今回はKZ ZSN Proのレビューです。第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。エージング後&付属ケーブルの最終評価だけでよろしければ『エージング200時間~』から後ろだけご覧ください。
- 中華イヤホンには個体差・ロット差がよくあります。必ずしも本レビューと同様の音が出るとは限りません。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:KZ
- 型番:ZSN Pro
- ドライバ構成:1BA+1DD
- インピーダンス:24Ω
- 感度:112dB
- 再生周波数帯域:7Hz-40000Hz
- ケーブル端子:2pin(qdc/0.75mm)
- KZ ZSN Pro
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外箱はKZの白い簡易箱でした。
同梱品は最低限で、付属ケーブルとイヤーピース2種類。1種類はKZの溝入りイヤーピース3サイズで、もう1種類はCCA製品に付属している溝のないイヤーピースがMサイズのみ。
軽くつや消しのフェイスプレートは傷が付きにくく目立ちにくそうです。実際レビューを書いている間わりと雑に扱っていた気がしますが傷はまだ付いていませんね。
全体のビルドクオリティにも気になる点はありません。ケーブル端子はKZ Cタイプ(qdc)です。
ステムは金属製でやや太めでイヤーピース止めの段差があります。先端のカバーフィルターはパンチングメタルです。
ハウジングの大きさはKZのイヤホンの中では大きくも小さくもなく普通サイズです。
音質
商品説明
Amazonの販売店WTSUN Audioの商品ページには以下のように書かれています。
- 全帯域に通じたバランスの向上、迫力でる低音、伸びやかな高域、ボーカルが自然で清らかな音
- 音場感豊かなサウンド
ちなみにBAはKZ30095の改良型、DDは10mmドライバの改良型なようです。
箱出し
私の手元の個体は箱出しでは低音はさほど強くなく高音が強めでしたが、真逆(高音が控えめで低音は十分出ている)な個体もあるようです。
エージング200時間~
鳴らし始めて大体48時間前後で高音の主張が非常に強くなりました。その後徐々に落ち着いて来ますが、エージングせずに聞いていると途中で高音がきつい時期があるんじゃないかと思います。3日目を超えたあたりで一気に良くなった気がします。低音は徐々に太く重くなりました。
付属ケーブル、付属のKZ溝入りイヤーピースで聞いていきます。ちなみに私はZSN Proでは左L右Mが最適サイズなので、最初に装着済みの溝なしイヤーピース(Mサイズのみ)は評価していません。
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- やや中高音域寄りでバランスが良く強すぎないドンシャリ傾向
- 高音は刺さらず
- 中音域は緩く凹み
- 低音域にはどっしり感と密度がある
- 音の距離感は普通かやや近め
- 情報量と解像度はやや良い
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは、音量バランスは中音域≒高音域≧低音域です。ただし高音のピークは刺さらないながら高く出ていることと低音の下の方の帯域から音量が出ていて密度とどっしり感があり低音のアタック感が音量的に少し強いため音楽を聞いていると低音域が控えめだとは感じず、むしろ低音域寄りに感じられることもあります。基本的にはやや中高音域寄りでバランスが良く強すぎないドンシャリ傾向です。
高音域は明瞭できれいに出ています。きらびやかさは程々で、あっさりはしていませんが艶やはあまり感じられず、この辺はお値段相応なのかなと。不快感を感じない適度な主張で刺さりは感じません。スネアドラムの音は高音がもう少し欲しいと感じますがイヤーピースを変更すればもっと出ます。
中音域に浅く凹凸がありますが音楽を聞いている分には大きな凹みがあるとまでは感じません。音場を少し広げるのに役立っている気がします。物音の音源などはわりと現実の音に近いと思いますが、男性の高い声が若干ドライに、男性の低い声がわずかに低音寄りに感じられることがありました。伸びは過不足ない程度です。
低音域は帯域ごとに聞き取った時にはごくごくわずかに控えめですが、下の帯域から音量が出ていて程良い厚み、どっしり感とやや密度がありアタック感が音量的に少し強め(ドンシャリのドンが少し強い)なためか、楽曲によっては低音域寄りに聞こえることもあります。
