[レビュー] KBEAR Lark – 揚げヒバリがさえずるような晴れやかさと素直さ

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今回はKBEAR Larkのレビューです。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。

気になる点があったため調査したところKBEAR Larkは販売開始直後にロット改良されているらしいです。私の手元にあるLarkは販売開始直後のものですが、旧版と改良版のどちらであるかわかりません。ただしロット改良について言及しているのは海外(欧米?)レビュアーのみで日本人からの情報は見当たりませんでした。日本には旧ロットが入ってきているかどうかは不明です。

KBEAR Larkの白背景画像
  • 低価格中華イヤホンには個体差があったり販売途中に仕様変更が行われる場合があります。KBEARは個体差についての指摘はほとんどないようです。
  • 私の耳は耳穴入り口付近から外耳道が太めです。これまでの経験上、深く装着しすぎるとバランスが崩れるイヤホンも少なくないためアジア人の平均から外れる程度には太めではないかと思います。
  • イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。

製品仕様

  • ブランド:KBEAR
  • 型番:Lark
  • ドライバ構成:1BA+1DD
  • インピーダンス:16Ω
  • 感度:105dB/mW
  • 再生周波数帯域:20Hz-20000Hz
  • ケーブル端子:2pin 0.78mm TFZ
  • DDは10mmサイズの複合振動膜(Silicon crystal biological diaphragm)
  • Bellsing製のカスタマイズBA
  • フェイスプレートは亜鉛合金
  • ノズルはアルミニウム合金
  • ケーブルは4芯銀メッキ銅

外箱はシンプル、内箱はシックな黒です。セミハードケースが付属するため価格帯のわりに大きめのパッケージとなっています。

KBEAR Larkの外箱表面の白背景画像 KBEAR Larkの外箱裏面の白背景画像 KBEAR Larkの内箱の画像 KBEAR Larkの内箱の中の梱包画像

付属品は銀メッキ銅ケーブル、シリコンイヤーピース2種類各3サイズ(グレーはMが2ペア)、セミハードケースです。

KBEAR Larkの同梱物の画像
KBEARのセミハードケースは使いやすくてけっこう便利です。

フェイスプレートにはハニカム模様が刻まれています。金属製のノズルは少し太めでイヤーピース止めの段差があります。軸が細めなイヤーピースでも装着可能ですが外すときに負担がかかり千切れそうで心配になることがあります。ノズルフィルターはメッシュ、2pinはTFZタイプです。

KBEAR Larkのハウジングの画像1
なんでハニカム…?
KBEAR Larkのハウジングの画像2 KBEAR Larkのハウジングの画像3 KBEAR Larkのハウジングの画像4 KBEAR Larkのハウジングの画像5

音質

イヤホンの評価環境にはFiio X7 MarkⅡ(AM3D)を使用することが多いのですが初期装備のKBEAR Larkはやや非力なくらいの機器でないと高音が強すぎることがあり、体調次第ではX7MK2(AM3D)ローゲインでは私にはキツいです。そのため今回はZishan Z3(AK4490版/AKチップ不足により現行品はES9038Q2M AliExpress $48.63)を使用します。付属グレーシリコンイヤーピース使用時/ほとんど騒音のない屋内で平均約50dB*1)で聴いていきます。

  • 1. 平均が出せるスマホの騒音計アプリで計測しています。
KBEAR LarkとZishan Z3の組み合わせの画像
Zishan Z3はやや非力なものの安価で評判の良いDAPです。

駆動力および相性の比較としてFiio X7 MarkⅡ(AM3D)、PC→iFi Audio ZEN DAC*2公式製品情報/Amazon)、PC→aune BU1*2代理店サイト/eイヤホン/ヨドバシ)、Xperia X Performance、iPod touch(第7世代)も使用しました。音源は主にFLACです。他にAmazon MusicおよびYoutubeの動画なども使用しています。

  • 2. PCからの再生はfoobar2000+WASAPI(event)

