今回はSmabat AT-20(Amazon/AliExpress)のレビューです。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろだけご覧ください。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
製品仕様
- ブランド:Smabat
- 型番:AT-20
- ドライバ構成:1DD
- ハウジング:アルミニウム合金
- 再生周波数帯域:15Hz-22000Hz
- Bluetooth Ver.:5.0
- チップセット:QUALCOMM QCC3003
- コーデック:SBC,AAC
- 駆動時間:8時間
- 充電ポート:USB Type-C
- IPX6防水
- Smabat AT-20
- 3,599円 – WTSUN Audio 5/3
- $39 – Wooeasy Earphones 5/3
同梱物はシリコンイヤーピース1種類3サイズ、耳のくぼみ部分で固定するためのイヤーウィング、充電ケーブルです。
ハウジングは小振りです。イヤーピースで固定するタイプであまり奥まで入れる形状ではありません。固定が上手く行かない場合は付属のイヤーウィングを使うときっちり固定できます。
音質
Smabat AT-20は3種類のモードが実装されており、ハウジングをタッチするとMUSICモード(結構ドンシャリ)→LIVEモード(弱ドンシャリ)→CINEMAモード(ドンドンドンシャリ)の順に切り替わります。
箱出しは低音のボワ付きが感じられましたがひと晩のエージングで解消しました。低音ドンドンのCINEMAモードでは気になると思うので軽くエージングした方が満足できると思います。MUSIC、LIVEモードで使用するなら使いながら鳴らしていけば十分かもしれません。
主な確認環境はPC→REIYIN WT-HD06(Amazon)でSBC接続、音源はFLACファイル・Youtube動画・Amazon Musicなどです。他、スマホ(Xperia X Performance)とFiio X7 MKⅡでも確認しています。
なお付属イヤーピースは若干高音が抑え気味で低音も少し軽くなっています。AT-20本来の音はもっとドンシャリ気味です。
MUSICモード
付属イヤーピース
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- ドンシャリ傾向
- 高音は刺さらず
- ベースライン強め
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは低音域の下の方と高音域がやや強く出ているドンシャリ型です。中音域が相応に谷になっています。
高音域は低音のドンほどの主張はないものの金属音は刺さる少し手前くらいまで出ていてやや主張もあります。伸びやかというほどではありませんが伸び不足であっさりしすぎているのでもなく、やや余韻も感じ取れます。
中音域はドンシャリ型の谷になっていますが、付属イヤーピースではボーカルが下がりすぎていると言うほどではありません。ただし低音をきっちり拾うイヤーピースに変えると音量的にベースラインに負けそうになることがあります。
人の声や物音は比較的現実の音に近い高さに聞こえます。もうちょっと高音が出ていたら物音含めかなりリアルに聞こえるのではないかと思います。耳の若い人ならもっと解像度が高く感じられるかもしれませんね。
低音域はアタック感がやや強めです。重低音は20Hz近くまで聞き取れますが下の方はかろうじて振動が聞き取れるくらいです。しかし実際はもう少し出ているので、重低音が欲しい場合はイヤーピースを変更すると良いでしょう。
付属イヤーピースでは低音が出すぎていないのでこもりは感じないのですが、変更した場合にイヤーピースによっては低音が強すぎて濃いというか中音域まで若干曇っているような印象になることがあります。
音の距離感、音場の広さは普通です。分離と定位は良好です。情報量と解像度はイヤーピース次第なところはありますが、価格からすると悪くはないと思います。
付属イヤーピースで使うなら個人的にはMUSICモードが一番バランスが良く使いやすいでしょう。また、MUSICモードでイヤーピースを交換して低音がしっかり出るようになると生楽器演奏で低音が強すぎると感じることが多いので、よく聞く楽曲によっては付属イヤーピースがベストという場合もあるかもしれません。
A-Focus es-T1
A-Focus es-T1(SML各2ペア666円/Amazon)はコスパの良いイヤーピースです。比較的何にでも合いやすく、KZイヤホンとの相性も良いので1セット持っておくと重宝します。このイヤーピースは傘の色が違いによる音質の差はかなり小さいですが個人的にはクリアがおすすめ。
