LETSHUOER S15 – 独自技術「PFM」が引き出す低音で全体をまとめ平面駆動のクセを打ち消すアプローチ

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今回はLETSHUOER S15のレビューです。LETSHUOERから製品提供を受けています。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろ、要約だけでよろしければ『総評』からご覧ください。

LETSHUOER S15の白背景画像

製品仕様

ブランドLETSHUOER
型番S15
ドライバー14.5mm 平面磁界型ドライバー(第三世代)
+ 6mmパッシブフィルタモジュール「R-Sonic」
インピーダンス30Ω
感度106dB
再生周波数帯域20-20000Hz
ハウジング樹脂 (3Dプリント)
フェイスプレートアルミ合金 (CNC加工)
ケーブル2pin / 0.78mm /脱着プラグ(2.5mm,3.5mm,4.4mm) / 銀メッキ単結晶銅

パッシブフィルタモジュール(PFM)はパッシブラジエーターにインスピレーションを得たLETSHUOERの独自研究開発技術で、構造や挙動を含め「R-Sonic」と名付けています。

ストア価格
LETSHUOER 公式ストア57,000円+570pt
eイヤホン52,370円+5237pt
フジヤエービック52,370円
会員10%OFF
ヨドバシ52,370円+5237pt

フェイスプレートと同じ柄があしらわれた外箱はデザインに統一感があります。

LETSHUOER S15パッケージの白背景画像 LETSHUOER S15のパッケージを開けた状態の白背景画像

脱着プラグ式の付属ケーブル、シリコンイヤーピース2種類各3サイズ、スクリュー蓋の丸いハードケースが付属します。

LETSHUOER S15と同梱物の白背景画像

R-Sonicを積むスペースの都合なのかハウジングにはやや厚みと丸みがあります。マットなブルーグレーが落ち着いた色合いです。高級感については微妙なところでしょうか。

LETSHUOER S15のハウジング左右を並べた白背景画像

LETSHUOER S15のハウジングを真横から撮影した画像1 LETSHUOER S15のハウジングを真横から撮影した画像2LETSHUOER S15のハウジングを真横から撮影した画像3 LETSHUOER S15のハウジングを真横から撮影した画像4

付属品

付属ケーブル

付属ケーブルは銀メッキ単結晶銅です。S12やS12 PROのケーブルと似た見た目ですがLETSHUOERによると線材は同一ではないそうです。

LETSHUOER S15の付属ケーブル全体の白背景画像 LETSHUOER S15の付属ケーブルの脱着プラグ接続面の白背景画像

付属イヤーピース

2種類のシリコンイヤーピースが3サイズ各1ペア付属します。

黒軸シリコンイヤーピースは高音が良く出ます。軸も傘もやや固めの質感です。

LETSHUOER S15付属黒軸シリコンイヤーピースの白背景画像1 LETSHUOER S15付属黒軸シリコンイヤーピースの白背景画像2 LETSHUOER S15付属黒軸シリコンイヤーピースの白背景画像3

お椀型青シリコンイヤーピースは低音を少し底上げします。低音不足を感じる場合はこちらの方が聴き心地が良くなることが多いはずです。

LETSHUOER S15付属お椀型青シリコンイヤーピースの白背景画像1 LETSHUOER S15付属お椀型青シリコンイヤーピースの白背景画像2 LETSHUOER S15付属お椀型青シリコンイヤーピースの白背景画像3

ハードケース

スクリュー蓋のハードケースが付属します。かなりクルクル回さないと開かないため頻繁に出し入れするのには向きませんね。そのぶん、ちゃんと閉めておけば割れない限り落としても蓋が外れる可能性はなさそうです。

LETSHUOER S15のハードケースの白背景画像
日常的に開け閉めするのには向かないかも。

音質

エージング

いつも通り200時間エージングしました。エージングにはEveningStar BURN IN A1を使用しています。

装着の深さと角度

私の耳と付属イヤーピースなら黒軸イヤーピースでもお椀型青イヤーピースでも左Mサイズ右Lサイズでしっかり押し込んだ位置でバランスが整います。LETSHUOERは周波数特性を出したくないそうなので、外耳道閉管共振8kHzに当たりをつけて評価していきます。

