーカルの歯擦音が軽減されます。刺さりが気になっていたなら改善するはずです。
低音のアタック感が音量的に弱るようです。また、低音域の広がりが抑えられてタイトになるので、シリコンで感じられる低音の広がりや全域の伸びやかさが多すぎると感じるならウレタンの方が良いでしょう。
低音と高音の両方が少しずつ弱るため比較的ニュートラルでややマイルドな弱ドンシャリだと感じます。
その他
装着感
耳の窪み全体で支えるハウジング形状です。若干ステムが長めなのかピタッと耳に密着はしません。私の耳では装着感はまずまず良く、長時間使うことができます。
きっちり奥まで入れ込みつつイヤーピースの穴を外耳道の入り口に合わせるように微調整して装着するとくもりのない音になります。ここがずれていると低音の量が増えて聞こえたり中音域がくもることがあります。
音漏れ・遮音性
ベント(通気穴)は小さく1ヶ所開いているだけで位置も耳のくぼみ側なので音漏れは小さいと思います。遮音性は普通です。
再生環境と駆動力
スマホでも問題なく音量は取れますが、若干高音のきらびやかさとクリアさが劣るようです。ある程度駆動力のあるアンプかDAPがあった方が満足度が高いと思います。
付属ケーブル
付属ケーブルは銀メッキです。柔らかくて取り回しも良くタッチノイズも気になりません。低音を強くすることはなく高音がよく出て伸びるタイプだと思います。
Tin HiFi T3との比較
現行の同価格帯かつドライバ構成が同じイヤホンにはTin HiFi T3(Amazon/AliExpress)があります。BAにKnowles製のものを採用しているのも同様です。予算に制約があって7千円前後のイヤホンから選んで探している場合は候補に上がっているかもしれません。
Tin HiFi T3は明らかな高音寄りのバランスでシャープで引き締まった音色をしておりTRI-i4とはだいぶ音色が異なります。T3では9kHz付近をイコライザーで少し下げてやると音のリアルさが向上しますがTRI-i4はここを上げるとリアルさが向上します。
シャープなメリハリと疾走感、強めの高音、低音の密度を求めるならT3が良いのではないかと。ただしT3はキビキビしていてゆったりとした楽曲との相性は微妙なところなので、できるだけオールジャンルで使いたいならTRI-i4の方が使いやすいでしょう。
総評
クリアグレーの付属イヤーピース(以下、付属クリアグレー)で低音域が緩く感じられる場合はイヤーピース変更で改善します。ただし注意点として、音のバランスの印象がイヤーピースによって変わりやすいようです。
私はエージング後(低音が強まってやや締まる)のTRI-i4は付属ケーブルと付属クリアグレーのイヤーピースでは軽く中低音域寄りだと判断しましたがイヤーピースを変えると中高音域寄りだと感じる場合もありました。付属クリアグレーでもBAが主に担当する帯域の主張をもって中高音域寄りだと判断する人もいるのではないかと思います。いわゆるモニター系ではないのかもしれませんがある意味だいぶニュートラルで絶妙なバランスなんだと思います。
高音域はとてもきれいで刺激的すぎずマイルドすぎず解像度も高く、中高音域と共にTRI-i4の音色の主役になっています。中音域全体は自然かつ伸びやかです。低音域は楽曲によっては若干控えめに感じることがありますが実力的には十分弱ドンシャリと言えるくらいには出ていて程良く厚みもあります。DDとBAとのバランスもよく取れています。リケーブルすればもっと重みのある低音も出せます。
シンバルなどは少し線が細いもののギターやピアノとは非常に相性が良く、伸びやかで低音にも不足は感じないため生楽器演奏でもバランスが良いと思います。
付属クリアグレーでは少し気づきにくいのですが、特に中高音域のアタック感がやや強いようです。アタック感が弱いとかなり気の抜けた音がする楽曲を複数チェックしましたがどれも気持ち良く聞けました。それなのにマイルドさもあります。
低音のアタック感は強く感じられる楽器と控えめに感じられる楽器がありました。そのためドンシャリ具合が楽曲によって結構違って聞こえます。
相性の悪い楽曲は非常に少ないです。しかし付属ケーブルは伸びが良いタイプなのでイヤーピースとの組み合わせ次第ではキレが欲しい楽曲が少し伸びやか過ぎるかもしれません。また、現実の音により近づけるにはバイオリンや三味線の高音成分のどこかが足りてない気がしました。イコライザーで1.2kHzと9kHz辺りを上げるとリアルさが向上するので、適度にマイルドにするために抑えている部分があるのだと思います。
私は耳での聞き取りのみで評価しているためこれはちょっと確証がないのですが、私の高音の可聴域(たぶん15kHz辺り)ギリギリか少し下くらいにほんの少し山がある気がします。そのため加齢や耳の酷使で可聴域が狭まっている人や小さめの音量で聞いている人は私が感じるよりもマイルドに感じる可能性がありそうです。
中音域のなだらかな凹みの深さは軽微です。音場の広さに効果が出ているのではないでしょうか。ただし一部の楽曲でボーカルとコーラスがちょっとだけ下がることがあります。
付属ケーブルは高音がよく出て伸びやかでTRI-i4との相性は良く、リケーブルに興味がない人でも満足できると思います。しかしTRI-i4にはもっと実力がありリケーブルすることで確実に音質は向上します。低音も強化できるので、低音が弱いと感じる人にもリケーブルをおすすめします。安価なケーブルも増えていますし、これまでリケーブルに興味がなかった人も試してほしいと思います。
低音のバランスによっては中音域(特にボーカル)にくもりが出ることがあるため、低音を強化するケーブルへのリケーブルには注意が必要です。また、高音が衰えるのも解像度低下につながります。リケーブルについては別途おすすめリケーブル編記事を書きます。
まとめ
高音の主張がありつつも刺激は抑えられたバランスの良い音色のイヤホンです。
初期装備のTRI-i4をおすすめできるのは、刺激が強すぎるのは好みではないけれど高音の主張が不足するのは物足りない人、幅広い楽曲をひとつのイヤホンで済ませたい人です。ある程度駆動力のあるアンプやDAPを持っている人には更におすすめできます。
逆に初期装備のTRI-i4をおすすめできないのは、メリハリの効いたシャープでタイトな音色が好みな人、低音がどっしり重いのが好みな人、密度と厚みを両立した解像度の高い低音が好みな人です。
低音はリケーブルである程度は増強することが可能で質も悪くはないのですが、低音好きな人には物足りないかもしれません。
通常価格7,500円でこの音質なら十分満足できます。リケーブルすれば音質は向上しますが付属ケーブルとの相性もわりと良い方だと思います。付属イヤーピースで音に少しでもくもりを感じるならイヤーピースだけは変えた方が良いでしょう。
TRI-i4のレビュー、次回はおすすめイヤーピース編です。第3回におすすめリケーブル編も書く予定ですが間に別のイヤホン記事が入るかもしれません。
- 2020/01/21追記:おすすめイヤーピース編を公開しました。
- 2019/12/23 [レビュー] TRI-i3 (1) やや量感と太さがある低域、高解像度な中~高域、広めな音場には立体感あり
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