付属グレーイヤーピース

ケーブルは付属ケーブル、イヤーピースは付属グレー(左L右M)で深すぎない程度かつ耳にある程度密着するくらいの装着の深さで聴いていきます。

高音の主張*
3.7
★★★★★
★★★★★
高音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
3.7
★★★★★
★★★★★
中音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
3.2
★★★★★
★★★★★
低音域の音量
3.2
★★★★★
★★★★★
アタック感*
3.5
★★★★★
★★★★★
  • 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
  • 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
  • 晴れやかで素直な音色
  • 見通しが良く圧迫感がない音場感
  • 適度な暖かみ
  • 人の声が聴きやすい
  • 楽曲をさほど選ばない

周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックした限りでは超低域は小さめながら25Hz以下まで聴こえ、ボーカル帯域は凹まず、4kHzに弱めのピーク、7.8~8kHz辺りに高めのピークがあります。比較的ニュートラルな、聴覚上のフラットに近めのやや中高~高域寄り弱ドンシャリと言ったところでしょうか。

付属ケーブルとの組み合わせで高駆動力な機器では高域が全体的に底上げされて高音成分が多めな音色になってしまいます。あまりパワフルでない環境の方がより音色が素直です。

高音域は適度な主張で耳障りではなく、薄さのない軽やかさと歯切れの良さがありつつもほどほどに伸びやか、きらびやかさも十分ですが若干鋭さが感じられます。わずかにシンバルにか細さが感じられるのがちょっと惜しいです。

中音域は適度に暖かみがあって聴きやすく、非常に聞き取りやすいです。付属イヤーピースの影響もあって全体の中ではボーカルが手前に来ますが近すぎず、距離感は適度です。ボーカルと演奏との分離も良く、音数が多い楽曲も非常に明瞭です。

浅めに装着するほどボーカルが出てくるようです。外耳道の細い人には非常にボーカル向きだと感じられるのではないでしょうか。

人の声も物音も響きすぎずさほど凹む帯域もないためラジオを聴いたり動画視聴などにも良さそうです。しかし付属ケーブルではアコースティックギターなど一部の楽器の音がやや響くことがあります。浅く装着するかイヤーピース変更もしくはリケーブルすることで解消します。

また、付属ケーブルで高駆動力すぎると声の高い男性ボーカルと女性ボーカルに少しだけ歯擦音が出ます。

低音域は強すぎず弱すぎず適度です。超低域は25Hzまでは小さすぎない程度に出ておりほどほどに重く、少しの暖かみを与えるくらいの量、十分な深さがあります。しかし重低音はさほど伸びません。

再生環境が高駆動力すぎると高音が強まることで相対的に低音の存在感が弱まり全体的にややクール寄りになりやすいです。

音の距離感は普通ですが開放的で抜けが良く音場をやや広めに感じやすいです。しかしこのイヤーピースは真横から後方にかけての音の広がりや包まれ感が弱いです。変更することで後方へも音が広がります。

分離と定位は良好、情報量と解像度は最近の$30前後の中華イヤホンとしては普通かやや良いです。重低音も高音も伸びは強くないため全体的にはややタイトです。

付属クリアイヤーピース

  • 低音が付属グレーより少し弱る
  • 高音が付属グレーより伸びやか
  • ボーカルが付属グレーより近め

グレーよりも低音がよりタイトで弱めです。高音の鮮やかさが引き立ちます。また、付属グレーよりもボーカル帯域の音量が大きめです。ボーカル曲を多く聴くならこちらの方が好みに合うかもしれませんね。

その他

装着感と装着位置

ノズルの長さは十分で装着に差し障りはありません。装着感はこのタイプの低価格中華イヤホンハウジング形状としては普通です。しかし装着の深さのベスト位置は若干シビアです。深めの装着は可能なものの、外耳道入り口が太い方はきっちり奥まで入れすぎるとバランスが崩れるかもしれません。

KBEAR Larkをシリコン耳モデルに装着した画像1 KBEAR Larkをシリコン耳モデルに装着した画像2

音漏れ・遮音性

ベント(通気穴)は耳側に小さく2ヶ所です。音漏れは気になりません。付属イヤーピース使用時の遮音性はさほど良くはなく、静かな音楽を聴きながらパソコンのキーボードを打っていると打鍵音が聴こえてきます。