AT-20とMUSICモードとの組み合わせでは付属イヤーピースで少し抑えられていた高音のピークが出て低音も強まり、高音にも低音にも寄らないドンシャリ傾向になります。多くの人が使いやすいバランスだと思います。
しかしその分ボーカル帯域の凹みが相対的に大きくなってしまうため楽曲によってはボーカルが付属イヤーピースで感じるよりも音量的に小さく聞こえる場合があります。
AZLA SednaEarfit Short
AZLA SednaEarfit(909円~1,491円/Amazon)は低音から高音までイヤホンが出している音をしっかり拾いつつタイトでギュッと詰まったような音になりやすいイヤーピースです。装着が浅くなりやすい人はShortではない方のSednaEarfit(Amazon)でも良いかもしれません。
全域がはっきりしているのですが特に低音の強まりが顕著に感じられるためドンがすごく強まります。付属イヤーピースよりも低音側に寄って濃くなったような印象です。
FAudio FA Vocal
FA Vocal(3ペア1,936円/Amazon/楽天市場)は中高域を強化する傾向のイヤーピースで、MUSICモードとの組み合わせでは付属イヤーピースの高音をしっかり出しつつ低音も少し強めたようなバランスになります。
しかしA-Focus es-T1同様、ボーカル帯域の凹みが相対的に大きくなってしまうため楽曲によってはボーカルが付属イヤーピースで感じるよりも音量的に小さく聞こえるようになります。
final Eタイプ(クリアレッド)
final Eタイプのクリアレッド(980円/Amazon/楽天市場)は低音が付属イヤーピースよりは強まるものの同シリーズの傘に色がついたタイプほどではないので、低音が強すぎるのが好みではないけれど付属イヤーピースの低音は足りないという人に向いています。
やや音がゆったりと広がるような傾向があり付属イヤーピースよりも自然さがいくらか向上します。ちょっとLIVEモードに寄ったような感じになります。
LIVEモード
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- 低音控えめ
- 音場広め
- 分離緩め
- 弱ドンシャリ
人の声や物音は若干高音側に寄って聞こえ、軽いです。ボーカルは少しドライか、装着が甘いと若干のラジオっぽさが感じられることもあります。低音成分が足りない印象です。
低音域は3つのモードの中では最も控えめです。付属イヤーピースでは不足を感じます。イヤーピースは変更推奨です。
イヤーピースを変更することで全体的な軽さとごちゃつきは解消し、AT-20の3つのモードの中では比較的ボーカルがよく聞こえる弱ドンシャリとして幅広いジャンルで使いやすいバランスになります。
ePro Horn-shaped
ePro Horn-shaped(SML各1ペア2,700円/Amazon/楽天市場/ヨドバシ)はLIVEモードにおけるライブ音源の再現性と臨場感が最も良い組み合わせだと思います。低音が適度に強まり、高音の出音や音の広がりも妨げていません。
ただしSMLのサイズ差がやや大きいためサイズが合わない人もいそうなことと価格が高いのが難点ですが個人的にはLIVEモードではイチオシ。
FAudio FA Vocal
FAudio FA Vocal(3ペア1,936円/Amazon/楽天市場)は中高域を強化する傾向のイヤーピースです。
付属イヤーピースよりもきっちり低音が出ることからAT-20のCINEMAモードとの組み合わせでは付属イヤーピースに低音を足したようなバランスで、やや中高域寄りの弱ドンシャリくらいです。
radius DEEP MOUNT
radius DEEP MOUNT(3ペア1,070円/Amazon)は低音強化タイプのイヤーピースです。
AT-20のLIVEモードでも低音を強化しつつ、やや音の広がりが抑えられタイトになります。LIVEモードの音の広がり感が好みでないならちょうど良くなると思います。ただしライブ音源の臨場感はおすすめイヤーピースの中ではやや劣っています。
CINEMAモード
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- ベースラインかなり強め
- 低音はかなりドンドン
低音域は多少装着が甘くなって隙間ができていたとしてもまだ強いという強烈仕様です。量が多めかつ若干膨らみ気味で、低音をタイトにしてくれる傾向のあるイヤーピースでも輪郭が緩めです。タイトさの程度が中~高音域と差が大きく付属イヤーピースとは非常に相性が悪いです。
低音の出音次第ではクリアさがかなり落ちるため低音の生楽器が多い楽曲との相性は悪いです。ほぼ電子音で構成されたPerfumeの楽曲のようなジャンルには合わせられるようです。
低音のドンドン以外は意外と上手くまとまっているのか音場の破綻はないようです。ドンシャリバランスのドンだけを限界まで強めたような音色なので、強いドンが欲しい!と熱望している人は一聴の価値あり…なのかな?