耳に装着して鳴らし始めてから5~10分ほどで超低域が下まで出て本調子になります。少し聴いたら再度調整し直すことをおすすめします。

評価環境

付属弾丸型シリコンイヤーピース使用(室温約17℃)で聴いていきます。音源は主にwavとロスレスFLACです。Youtube MusicQobuzAmazon MusicおよびYoutubeの動画も使用しています。

  • wavは一部購入音源を除き所有CDからのリッピングです。
  • FLACは一部購入音源を除きfoobar2000を使用してLv3で圧縮しています。
  • 利用可能な場合、ラウドネスノーマライゼーションをONにしています。

主な評価機器は以下の通りです。Windows11からの再生はfoobar2000+ASIOです。

  • FiiO Q5s Type-C (AK4493EQ *2 / 220mW~@32Ω)詳細
  • iBasso DX240 (AMP8MK2 ディスクリートAB級 / 3.5mm 281mW@32Ω)詳細
  • FiiO Q5s Type-CとPCとの接続にはAIM電子 USAC-005 (OFC+純銀コート/SPセパレートフラット構造)を使用しています。⇒公式製品情報

楽曲確認のためYoutubeに公式PVがある場合はYoutubeへのリンクを掲載しています。

付属ケーブル+黒軸イヤーピース

付属ケーブル 3.5mmプラグと付属黒軸イヤーピースで聴いていきます。

LETSHUOER S15と付属黒軸シリコンイヤーピースの組み合わせの画像
高音の主張*
3.8
★★★★★
★★★★★
高音域の音量
4.3
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
4.3
★★★★★
★★★★★
中音域の音量
4.0
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
4.3
★★★★★
★★★★★
低音域の音量
3.8
★★★★★
★★★★★

周波数特性

周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックして行きます。下は20Hz以下から聴こえるものの30Hz以下は音量的に小さめ、30Hz台半ばほんの少し強め、私の聴覚上は徐々に右肩上がりで凹凸はかなり緩やか、1kHz台やや強め。3kHzやや弱め、5kHzに弱めのピーク、8kHzに私の外耳道閉管共振、徐々に弱まり、12kHz台で聴こえなくなって行きます。

再生側出力の影響

パッシブフィルタモジュール(以下PFM)が鳴らしにい上、低出力すぎても高出力すぎても超低域が下から音量的に弱り、全体の低音成分と厚みが減り、中高~高域の主張が強まります。ドライバーの乾燥不足でも出力不足でも低音が衰え、高音の主張が強まります。

あえて低音を引き出せない環境でLETSHUOER S15を鳴らしてみると、その高音はS12やS12 PROと非常に似ています。シャープで繊細、機器の出力やイヤーピースでうまく調整してやらないと細りやすくもあります。S15のチューニングは、PFMから引き出される低音で全体をまとめて平面駆動型ドライバーのクセを打ち消すアプローチなのだと思います。

低音の聴こえが衰えている人や高音優位の聴力バランスな人は他の平面駆動イヤホンと差別化されているとは感じないかもしれません。

超低域~低域~中低域

出力の過不足により低音の量や全体の低音成分の具合も変化しやすいだけでなく、単純に低音が音量的に弱めになりやすいです。低音の音量不足を感じる場合も出力の過不足を疑った方がいいと思います。

出力十分でも低音のドンは音量的には強くも弱くもありません。低音がドンドン音量的に強いのが好みなら物足りないと思います。特にJPOPは全体的にまとまり良く落ち着き、やや大人しくなりやすいです。また、JPOPの場合はキックが音量的に強めに聴こえることがあります。『不思議』(Youtube)など星野源の楽曲はS15の低音のうち軽微に強めに聴こえる帯域を強めにしている音作りなのかこの時期の楽曲はS15ではどれもキックが強いです。