KBEAR Larkのベント位置がわかるハウジング画像
遮音性は惜しいですが原因は付属イヤーピースにもあります。

再生環境と駆動力

特に付属ケーブルでは高駆動力な機器との相性が悪く、かなり高音が強まります。中年の私でも耳の調子が良く高音が普段より聴こえる日は頭痛がするほどでした。機器による変化を緩和するには太めのケーブルへのリケーブルが有効です。使いたい機器で高音が強すぎると感じる場合は検討してみてください。8芯よりも16芯や24芯の方が変化が小さくなりますが太いケーブルでも高音が強まるのは止まらないようです。

KBEAR LarkとNICEHCK C16-1とJVCスパイラルドットとの組み合わせの画像
NICEHCK C16-1は相性の良いイヤホンも多く1本持っておくと重宝します。

高駆動力な方が高音の伸びと抜けが良くなるものの、スマホやiPod touch直挿しでも不満なく鳴ります。素直な音色もあって普段遣いに良いですね。

KBEAR LarkとiPod touchとの組み合わせの画像
iPod touchなど低駆動機器直挿し用にも向きます。

付属ケーブル

付属ケーブルは超低域が少し弱りやすくLarkの音色を高音側にやや寄せ気味ではありますがLarkとの相性は悪くはありません。しかしそれは低駆動力な機器限定であることには注意が必要です。やや硬めのシリコン素材のスライダーは適度な滑りやすさでズレにくく使いやすいです。

KBEAR Larkの付属ケーブルの白背景画像 KBEAR Larkの付属ケーブルの一部の白背景画像

付属イヤーピース

同じ形状で色違いのシリコン製イヤーピースが2種類付属します。Larkとの相性はさほど悪くはありません。傘も軸も比較的柔らかめの丸型で、いずれも超低域がやや弱まりやすく中高域寄りに感じられます。相対的にボーカル音量がやや強めに出やすいです。

KBEAR Larkの付属イヤーピースを並べた白背景画像 KBEAR Larkの付属グレーイヤーピースを横から撮影した画像

また、どちらも真横から後方への音の広がりが抑制的です。変更することで後方へ音場が広がります。ボーカルが前面に聞こえやすいバランスは付属イヤーピースの影響があるため、イヤーピースを変更するとボーカルが下がることがあります。

他のイヤホンとの比較

HZSOUND Heart Mirror

HZSOUND Heart Mirror(Amazon 6,590円/AliExpress $49-$51)は昨年発売されたカーボンナノチューブの10mmDDを採用した1DD機です。発売当初から評価は高く、同シーズン発売の中華イヤホンの中でも$50前後の価格帯ではNo.1と評価する方も少なからずいらしたようです。

HZSOUND Heart Mirrorの同梱物の画像 HZSOUND Heart MirrorとKBEAR Larkを並べた白背景画像
  • 高音の刺激:KBEAR Lark ≦ Heart Mirror
  • 高音域の音量:KBEAR Lark ≒ Heart Mirror
  • 中音域の音量:KBEAR Lark ≧ Heart Mirror
  • 低音域の音量:KBEAR Lark ≧ Heart Mirror
  • 低音の量:KBEAR Lark ≧ Heart Mirror
  • アタック感:KBEAR Lark < Heart Mirror
  • それぞれの付属ケーブルと付属イヤーピースを使用した状態での比較です。
  • Heart Mirrorは高駆動力で実力を発揮するため、KBEAR Larkとは比較時の再生機器が異なります。

Heart Mirrorは優れたイヤホンですが、真価を発揮するために駆動力を要求することと少しボーカルがあっさり気味なのが弱点といえば弱点です。リケーブルやイヤーピース交換で厚みを増すことは可能で、しかし代償として特に楽器の音色で細部の表現力が落ちやすいです。私は付属品だけで使用しています。

対してKBEAR Larkはむしろ低駆動力な機器で鳴らした方が聴きやすく、ボーカルはHeart Mirrorよりも自然です。解像度や情報量の面において両者には価格相応の差はありますが、生楽器の描写が素晴らしいHeart Mirrorと自然なボーカルで全体的にバランスの良いKBEAR Larkとでは魅力となるポイント自体が若干異なります。

