KBEAR Storm – JPOP向きカジュアルコスパイヤホンの定位ズレにはJSHiFi-Nocturne&NUARL Black Ear+7

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今回はKBEAR Stormのレビューです。Easy earphonesから製品提供を受けています。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。

KBEAR Stormの白背景画像

製品仕様

ブランドKBEAR
型番Storm あらし
ドライバー10mmDD
(PEEK+PU二重振動膜)
インピーダンス32Ω
感度108dB @1kHz
再生周波数帯域20-20kHz
ハウジング樹脂
ノズル/フィルター金属ノズル
金網フィルター
ケーブル2pin qdc形状(KZ-C同等) 3.5mm
銀メッキOFC

外装は非常に簡素です。低価格モデルはこれくらいのパッケージでコストを下げてくれる方がありがたいですね。

KBEAR Stormの外箱の白背景画像 KBEAR Stormの外箱背面の白背景画像 KBEAR Stormの箱の中の白背景画像

同梱物は銀メッキOFCケーブル、シリコンイヤーピース2種類各3サイズです。

KBEAR Stormの同梱物の白背景画像
イヤーピースは2種類。

ハウジングとフェイスプレートは樹脂製、ノズルは金属でノズルフィルターは金網です。

KBEAR Stormのハウジングを左右並べた白背景画像

フェイスプレートはKBEAR Auroraのように波型になっています。

KBEAR Stormのフェイスプレート表面形状画像
Auroraと同じ工場の製造でしょうか?

DDは比較的ノズル寄りに設置されています。空きスペースには樹脂充填などはありません。そのぶん軽量化できています。

KBEAR Stormのハウジングを横から撮影した白背景画像1 KBEAR Stormのハウジングを横から撮影した白背景画像2 KBEAR Stormのハウジングを横から撮影した白背景画像3 KBEAR Stormのハウジングを横から撮影した白背景画像4

付属品

付属ケーブル

付属ケーブルは銀メッキOFC線です。わずかにすっきりめなくらいで銀メッキOFCとしては味付けは薄めです。

KBEAR Stormの付属ケーブルの白背景画像1 KBEAR Stormの付属ケーブルの白背景画像2

付属イヤーピース

シリコンイヤーピースが2種類各3サイズ付属します。背の低いお椀型クリアホワイトと、弾丸型でやや張りがあってさほど固くはないグレーのイヤーピースです。

KBEAR Stormの付属お椀型クリアホワイトイヤーピースの画像1 KBEAR Stormの付属弾丸型グレーイヤーピースの画像1

お椀型クリアイヤーピースは軸の内径が広く背が低く、コシは弱めです。

KBEAR Stormの付属お椀型クリアホワイトイヤーピースの画像2 KBEAR Stormの付属お椀型クリアホワイトイヤーピースの画像3

弾丸型グレーイヤーピースは内径がやや狭く、やや張りがあり固くはありません。お椀型クリアと比較するとすっきりめで低音の量が少なく、音の輪郭がよりくっきりしやすいです。

KBEAR Stormの付属弾丸型グレーイヤーピースの画像2 KBEAR Stormの付属弾丸型グレーイヤーピースの画像3

音質

エージング

通常通り200時間のエージングを行いました。極端な変化はなかったため、エージング必須ではないと思います。

周波数特性

公式の周波数特性イメージ画像から予想される外耳道閉管共振は9kHzの低めなピークです。

KBEAR Stormの公式周波数特性イメージ画像
*公式周波数特性イメージは許可を得て掲載しています。

装着の深さと角度

Stormを含むKBEARの一部のイヤホンは外耳道が短めな人が開発しているようです。公式の周波数特性イメージに合わせるとおそらくStormで設定された外耳道閉管共振帯域は9kHzですが、私には位置が深すぎて届かず、限界まで押し込んでも8.3kHzまでしか寄せることができませんでした。9kHzに合わせるにはもっと深い位置である必要があり、私の耳では不可能です。

何も意識せずに装着して確認すると定位中心が軽く後方かつやや下方向です。チャンネルチェック用のピンクノイズもやや下方向から聴こえてきます。

装着位置決めに苦心しましたが、付属品で定位が整うことを優先すると本来理想とする位置よりもかなり浅くなりました。外耳道閉管共振は7.5kHz辺りです。

評価環境

音源は主にwavとFLAC、Android OSでは再生アプリはNeutron Player(公式[英語])です。Amazon MusicおよびYoutube、Youtube Musicの動画も使用しています。Youtube、Amazon MusicではラウドネスノーマライゼーションをONにしています。