重低音は非常に深く適度に重く、近年の海外ボーカル曲も気持ち良く鳴らします。超低域の量は多すぎず少なすぎず。The Weeknd『Die For You』*(Youtube)の深く沈み込んで広がる重低音もさほど不満なく鳴らします。ですが音量的にも包まれるような広がり的にもやや控えめ気味ではある気がします。

  • 評価時音源はハイレゾFLAC(24bit/44.1kHz)です。

太鼓系の音にリアリティを感じます。コントラバスやチェロの胴鳴りの気持ちよさも十分です。

中域

PFMから引き出す低音が中域にも影響します。中域も機器の出力の過不足や機器の音質の影響次第で乾いたり、やや上ずったような高音成分が多い音になる場合があります。

中域に多くの音が集中する瞬間も団子にならず、それぞれの音に意識を向けると細かな音も聴き取ることができます。基本的には量と厚みは必要十分ではあるものの、機器の影響が大きいです。一部好相性な機器でのみ、ジャズをしっとりと聴かせてくれる生っぽい艶を引き出してくれます。

お気に入りのDC07PROとは好相性。

iBasso DC07PROとの組み合わせはゆったりと聴き心地が良いのに情報量も解像度も高水準です。Ella Fitzgeraldの『Like Someone In Love』*(Youtube)は低域~中域に生々しい厚みと温かみがありやや艶っぽく滑らかで濃く、歯擦音などの耳障りを感じやすい音は少しだけ抑制、聴き心地が良く細部に聴き惚れるような音色です。

  • 評価時音源はQobuz(24bit/192kHz)および所有DSDデータ(DSD64)です。
  • その他の機器別評価については次回、LETSHUOER S15の2回目の記事で公開予定です。

中高~超高域

高音は音量的にはしっかりめに出ているものの刺さる手前ギリギリで抑えられています。おそらく平面駆動型ドライバーもいくらか低音を鳴らしており、ドライバーが温まるまでの数分は超低域が十分に出ません。毎回鳴らし始めた直後は平面駆動臭さのある高音を感じる可能性があります。また、装着位置が良くないとキツめに感じられるかもしれません。

S15に積まれた平面駆動型ドライバーは比較的鳴らしやすい方ではあります。PFMを鳴らすのに不十分な出力でも平面駆動型ドライバーは十分に鳴ってしまうことも高音の主張が強まりやすい原因のひとつかもしれません。

『Jimmy Fallon, Adele & The Roots Sing “Hello” (w/Classroom Instruments)』(Youtube)で左の男性が弾いているの小さな鉄琴のリズムは画像の鍵盤の真ん中当たりを多く使っていますが、音量を下げたくなるような高音のキツさを感じるギリギリくらいです。

『Sia & Kylie Minogue – Dance Alone』*(Youtube)のスネアのような音は歪みが出やすく、イヤホンによっては耳障りです。S15の高音は上手く緩和できており平面駆動型ドライバーの低歪みによって耳障りさを感じません。

  • 評価音源は24bit/44.1kHzおよび所有音源(24bit/44.1kHz)です。

S15の超高域はここ1~2年の中華イヤホンに増えている10kHzより上がやや多めなチューニングです。この周波数特性のイヤホンは超高域が軽微に拡散気味に聴こえたりハイレゾ高音質音源でクセが出ることがあるのですが、S15はロスレスよりハイレゾの方が音が良く、違和感はありません。

ボーカル

ボーカルはやや前方に定位します。私は近めのボーカルが苦手ですがS15のボーカル定位は気にならない程度です。ボーカル以外の音の定位に影響は出ておらず、良好です。

ブレスはやや控えめながら適度に聴こえ、英語ボーカル曲の歯擦音は耳障りさを感じるやや手前くらいです。歯擦音が苦手なら少し気になるかもしれません。がなる声やハスキーさ、しゃくり、喉を締めて出す擦れたような声は軽微にマイルドです。

Dua Lipa『Levitating』*(Youtube)はDua Lipaのハスキーでありつつも艶っぽい下支えを感じる歌声と、層のような構成の奥行きが気持ち良く、リズムは適度にタイトで、伸びやかな音は伸びやかに、聴こえなくなりやすいディレイも程良く聴こえてきます。