音の輪郭はやや緩く感じられることもあります。これらについてもイヤーピースを変更するといくらか改善されます。KZの溝入りイヤーピースは若干低音域が膨らむ傾向があるのでそのせいもあるんじゃないかと思います。
音の距離感は普通かやや近く人の声も若干近いですが、適度な響きとベント(通気穴)のおかげか閉塞感を感じにくいので音場は狭いとは感じません。分離は良く、定位は普通です。
情報量と解像度はこの価格帯のイヤホンと付属ケーブルとしては良い方だと思います。
その他
装着感
私の耳の形状には良く合っていて結構しっかり中に入ることとステムが太いせいか、耳穴への接触がやや強めに感じます。イヤーピースだけではなくハウジング形状とケーブルの耳掛けでもちゃんと支えているのですが、耳穴が小さい人は気になるかもしれません。
その点以外では重量も軽く耳に当たる部分もなく、煩わしさを感じることがないので長時間使用することができます。
音漏れと遮音性
ベント(通気穴)は内側に1ヶ所とフェイスプレート側に1ヶ所あります。イヤーピースの入り口を指で塞いで耳を近づけてみましたが音漏れはわずかです。
遮音性は付属イヤーピースに限っては普通です。
ホワイトノイズ
再生環境由来のホワイトノイズは相応に出ます。普段ホワイトノイズに悩まされがちな再生環境の場合は確実にホワイトノイズが感じられると思います。
アンプ・DAPの使用
駆動力の小さいDAP、スマホ(Xperia X Performance)、Windows-USBオーディオアダプターのいずれも再生環境の実力以外の極端な劣化は感じませんでした。ただしXperia X Performanceと一部ポタアンではいつもよりやや低音寄りに聞こえたので、再生環境によって異なるバランスで聞こえる可能性はありそうです。
KZ ZSNおよびCCA CA4との比較
同じ名称が使われているKZ ZSN(AliExpress/Amazon)と、同時期に発売された同じドライバ構成(ただし異なるドライバ)のCCA CA4(Amazon/AliExpress)と比較してみます。
KZ ZSNおよびCCA CA4のハウジングとの比較
サイズ感は大体同じくらいです。
ZSNおよびZSN ProとCA4では特にステムの角度が異なります。内側のベントはZSN ProとZSNはDDの真上に1ヶ所、CA4はDDの真上と脇の2ヶ所です。
CA4はちょっとだけ厚みがありますね。
ZSN Proの音色との比較
ZSN ProがZSNのPro版、すなわち単純に進化したバージョンなのかという点については「ちょっと変化して進化した」という感想です。
楽曲や再生環境によって中高音域寄りに感じたりやや低音域に寄って感じたりするZSN Proとは異なり無印ZSNは安定した中低音域寄りのバランス型で、高音の主張は若干控えめです。しかしどちらもわりと素直な鳴りです。
中高音域のクリアさはZSN Proの方が上なのですがより自然なのは無印ZSNです。ZSN Proの方が高音の主張も低音の主張も無印ZSNよりやや強く、その分ドンシャリ感があります。中音域は無印ZSNの方が滑らかかつZSN Proでたまに感じるドライ感もないので、この点についてはZSNの方が勝っていると考える人もいると思います。
無印ZSNはエージングによる変化がZSN Proほどには大きくなかったと記憶しており、この点においてはエージングで音が安定するまで100時間かかるZSN Proよりも中華イヤホンに興味がない人やエージングが面倒な人におすすめしやすいです。
エージングの点を除いた時に無印ZSNとZSN ProのどちらがよりおすすめであるかはPro化によって進化したかどうかとはまた別問題だと感じました。より聞きやすいリスニング向き万能型の無印ZSNと、明瞭さと楽しさが進化したZSN Proという印象です。どちらも強い個性は感じません。
なおKZは自社ドライバの改良と共に旧型機のドライバを変更することがありますので、今後の無印ZSNも同傾向の音色であるとは限りません。ご了承ください。
CCA CA4の音色との比較
CA4は高音は主張しすぎず誇張を感じない程度のきらびやかさもあり、低音はやや量感がある中低域寄り。ドンシャリのドンが強めです。ZSN Proよりもボーカルが少し離れていて、音場もやや広く感じられます。