今回の主な評価機器は以下の通りです。

  • Shanling M6 ver.21 (ES9038Q2M *2 / 3.5mm 12~190mW@32Ω)詳細
  • HiBy R6Pro (ES9028Q2M *2 / 245mW+245mW@32Ω)詳細
  • Cayin N3PRO (AK4493EQ *2 / 3.5mm 250mW 真空管使用時 130mW@32Ω)詳細
  • iBasso DC04PRO (CS43131 *2 / 3.5mm 2.0Vrm@32Ω)
  • Shanling UA3 (AK4493SEQ *1 / 3.5mm 125mW@32Ω)詳細
  • Xperia 1 ii (DAC詳細不明)詳細
  • iPod touch 7G (オーディオ詳細不明)詳細

付属ケーブル+お椀型クリアホワイトイヤーピース

付属ケーブル+お椀型のクリアホワイトイヤーピースで聴いていきます。

KBEAR StormとiPod touch 7Gの画像

まず私の耳で極力メーカー想定のノズル位置に近い状態、限界まで押し込んだ装着位置で聴覚上の周波数特性を確認します。

周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックした限りでは、下は20Hz辺りから聴こえるものの27Hz以下は音量的に小さめ、35Hz辺り少し強め、低域強めで600Hz辺りがf特上の谷、2kHzからf特の山のカーブが強めに上がって行き、3~4kHz台強め、8.3kHzにどうにか持ってきた私の外耳道閉管共振、12kHzから一気に弱くなります。

公式周波数特性通り聴覚上もざっくりW字で、低音が強すぎず高音がシャリ付かないドンシャリ寄りと言ったところでしょうか。私が普段聴く音量よりも音量を上げた方がバランスが良いです。

しかし私の耳でこの装着位置では定位がずれて気持ち悪いです。かなり浅めの装着位置でバランスが整うので、以降は浅めの装着位置で評価します。チャンネルチェック用ピンクノイズが耳の真横で聴こえるように整えています。外耳道閉管共振は7.5kHz付近でバランスは概ねニュートラルです。

高音域は刺さりはなく刺激も控えめで、環境音を聴いていると高音が少しおとなしすぎるようにも感じられます。音量を上げ気味にする必要性を感じる音域ですが小音量でも音楽を聴く上で不足というほどではありません。やや直線的ですっきりとしています。

中音域は素直に鳴っており、ボーカルはかなり自然です。物音もこの価格帯からすればわりとリアルに聴こえます。艶やかさはあまりなく、若干淡々としています。しかしこれはベストな装着位置から外れていることも原因になっていそうです。

ボーカルの歯擦音やブレスはやや控えめです。聴きやすい反面、英語ボーカル曲ではリアリティもそれなりです。スティーブン・タイラー(Aerosmith)のねちっこいブレスも若干あっさりしています。日本語ボーカルがこもるというほどではありません。

低音域はStormにとって重要な音域です。定位を前に出しつつドライバーの粗を上手くごまかす役割をしていると思います。しかし私の耳ではごく浅く装着することであえて低音を減らしているため、特に後者の役割を発揮しづらくなり、すっきりめな機器で鳴らしてしまうとざらっとした質感の粗さを感じることがあります。

低音の深さ、重さ、厚み、量は適度です。私の装着位置ではニュートラルに近いため、過不足のない低音です。前述した通り私の耳ではおそらくメーカー想定よりも低~中低域が少なく聴こえているのではないかと思います。

解像度と情報量は価格を考慮すると良好、分離は自然です。Stormと私の耳の形状との相性の都合でウォーム寄りか少しだけ低音に量がある機器で低出力な方が相性が良いこともあり、音の輪郭がやや緩めに感じられる組み合わせもありました。

音場はイヤホンとしては普通ですが抜け方が優しく、窮屈さを感じさせないゆとりがあります。Stormの魅了はここにあるような気がします。

素直な鳴りで味付けが薄く聴き疲れないドンシャリバランスです。にも関わらず聴きやすく、優しい曲は優しく、疾走感がある曲は適度にスピーディに楽しく聴かせてくれます。

中低域と中高域が騒がしくないので、良いイヤホンで聴くと一層音質が悪く感じられがっかりするタイプのJPOPと相性が良いです。

最近リリースされたYOASOBIの『勇者』(Youtube)は一時良くなり始めて期待していたマスタリングの質がまた落ちており、イヤホンを選ぶ音源です。Stormではそこそこいい感じに聴こえます。

付属ケーブル+弾丸型グレーイヤーピース

弾丸型グレーイヤーピースはお椀型クリアイヤーピースよりも高さがあるため中途半端に浅くなりすぎるのか定位が更に下がってしまいました。しかし更に装着を浅くすると高音の主張が強すぎます。私の耳では違和感が強いため評価なしとします。