final Eタイプ(クリア)
final Eタイプのクリア(980円/Amazon/楽天市場)は低音が減り、付属イヤーピースよりは締まりが良いので高音とのバランスがいくらか取れてきます。しかし低音の生楽器が入っていると中~高音域がぼやけるのは解消しきれません。
クリスタルチップス(Mコア)
クリスタルチップス(3ペア1,927円/Amazon)はウレタンとしては比較的高音の減衰が小さいイヤーピースです。コンプライはコスパが悪い、高音の減衰が著しいと感じているユーザーに人気があるようです。
ウレタンの効果で音の広がりが抑えられるので低音が締まり切れずに中~高音域までぼやけてしまう点についての改善効果は高めです。生楽器はそれでもまだぼやけ気味。
Fanmusic P006
Fanmusic P006(SMLウレタン各1ペア950円/Amazon)は低音が弱るシリコンイヤーピースと高音が弱りにくいウレタンイヤーピースがセットになった商品です。シリコンの方は意外とスカスカにならずうまいこと低音を減らしてくれるので低音が強いと感じた時はまず試すイヤーピースです。なお現在中国発送のみ。
ひたすら強いCINEMAモードのドンを弱められる数少ないイヤーピースです。弱めてもまだ強いのですがおすすめする中では一番低音の輪郭にぼやけがありません。
その他
装着感
私の耳の形状ではケーブルが下に垂れる装着方法のイヤホンは固定が浅くなることがあり少し心配でしたがLサイズの付属イヤーピースで問題なく固定することができました。ケーブルの重みで外れそうになることはありません。リモコンの配置上、耳掛けは少々厳しいかと。
音漏れ・遮音性
ハウジング上部にスリット状のベントがあり、そこから音漏れがあります。図書館など静かな場所で使用するには適さないでしょう。遮音性も相応です。
連続再生時間
連続再生時間は約8時間です。SBC接続、やや小音量で連続再生し、約8時間動作することを確認できました。公称値通りです。
通信強度
通信強度は所有しているBluetoothイヤホンおよびBluetoothリケーブルの中でも強い方です。自宅マンション内で他の機器なら途切れ始める距離まで離れてもAT-20では途切れはありません。離れた位置のままでアンテナ部分を手で握っても問題ないので遮蔽物にもかなり強いようです。
自宅内で使いながらWi-Fi接続でネットを見ている限りでは途切れたことはありませんでした。屋外では確認していません。
タッチ操作
フェイスプレートのマーク部分がタッチセンサーになっています。センサーの感度はかなり良く、装着時に意図せずタッチしてしまい反応することがあります。
ハウジングの背面同士を近づけすぎると誤作動を起こしモード切替えし続けたりタッチセンサーが反応しなくなったりすることがあります。いずれもリモコンの再生ボタンを何度かON/OFFするか電源OFF→ONで再起動すれば直ります。
ホワイトノイズ
ホワイトノイズは中年の耳ではほとんど気になりませんが、ホワイトノイズが出やすい一部音源では小さく聞こえているのがわかることがあります。
音が遠くなってノイズが大きく出る時はモード切替に失敗していますのでリモコンの再生ボタンを何度かON/OFFするか電源OFF→ONで再起動した後モードを切り替え直してください。
総評
MUSICモードは張りがあって元気になる音色です。やる気が刺激されて活動的な気分になれます。生楽器メインの楽曲では私の好きなバランスでは鳴らない(低音が強すぎる)のでポップス、ロック、打ち込み系などの元気な曲で気合を入れたい時によく使っています。
LIVEモードは音の距離感が近すぎず、しかし他のモードよりボーカルが出てきます。分離が自然です。定位がピタッとしすぎるのが好みでないなら良さそうです。付属イヤーピースではメリハリ不足で音がごちゃ付いたり軽くなったりするようなので、変更することをおすすめします。
CINEMAモードの低音はかなり強く、サイズの合っていないイヤーピースで多少隙間ができていても低音不足を感じないどころかまだ強いくらいです。ポップスがまるでクラブミュージックのようです。個人的にこの低音はちょっと強すぎるので使用していません。
通信強度などBluetoothイヤホンとしての機能は優秀です。モード切替え以外の操作は物理ボタンになっており必要以上にタッチに頼らなくて良いのも個人的には嬉しいです。
ただし頻繁に首から外す使い方には向かず、置いた時にハウジング同士が近づいて誤作動が起こりタッチに反応しなくなったり、逆にいつまでも勝手にモード切替を繰り返すことがあります。コントローラーの再生ボタンのON/OFFを何度か繰り返すか電源OFF→ONで再起動すれば復帰します。
自宅でなにかしらの作業中はTWSを使うことが多かったのですが、やる気がアップするのでAT-20のMUSICモードをよく使うようになりました。運動する人にも良いんじゃないでしょうか。
Smabat AT-20をおすすめできるのは、やる気が必要な作業をする時に使用するBluetoothイヤホンが欲しいと思っている人(MUSICモード)、低音が盛られたBluetoothイヤホンは好みではない人(LIVEモード)です。ほぼ電子音だけで構成された楽曲を主に聞く人で低音ドンドンを熱望している人(CINEMAモード)に聞いてもらったら面白いような気もします。
Smabat AT-20をおすすめできないのは、音漏れを気にする場所で使いたい人、遮音性を重視する人です。また、付属品だけで使いたい人はMUSICモード以外は不満が大きいと思います。
ケーブルでつながっているタイプのBluetoothイヤホンで最近発売された製品は他に持っていないので比較ができませんが、MUSICモードが好きな音だったので満足です。価格にも十分見合っていると思います。
- Smabat AT-20
- 3,599円 – WTSUN Audio 5/3
- $39 – Wooeasy Earphones 5/3