  • 評価音源はQobuz(24bit/44.1kHz)および所有音源(24bit/44.1kHz)です。

歌手の細やかな感情表現を感じる口元が見えてくる表現力です。ボーカル表現が素晴らしいLETSHUIEOR DZ4にちょっとだけ似ているもののDZ4ほどボーカルに特化していません。

人の声は現実の声の高さに近めな鳴らし方だと思います。ただし出力不足や超低域聴力の低下で低音成分が不足するとドライになりやすいです。ローカットJPOP音源ではボーカルの高音成分が増え、高音女性ボーカルに耳障りさを感じることがあります。付属お椀型イヤーピースはこの部分を緩和するので、JPOPを聴く時に低音不足を感じるならお椀型イヤピの方がおすすめです。

空間表現/音場/定位

所有するLETSHUOER製品はいずれも空間表現が秀逸です。LETSHUOER S15も空間表現に優れていると思います。音場はやや広め、奥行きと立体感は自然な範囲よりもほんの少し誇張があります。近い音はより近め、遠い音はより遠めに感じられ、体調次第では近い音の圧で少し聴き疲れることがあります。

定位は良好ですが超高域が軽微に拡散気味で音の位置の掴み安さはほどほど。S15では高音が少ない音の方が位置取りしやすいと思います。同じ機器の3.5mmと4.4mmでも若干異なります。

空間表現のためにも機器の出力が必要です。バランス良く鳴らしてくれる機器でも出力が足りていない場合は空間表現の衰えが激しいです。JPOP音源の大部分は奥行きのある空間表現をしていないためJPOP中心で聴くのであればこの点は感じにくいかもしれません。

情報量/解像度/分離

機器の出力が十分でないと情報量が減り、解像度も相応、分離もそこそこになります。逆に高出力すぎると高音が若干主張しすぎになります。機器の音の傾向に合わせて程よい出力で鳴らしてやればリアリティがありつつも人の耳で直接聴く楽器の音よりもややクリアで解像度の高い音になります。

音が太くなり音場が狭まりやすいTempoTec V6のような機器では、低~中域の情報量が増え解像度が向上することが多いです。出力十分かつ低音が太い機器を持て余しているならぜひ試して欲しい組み合わせです。

楽曲ジャンル、音源との相性

音源データが高音質であればあるほど音質の向上を感じることができます。ロスレスよりPCMハイレゾ、更にDSDまで段階的な音質向上を感じ取ることができました。逆に意図的もしくは変換の影響で超低域もしくは超高域がカットされた音源では相応に音質が低下します。

LETSHUOER S15とiBasso DX240の組み合わせの画像1
DSD音源のデータ量の多さを感じることができます。

相性の良い楽曲ジャンルには再生環境も影響します。音源データ量だけでなく録音やマスタリングが良い方が音質も良好なため欧米の音源の方が音質良好ではあります。超低域が控えめな機器では特にローカットJPOP音源でボーカルのハイ上がりを感じることがあるものの、日本語の発音がこもりにくいので好相性な機器であれば日本語ボーカルとの相性も良いと思います。

低音のアタックの力強さが欲しい楽曲と好相性です。機器によって低音の音量や量が変わってもアタックの力強さは共通しています。ボーカルに低音成分が少なすぎると感じる場合は付属お椀型イヤーピースの利用をおすすめします。

付属ケーブル+付属お椀型青イヤーピース

ドーム型青イヤーピースはボーカルの聴こえが良いタイプです。黒軸イヤーピースより高音が少し控えめで、機器が出力不足な場合に相対的に低音を補ってくれます。機器の出力が心もとないのであればこちらの方が印象が良いことが多いと思います。