ZSN Proにも似た傾向がありますがCA4は付属ケーブルと付属イヤーピースでは高音のシャリ感はほぼ感じないもののバランス的に中高音域は結構出ているようで、リケーブルしたりイヤーピースを変えたりするとシャリ感が出たりボーカルのブレスが大きくなりすぎることもあります。
付属ケーブルで比較した時にはCA4よりZSN Proの方が高音の主張があります。しかしいずれも刺さりは感じないのでその点でどちらかを避けるべきということはありません。
中音域はさほど凹みはないもののZSN Proと比較するとキレが良く、比較した時には伸びがない(代わりに響きがあるので不満は感じません)ことと高音域とのバランスからか特に楽器ではCA4の方が少しあっさりめに感じられます。
CA4の方が低音のアタック感が音量的に強いのですが重低音はZSN Proの方が出ているようです。
楽器中心の楽曲を多く聞くこともあって個人的な好みも加味してしまうとコスパ的にはZSN Proの方が勝っているように感じます。情報量と解像度はZSN Proの方が上だと思います。しかしよりノリが良いのはCA4なので、スピード感のある音色が好みならZSN ProよりはCA4の方が好きと言う人も多いと思います。
総評
高音が明るく低音に少し濃さがあって重みのある音色です。色々試した結果基本的にはやや中高音域寄りのようなのですが楽曲や再生環境によってはやや低音域に寄ることがあるようです。
明るめで刺激的過ぎない高音域、比較的素直で手薄さも感じない中音域、重みと密度があり適度な厚さの低音域、適度な距離感のボーカル、と個性的過ぎずにバランスも良いです。音の輪郭が緩く感じられるならイヤーピースを市販のものに変更するだけでもだいぶ改善します。
再生環境由来のホワイトノイズは出るものの、ZSN Proはチープな再生環境でも概ね実力を発揮していると思います。
KZ ZSNからはより明瞭になり、万人向けに近いバランスでありつつも高音の主張と低音の重みを増やすことでより楽しい音色に進化したと感じました。
ただし、最近のKZ(およびCCA)機はエージングによる音質変化が小さくなってきていたのにZSN Proでは長時間のエージングが必要でした。特に48時間経過頃には高音が聞くのが辛いレベルで主張するようになり、落ち着くまでには合計100時間くらいは必要です。
また、リケーブルで音質は上がりますがお高めなものを使っても驚くほど劇的に音質向上するとまでは感じないので、イヤホンとしての実力は価格以上ではあるものの価格帯がワンランク上の上級機に並ぶことができるとまでは言えない気がします。
おすすめできるのは、エージングの必要性に抵抗がない、無印ZSNはマイルド過ぎると感じてしまう、低音が厚すぎるのは好みでないが重みは欲しい、個性的過ぎる音は求めていない、チープな再生環境で聞くことを想定している、安価なイヤホンの予算しか取れない人です。
無印ZSNの音に明瞭さ不足と物足りなさを感じるならZSN Proはそれに答えをくれるかもしれません。無印ZSNの出来が良いとは思うけれどなんとなく使っていないという人にもおすすめです。
3千円以下という価格に対しての出来は非常に良く、おすすめ条件に合致しているならば満足できるイヤホンだと思います。リケーブルすることで更に明瞭に分離も良くなり伸びも出せますが、付属ケーブルとの相性も特に悪くはありません。
逆におすすめしないのは、ある程度駆動力のある再生環境を持っていて上級機イヤホンに投資できる予算がある人、無印ZSNのバランスがとても気に入っている人、個性の強いイヤホンが好きな人、音色に艶やかさを求める人、引き締まったシャープな音色が好みな人です。
ホワイトノイズが出やすい再生環境で音楽を聞いていていつも気になって困っているという人も避けた方が良いような気がします。
比較的なんでもそつなく鳴らす代わりに突出した個性がないので、個性的なイヤホンを追い求めている人には物足りないかもしれません。
KZの黒い溝入りイヤーピースは低音域がやや膨らむ傾向があるため、音の輪郭をよりはっきりさせたいならイヤーピース変更が効果的です。おすすめできるイヤーピースは次回おすすめイヤーピース編レビューで書いていきます。
- 2019/05/25追記:おすすめイヤーピース編を公開しました。
- 2019/05/25 [レビュー] KZ ZSN Pro (2) おすすめイヤーピース編
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