総評

  • 晴れやかで素直な音色
  • 少しの暖かみ
  • 人の声が聞き取りやすい
  • やや広めな音場
  • 低駆動力機器に向く
  • 高駆動力機器に向かない
  • 装着位置がシビア
  • ロット改良前後のどちらであるか識別できない

Lark(ヒバリ)の名の通り晴れた日に高く舞い上がる揚げヒバリがさえずるような晴れやかさと少しの暖かみが感じられる素直な音色です。これまでのKBEARの製品の中では最も素直なニュートラルでドンシャリ感が弱めな音色ではないかと思います。

KBEAR Larkの画像

明瞭で人の声が響かず、ラジオや動画内の話し声が非常に聞き取りやすいです。相性の悪い楽曲は多くはないものの重低音の伸びやかさはさほどでもないため打ち込みで強めの重低音を多用している楽曲では物足りなさも感じました。

駆動力の大きさと装着の深さによって高域が全体的に持ち上がり、中高~高域がかなり強まります。高音が強すぎる、聞き疲れると感じる場合はより装着を浅めにするか、非力な機器で試してみてください。付属ケーブルでは低駆動な再生機器との相性が良く、スマホやiPod touch直挿しでもわりと不満なく鳴ってくれます。

しかし高駆動力な方が高音の伸びと抜けが良くなるため、付属品だけで低駆動力な機器への直挿しではドラマチックさがあとひと息惜しいと感じました。定位もある程度の駆動力がないと少しぼやけ気味になります。

所有する機器では装着の深さを調節しても高音が強まってしまうならリケーブルをおすすめします。付属ケーブルは超低域がやや弱いため高音側に寄り気味で、シンバルのか細さの原因にもなっています。変更することでこちらもかなり改善されます。

付属品だけでも満足できる音色ではありますが、私にはリケーブルした上である程度の高駆動力で鳴らしたときが最も満足度の高い音色でした。

初期装備のKBEAR Larkをおすすめできるのは、あまりパワフルでない機器での利用を想定している人、味付けの少ないニュートラルな音色が好みな人です。駆動力のある機器で使うならリケーブルをおすすめします。

逆に初期装備のKBEAR Larkをおすすめできないのは、低音が深く強い音色が好みな人です。リケーブルせずにパワフルな機器での利用を想定している人にもおすすめしません。

KBEAR Larkは価格を考慮すると出来が良く、クセのない音色を上手くまとめた万能型イヤホンだと思います。

しかしながら、中華イヤホンメーカーの悪癖、告知せずにロット変更をした上で修正前のロットは回収せずに複数のロットが流通している状況を放置する問題はKBEARの製品にも存在しているようです。私の手元のLarkもどちらのロットなのか、改良前のロットが日本に入っているのかいないのかもわかりません。

カタログスペックだけでなく音質で評価できる製品も増え、ハナから個体差があって気にするだけ無駄というメーカーもだいぶ減り、イメージ画像ではあるものの周波数特性を公開している製品も多くなりました。やむを得ないなりにきちんと告知してセラーやユーザーが容易に識別できるような工夫をしてくれるようになって欲しいですね。

KBEARからは新着イヤホン『KBEAR Robin』(AliExpress)が予約開始しています。Lark(ヒバリ)に引き続きRobin(ヒタキ科など一部の小鳥を指す)と鳥の名を冠したイヤホンです。広くはイギリスで馴染みのあるヨーロッパコマドリを指すことが多いようですがRobinと呼ばれる鳥のうち中国にも分布するのはコルリだそうです。KBEAR Robinにはブルーが用意されており雄のコルリの羽の色は青と白だそうですからコルリをイメージした製品なのかもしれませんね。

[追記] KBEAR Larkのおすすめリケーブル編は中止することにしました。所有するLarkのロットが1stロット(4kロット)なのか2ndロットなのか識別困難なためです。予告していたのに申し訳ありません。

おすすめイヤーピース編を公開しました。