LETSHUOER S15と付属お椀型シリコンイヤーピースの組み合わせの画像

付属黒軸イヤーピースとの違いは以下の通りです。

  • 高音の刺激控えめ
  • 相対的に低音成分が増える
  • ボーカルの聴こえが良い

バランス接続で全体の低音成分が減りすぎたように感じる場合も青イヤーピースの方が良いでしょう。

黒軸イヤーピースと比べるとボーカルがほんの少しだけ前に、それ以外がほんの少し下がって広がるようなバランスです。より聴きやすい音色になります。

再生環境と出力&駆動力

前述した通り、PFMーを十分に駆動させるために過不足ない出力を要求します。パッシブラジエーターと同様PFMは電力ではなく他のドライバーによる空気振動で共振して鳴るため、電力で鳴る側のドライバーが十分に頑張ってくれないと実力を発揮できません。

S15の場合はもう片方のドライバーが平面駆動型です。一般的に平面駆動型ドライバーはダイナミックドライバー(以下、DD)よりも鳴らしにくいですから、DD+パッシブラジエーターの組み合わせと比べるとパワーが必要なのだと思います。

iBasso DX240+iBasso AMP8MK2

LETSHUOER S15とiBasso DX240の組み合わせの画像3

iBasso DX240とiBasso AMP8MK2の組み合わせでは3.5mmハイゲインでは高出力過ぎました。ミドルゲインでは解像度やや高め。私はより自然な分離感のローゲインが好みです。4.4mm接続では低音がすっきりとしつつも力強さはキープしています。バランスは良いものの私は3.5mm接続の音の方が好きですね。あくまで好みの問題だと思います。

TempoTec V6

LETSHUOER S15とTempoTec V6の組み合わせの画像

TempoTec V6はクラファンで販売開始されたAK4493SEQ*2搭載のDAPです。力強く太い音色で音場はやや狭まりやすいもののバランス接続でも超低域が弱らないのは恩恵です。3.5mmだけでなく4.4mmラインアウトも備えており、アンプへの出力用として重宝しています。

3.5mmでも330mW@32ΩありS15を鳴らすための出力は十分です。V6の音場の狭さの影響はS15にも出てしまうものの、S15の音場の広さで相殺しつつS15の音場感がややまさっていて開放感があります。V6は3.5mmよりも4.4mmの方が超低域の量が多いため4.4mm接続の方が印象が良いです。

Cayin N3PRO

LETSHUOER S15とCayin N3PROの組み合わせの画像

Cayin N3ProはAK4493EQ*2採用かつ真空管が搭載されたDAPです。超低域にやや量があり痩せにくい音色です。真空管は130mW@32Ωでしか駆動できませんが、3.5mmは250mW@32Ω、4.4mmは800mW@32Ωとなかなかの出力。更に4.4mmはフルバランス設計です。

N3PROでも最初の5分は低音少なめではあるものの超低域の量に不満を感じるほどではありません。

ローカットが激しいYOASOBIの楽曲でも低音は軽くならず、全体的にもハイ上がりしたり細ったりせずに楽しく聴くことができます。装着位置が甘いと奥行きが浅くなり音場が狭まりますが、きちんと整えてやれば十分な奥行きと広さを感じることができます。

適正出力は200~250mW@32Ω

LETSHUOER S15は全体のまとまり、低音の量、音場の広さ、奥行きと立体感のために200~250mW@32Ωくらいは必要だと思います。相性が良ければ130mW@32ΩほどのドングルDACでもバランスが取れて、こういう音だと言われればそうかもと思える範囲ではあるものの実力を知っているとなんとも勿体ない鳴りです。

また、逆に高出力すぎても全体的にハイ上がり傾向になるためパワフルなら良いというわけでもありません。機器の音の傾向があえば高出力でもバランスは整いますが、平面駆動型はドライバーの要求よりも高出力すぎる場合に歪む場合もあることと負荷による破損や寿命短縮を考慮すると無駄に無理をさせたくありません。

ドングル型DACアンプ含め本記事に非掲載の評価機器との相性については次回記事で紹介します。

その他

装着感

R-Sonic機構のための空間が必要になったことでハウジングはずんぐりとしており、S12やS12 Proほど深く装着することができません。しかしノズル位置が浅いことでバランスが崩れる印象はありません。