KBEAR Stormと付属弾丸型グレーイヤーピースの組み合わせの画像
Stormでは私の耳と相性が悪いです。

イコライザーで公式周波数特性に寄せる

イコライザーを使ってざっくり公式周波数特性イメージに寄せてみました。

メーカー想定通りに装着できていればやや低音寄りなようです。低音は太く厚くボーカルは自然で聴き疲れなく、高音は刺激控えめなドンシャリ型でJPOPも騒がしくなく鳴らしてくれています。

メーカー想定通りの深さに装着できていればコストパフォーマンスに優れ、スマホ直挿しでカジュアルに使えるイヤホンではないかと思います。

再生環境と出力

前述した通りおそらく本来の音はもう少し低音寄りだと予想していますが、私の耳で定位を重視して整えるとニュートラルです。この状態では機器が高出力なほど後頭部下側に下がる音域が広がってまた定位中心がずれてきます。

私と同様に浅い方が定位が整う場合はスマホ直挿しや非力なDAPの方が向いているはずです。メーカー想定位置に装着できていれば少し高出力な機器の方が奥行きが出る可能性はあるような気がします。

少しだけウォームさと優しさを感じる音色のHiBY R6Pro(ローゲイン)とは好相性でした。浅く装着した時に減ってしまう低音の量が少しだけ足され、粗を隠す役割を果たしているように感じます。

KBEAR StormとHiBY R6Proの組み合わせの画像
HiBY R6Proのローゲインは好相性でした。

iBasso DC04PRO(付属ケーブル/Low/Normal)との組み合わせはかなり良かったです。DC04PRO 3.5mm接続の優しく包容力がある音色がドンシャリ感を少しだけ弱めて聴き心地が良くなります。ソフトな低音の量が適度に粗も隠していると思います。

KBEAR StormとiBasso DC04PROの組み合わせの画像
iBasso DC04PROはボーカルが近すぎないのが私好み。
[関連情報] iBasso DC04PRO

Cayin N3PROは通常モードとの相性も良好ですが真空管モードのうち特にトライオードモードの真空管の温かみが低音の量の代わりに粗を隠す役目を担ってくれます。真空管モードは低出力なのもStormには良いのでしょう。

KBEAR StormとCayin N3PROの組み合わせの画像
トライオードモードの温かみで粗が出づらいです。

Stormは中途半端に浅く装着すると超低域~低域が持ち上がりやすく、これが原因で定位中心が下方向にずれてしまいます。そこから更に耳への挿入を浅くするとまた中低域が減って定位中心位置も正常に戻ります。しかしそこまで浅く装着するのが困難な場合はすっきり系の再生環境で低音の量を減らすことでも定位崩れが改善されます。

この状態で好相性だったのはShanling UA3(付属ケーブル/ローゲイン)、Shanling M6 ver.21(直挿し/ローゲン)です。ただしすっきりめ機器で聴くと低音の量が減りすぎることが多く、濃さ不足であっさりとしやすいです。また、低音不足によるザラつきは残ってしまいます。

KBEAR StormとShanling M6 ver.21の組み合わせの画像
粗が出やすい気も。

その他

装着感

チューニング上ベストなノズル位置を意識せず普通に装着するぶんには装着感は普通です。

KBEAR Stormをシリコン耳モールドに装着させた画像1 KBEAR Stormをシリコン耳モールドに装着させた画像2

ハウジングには厚みがありますが幅などのサイズ感はKBEARイヤホンとしては普通サイズです。

KBEAR Stormのハウジング左右を並べた斜め方向からの白背景画像

音漏れ・遮音性

ベント(通気穴)もDDの上に小さく1ヶ所、ケーブルコネクター付近にスリット状に1ヶ所開いています。スリット状のベントが前方を向いて露出するため大音量で鳴らししてしまうとそこから多少は音漏れするかもしれません。

KBEAR Stormのベントが見える位置からのハウジング画像1 KBEAR Stormのベントが見える位置からのハウジング画像2

他のイヤホンとの比較

メーカー想定通りの音で聴けていないことはEasy earphonesを介したKBEARとのやりとりでほぼ確定しているため、今回は他のイヤホンとの比較は行いません。

ちなみに現時点でKBEARのイヤホンでStormと同じくメーカー想定ノズル挿入位置が深めなことが周波数特性などから確認できているイヤホンはKBEAR 青龍、KBEARA 玄武、KBEAR Streamerです。

カスタマイズ

イヤーピースのみ変更

イヤーピースのみでバランスを整えてくれるものもあったのですが、残念ながら廃番になっていました。もしもお持ちならNUARL Block Ear+、YAZAWA TYP5がおすすめです。

JSHiFi-Nocturne & NUARL Block Ear+7

付属イヤーピースで定位中心が下方向にずれてしまう場合はJSHiFi-Nocturneにリケーブルするといくらか改善されます。

Nocturneは定位中心が前方上方向に動きやすく、低音と高音が強まったドンシャリ寄りな印象に変化しやすいケーブルです。Stormでもその効果が現れ、定位中心が後方下にずれる装着加減でも比較的気にならないレベルまで押し上げてくれます。また、小音量でも物足りなさを感じなくなります。

Nocturneへのリケーブルだけではまだ定位が下に下がっているように感じるならイヤーピースをNUARL Block Ear+7に変更するともう少し引き上げてくれます。

KBEAR StormをJSHiFi-NocturneにリケーブルしイヤーピースをNUARL Block Ear+7に変更した組み合わせの画像
粘って探した組み合わせです!

低出力な機器以外でもバランスを崩さなくなるのでDAPのパワーでStormのバランスが崩れている場合にもおすすめです。

総評

  • JPOPの音質的欠点をごまかすのが上手い
  • 低出力でも十分に鳴る
  • 想定外耳道長が短すぎる
  • 想定通り装着できていないと定位が崩れる
  • 想定通り装着できていないと粗が出る
  • 私にはメーカー想定位置に装着できず
  • 装着の深さを浅くし低出力機器で好バランス
  • JSHiFi-NocturneとNUARL Block Ear+7で本来の音に近づく

メーカー想定のノズル位置は私の耳で一番深く挿入した位置よりももっと奥で、より鼓膜に近い位置です。本来はやや低音寄りのドンシャリだと予想していますが、私の耳では付属品だけで定位が正常な範囲でバランスを整えると概ねニュートラルです。

KBEAR Stormの左右ハウジング画像
私の耳では本来の音では聴けていません。

ドンシャリかつボーカルが近すぎず遠すぎず、疾走感がある楽曲も楽しく聴かせてくれます。低出力な機器との方が相性が良く、カジュアルに使うのに向いています。

ですがバランスの良さがドライバーの粗をチラ見えさせている気もします。低価格帯でもドライバーの粗をうまく隠せているイヤホンやドライバーの出来の良いイヤホンを使った後に、フラット~すっきりめの再生環境でStormで聴くと音の質感にザラッとした粗さを感じます。

しかしこの点については、おそらく適正位置に装着できていれば低音の量でうまく隠せるはずだったのではないでしょうか。ほんの少し低音に量があるXperia 1 iiの直挿し、低音に厚みがあるiBasso DC03PRO、優しい音色のiBasso DC04PROやHiBy R6Pro、Cayin N3 Proの真空管モードが好相性なのは、機器側が持つ低音のふくよかさが粗さの低減に効いているのも大きいと思います。

リケーブルや市販イヤーピースへの変更で改善の余地はあります。おすすめはミックスケーブルのJSHiFi-Nocturneと、コシのあるお椀型イヤーピースNUARL Black Ear+7です。機器の出力との相性や、浅く装着することで出やすい粗さも改善されます。NUARL Black Ear+はリケーブル不要でバランスを整えてくれます。ですがこちらは廃番ですのでもしお持ちなら試してみて欲しいと思います。

初期装備のKBEAR Stormをおすすめできるのは、外耳道長が短い自覚がある人、JPOPを中心にスマホ直挿しなど低出力な機器で聴いている人です。耳の形状に合えばJPOP向きコスパイヤホンだと思います。

逆に初期装備のKBEAR Stormをおすすめできないのは、外耳道長が長い自覚がある人です。装着位置を微調整してバランスを整えることができても、音にザラつきを感じる可能性は低くはないと思います。低音に量があるウォーム寄りの機器を使っているなら満足できるかもしれません。

しかし耳の形に合わなかった場合でも、JSHiFi-NocturneとNUARL Block Ear+7(もしくは廃番のNUARL Block Ear+)を持っている、もしくは購入する追加予算があるのであれば比較的メーカー想定に近い音色で聴くことができそうです。私自身はこの組み合わせで満足できています。

メーカー想定の外耳道長が長めな場合はイヤーピースで調整が効きます。しかし短いとなると合わせるのは困難です。また、Stormは理想の場所から外れるとバランスを崩しやすいチューニングになっています。入念に追い込んだのかもしれませんが、カスタムイヤホンではないのですから開発者以外の耳にもほどほど合わせることは必要だと感じました。

想定外耳道長が自分の耳よりも短すぎる場合にどのような変化が生じやすいのか、対処するにはどうすれば良いのかを考えて解決まで持って行けたのは収穫でした。