LETSHUOER S15をシリコン耳モールドに装着した真横からの画像 LETSHUOER S15をシリコン耳モールドに装着した正面からの画像

装着してみるとハウジング直径側サイズはS12 Proよりも小ぶりながらS15の方が厚みがあります。私にはS12 Proの方が装着しやすいです。

LETSHUOER S15とLETSHUOER S12 PROのハウジングを並べた画像1 LETSHUOER S15とLETSHUOER S12 PROのハウジングを並べた画像2

S12 Proのハウジングはノズルの根本からハウジングの中心にかけてわずかにくびれていますが、S15はくびれが浅めです。耳に押し込みにくい感覚があるのはこの部分の影響だと思います。

LETSHUOER S15とLETSHUOER S12 PROのハウジングを並べた画像3
R-Sonic機構の影響が厚みに出たようです。

音漏れ・遮音性

LETSHUOER S15のベント穴3ヶ所が見える角度からのハウジング画像

小さなベントが3ヶ所に開いています。音漏れと遮音性はこのタイプの中華イヤホンとしては普通です。

深く挿入することを意識しすぎて耳への密着が強まることでベント穴が塞がると低音が増えすぎ見通しが悪くなることがあります。R-Sonic機構は通気のコントロールも重要なため装着時に少し気にした方が良いかもしれません。

他のイヤホンとの比較

LETSHUOER S12 PRO

LETSHUOER S12 PROは立体的な空間表現に優れた平面駆動型イヤホンです。充実した付属品で幅広い機器に対応できる点もよく考えられています。ドライバーは14.8mmのLETSHUOERカスタムドライバーでS15とは異なるドライバーです。

LETSHUEOR S12 PRO 価格一覧
ストア価格
LETSHUOER 公式ストア24,999円+250pt
LETSHUOER Official Store$107.27
[$127.30+$9.858%]
[KO17PNSTWLO6]
eイヤホン24,500円+2450pt
フジヤエービック25,000円
会員10%OFF
ヨドバシ24,500円+2450pt
LETSHUOER S12 PROと同梱物の白背景画像 LETSHUOER S12 PROとLETSHUOER S15を並べた白背景画像
  • 高音の主張:S12 PRO < S15
  • 高音域の音量:S12 PRO ≦ S15
  • 中高域の音量:S12 PRO ≦ S15
  • 中音域の音量:S12 PRO ≦ S15
  • 中低域の音量:S12 PRO ≦ S15
  • 低音域の音量:S12 PRO ≦ S15
  • 超低域の音量:S12 PRO ≧ S15
  • 低音の量:S12 PRO < S15
  • 重低音・沈み込み:S12 PRO ≦ S15
  • いずれも付属ケーブルと付属イヤーピースでの比較です。

S12 PROは空間表現に優れるもののボーカルが若干そっけないところがあります。私はS12 PROではボーカル曲はほとんど聴きません。S15の音色にはPFMから引き出される低音により適度な暖かさと落ち着きが与えられており、ボーカルの温かみに寄与しています。器楽曲もボーカル曲も楽しめる万能型です。

S15の方が明らかにボーカルが近く、ボーカルの圧も感じます。音場の外周はS12 PROとさほど変わらない気がしますがS15の方が近い音があるぶん強調された立体感を感じます。S12 PROは一番近い音でもイヤホンとしてはやや離れており、立体感に誇張がありません。

S12 PROの方が高音が抜けて伸び、音場広めで空間にも余裕を感じます。しかしS15と比べると遠い音の情報量が少なく、それでいて細やかな広がりは少ないです。平面駆動型ドライバーの世代が更新されたことに加え、PFMを搭載したことで平面駆動の能力のウエイトを中高~超高域に多く割り振ることができたのではないでしょうか。その恩恵をS15の音色から感じ取ることができます。

とはいえ個人的にはS12 PROのこの空間表現が気に入っており、より低い価格でこの音が出せているS12 PROは優秀だと改めて思いました。また、S15を聴いてからS12 PROを聴くと肩の力が抜けるというか、S15はR-Sonicと平面駆動の能力をがっつり足しました!というてんこ盛り感があるというか。もうちょっと何か引くと別の魅力のイヤホンが出来そうな気もします。

TRI-i3 MK3

TRI-i3 MK3は2024年6月発売のトライブリッドイヤホンです。低域に10mmDD(ベリリウム合金/ベリリウム含有50%以上)、中域に1BA (Sonion 23568)、高域に10mm平面駆動型ドライバーを搭載しています。陰影があり滑らかな音色が特徴です。

TRI-i3 MK3 価格一覧
ストア価格
Yinyoo-JP25,999円+900pt
[29,999円+4000円
Wooeasy Earphones Store$165.62
[$169.00+2%]
KBEAR Official Store$155.74
[$163.93+5%]
Keephifi Store$136.47
[$143.65+5%]
KBEAR Official Store
$125.01
[$126.27+1%]
TRI-i3 MK3と同梱物の白背景画像 TRI-i3 MK3とLETSHUOER S15を並べた白背景画像
  • 高音の主張:i3 MK3 < S15
  • 高音域の音量:i3 MK3 < S15
  • 中高域の音量:i3 MK3 < S15
  • 中音域の音量:i3 MK3 ≦ S15
  • 中低域の音量:i3 MK3 > S15
  • 低音域の音量:i3 MK3 > S15
  • 超低域の音量:i3 MK3 > S15
  • 低音の量:i3 MK3 > S15
  • 重低音・沈み込み:i3 MK3 ≒ S15
  • いずれも付属ケーブルと付属イヤーピースでの比較です。

LETSHUOER S15はTRI-i3 MK3ほど機器の出力を要求せず、比較すると鳴らしやすいです。装着感はi3 MK3の方がかなり良好です。

i3 MK3を聴いた後にS15で聴くと、やや中高~高域に寄っているように感じられます。S15を聴き込んでいると中高域寄りだとは感じないため、そのぶんi3 MK3が低域寄りということのようです。S15の高音はシャキシャキとしており、i3 MK3の方が高音の刺激を抑え気味にコントロールされています。

にも関わらず、中高~超高域の見通しはi3 MK3の方が良好です。S15は超低域と超高域の伸びと細やかな拡散で空間が満たされているような印象を受けます。

一番近い音との距離はi3 MK3の方が離れており、空間に余裕と適度な開放感があってスピーカーっぽさを感じます。S15は生音を耳で直接聴いているよりも情報量が多く解像度は高いため、音場の外周が遠くてもイヤホン的な近さを感じます。

総評

  • R-Sonic機構が効果的
  • 実力通り鳴っていれば楽曲は選ばない
  • ほんの少し誇張のある空間表現が秀逸
  • 高音質音源の音の良さを再現できている
  • やや鳴らしづらい
  • 付属イヤピが好相性なのに別売りしていない
  • 装着感イマイチ
  • 体調による聴力変動の影響が出やすい
  • R-Sonic×平面駆動型ドライバーの両者全力てんこ盛り感がある
  • 機器の出力差で音の違いが出やすい
  • 超低域が十分出るまで5分はかかる
  • 実力発揮の機器出力目安は少なくとも200~250mW@32Ω

LETSHUOER S15は独自開発技術の「R-Sonic」と平面駆動型ドライバーのメリットをうまく組み合わせたイヤホンです。S15は超低域~中低域の量をR-Sonic機構にまかせることで平面駆動型ドライバーの能力を中~超高域にまかせるウエイトを上げ、音場の広さ、立体感、高音を必要とする情報量と解像度の向上に寄与しています。

LETSHUOER S15のハウジング左右を並べた画像2
価格に見合った音色です。

高音質な音源ほど音質向上を感じられるはずです。圧縮音源よりロスレス、ロスレスよりハイレゾ、更にDSDと上げていくともうハイレゾ以下には戻れなくなるかもしれません。

低音によって高音の刺激やクセを緩和するアプローチのイヤホンは他にもたくさんありますが、基本的に低音側はDDが担っています。S15にはDDと比べると遥かに鳴らしにくいパッシブラジエーターに類似した機構のR-Sonicを採用したことで当然のように鳴らしにくく、実力発揮のためには再生機器の出力が少なくとも200~250mW@32Ωは必要です。

更に、LETSHUOERの最近の平面駆動型ドライバーはそう鳴らしにくくもありません。PFMを鳴らすのに不十分な出力でも平面駆動型ドライバーは十分に鳴ってしまうため、低音が実力通りでないと高音側とのバランスが悪くなり、全体の低音成分は減り、チリッとした高音の鳴り方になってしまいます。

スペックに期待したほど低音が出ていないというポストをXで見た記憶があります。しかしS15の実力的にはむしろちょっと低音の量多めで濃い傾向すらあると思います。低音不足を感じる原因には再生側の出力不足、装着が浅すぎる、低音の聴力が弱い、高音が極端に強めに聴こえる聴力バランスなどが考えられます。

また、S15の平面駆動型ドライバーが温まり超低域が出切るまで5分ほどかかります。5分程度では超低域が十分に出てこないためごく短時間の使用では特筆するほど他の中華平面駆動型イヤホンとの違いを感じないかもしれません。1~2曲聴いたら装着位置の再調整もおすすめします。また、付属黒軸イヤーピースは高音がよく出るため青いお椀型イヤピの方が相対的に低音を感じることができると思います。

気持ち良い空間表現は所有するLETSHUOERイヤホンの共通点です。S15は広めな音場に加え、遠めな音の細部がS12 PROよりも詳細に聴き取れるようになっています。

ですがS15の音色はR-Sonicと平面駆動型ドライバーの全力の足し算にちょっと疲れるものを感じることがあります。S15で聴いているうちはなんとも思わないのですが、S12 PROに切り替えると力が抜けてホッとするというか…。高音が強いイヤホンなどは聴き疲れを感じることがありますが、それともちょっと違う疲れを感じる音色でもある気がします。

LETSHUOER S15とCayin N3PROの組み合わせの画像2
何か引くと別の魅力が生まれるかも?

音源の質の善し悪しが音にしっかり出る傾向があります。同じ楽曲でもビットレートとサンプリング周波数が高い方がS15の音色も高音質です。高圧縮音源でもそれなりに鳴らしますが、低音質音源については低価格帯のイヤホンの方が考慮されていると思います。

初期装備のLETSHUOER S15をおすすめできるのは、200~250mW@32Ω前後の出力の再生環境を持っている人、低音の聴こえが弱っていない人、超低域が強めな再生機器を愛好している人です。音が太めな印象を受けやすい機器は好相性だと思います。

逆に初期装備のLETSHUOER S15をおすすめできないのは、スマホ・低価格DAP・小型のドングル型DACアンプなど低出力な機器での使用を想定している人、低音の聴こえが弱っている人、10分程度の短い使用も想定している人、ゆったりとリラックスして聴くためのイヤホンを探している人です。

JPOPしか聴かない場合は他の製品も選択肢として検討した方が良いと思います。機器次第ではあるものの、音源がローカットされている音源では低音成分不足のハイ上がりになることがあります。更に、奥行きと広さを作り込まれていない音源にLETSHUOER S15は勿体なく、ある意味コスパが悪いと言えそうです。

惜しむらくは純正イヤーピースが別売りされていないことでしょうか。LETSHUOERのイヤーピースはLETSHUOER製品とちゃんと相性が良く、変更せずに使いたいニーズも確実にあるはずです。イヤーピースは消耗品ですから、ぜひとも別売り販売していただきたいと切に願っております。

LETSHUOER S15のレビュー、次回は機器との相性編です。所有する機器の中からスペック上の出力が合う製品を中心に比較しています。

ストア価格
LETSHUOER 公式ストア57,000円+570pt
eイヤホン52,370円+5237pt
フジヤエービック52,370円
会員10%OFF
ヨドバシ52,370円+5237pt