apt-X Low Latency(apt-X LL)に対応したBluetoothイヤホン『SHADOW FUSION』のレビューです。今回は輸入代理店さんからの提供レビューです。
目次
製品仕様
- メーカー:SOL REPUBLIC
- 商品名:SHADOW FUSION
- 型番:SOL-EP1200
- Bluetooth Ver.5.0
- コーデック:SBC, AAC, apt-X, apt-X LL
- インピーダンス:16Ω
- 再生周波数帯域:20~20,000Hz
- 連続再生:約10時間
- 最大待機時間:約240時間
- 満充電時間:約1時間
- ネックバンド式
- IPX5防水
- クイックチャージ機能
- マルチポイント接続
- 重量:32g
- 価格:14,990円
- 発売日:2019/03/14
- 一部メーカー取り寄せになっていますが在庫状況に問題はないそうです。
- 詳細はメーカー公式サイトから。
使い心地とデザイン
外箱のデザインも良いですね。
中はこんな感じ。
付属品は本体と同色のキャリングケース、USB-C充電ケーブル、イヤーピース、説明書です。
表面はバッテリーとコントローラー付近の一部を除きポリエステル生地で覆われており、なかなかおしゃれです。仕事でも普段でもジーンズスタイルが多いので合わせやすいブルーを選択しました。他にはブラックとグレーがあります。
ハウジングにはマグネットが内蔵されているので使用していない時はくっつけておくことができます。
ケーブル
ケーブルは平たいきしめんタイプです。この部分自体のタッチノイズは小さくはないのですが、首を振っても体に当たらないように上手くデザインされています。私は首があまり長くないのでたわみがやや大きくなってしまうものの、ケーブルが気になることはありません。もしも体に当たる時はケーブルがねじれているので直してください。ちゃんと整えれば当たらない位置に来ます。
ケーブル部分は肌当たり、タッチノイズ、デザインを考慮してかエンボス加工のようになっており、単なるツルツルのプラスチックケーブルではありません。安っぽく見えなくていいですね。
充電・再生時間
クイックチャージ機能が搭載されており15分の充電で3時間の使用が可能です。満充電には約1時間かかります。連続再生時間は約10時間なので、仕事中に聞きっぱなしにするような使い方をしても足りそうですね。実際に試してみましたがいずれもスペック通りでした。
電源ボタンを短く1回押すとバッテリー残量表示のライトが光ります。バッテリー切れ直前になると充電するまでガイダンス「Battery’s Low. Charge now.」が定期的に流れるようです。そのためバッテリー切れギリギリまで聞くことは難しいです。充電しながら使用することもできません。
充電端子のカバーは充電ケーブルが当たらないように工夫がされています。「本体が壊れる前にカバーがちぎれるんだろうな…」と感じるBluetoothイヤホンは非常に多いので素晴らしい。特に防水の製品はここがむき出しになっては意味がありませんから。
コントローラー
コントローラーは再生(真中のボタン1回押し)・停止(真ん中のボタン1回押し)・曲送り(上側のボタン長押し)・曲戻し(下側のボタン長押し)・音量調節(上側のボタンを1回押すたびに音量アップ、下側のボタンを1回押すたびに音量ダウン)の他、通話機能です。
良いと思ったのはリダイヤル機能が付いていないこと。音楽用イヤホンには操作ミスを考えるとリダイヤル機能は不要だと思っているので、個人的には非常に嬉しいです。
音量は機器によって連動する場合と別々に扱える場合があります。私のスマホ(Xperia X Performance)では連動し、音量ボタンを操作するとスマホ側の音量が変わります。Windows PC(トランスミッターはBT-W2)ではWindows、再生ソフト、SHADOW FUSIONの全てで別々に音量調節できます。
指で触るだけでボタンの位置が分かるようになっています。反応も良いですし、ギューギュー押さなくても大丈夫。
ハウジングの装着感
ハウジングの装着感は普通です。頭を振っても外れません。もしも耳の形状に合わずすぐに外れたりケーブルが耳元に押し付けられる場合はイヤーピースを好みのものに変更すると良いです。
ネックバンドの装着感
肌に直接触れない服装では首にかけていることを忘れる程度には軽いです。軽い運動をしてもずれにくい程度の重みはあり、ネックバンドの先端にコントローラーとバッテリーが入っているので重さのバランスも良く外れにくいです。柔らかく、体を大きく動かしても変形するので全く邪魔になりません。
肌触りもまあまあ良いです。私は肌が弱いので化繊がこすれるのがとても苦手なのですが、地肌に直接当たるように首にかけてもあまり苦になりません。内側の生地の合わせ目(縫い目)も固くは感じません。
大きくジャンプしたり走り回ったりすると重みのある先端が軽く跳ねて体に落ち鎖骨に当たってしまいますが、ウォーキングやちょっとした小走り程度ではほとんど動かないようです。
電波強度
電波強度は強い方だと思います。8畳のリビングの中心にトランスミッター(送信機)→ 木のドア → 8畳のダイニング → キッチン付近まで問題なし。トイレに入ってドアを閉めるとたまにザザッと言いますが音楽は流れ続けました。
ペアリングしたスマホをポケットに入れたりカバンに入れたりしてみましたが途切れはなく、わざと体で遮るような位置に置いても全く途切れはありません。
Wi-Fiとの干渉も少なめだと思います。Bluetooth機器はパソコンでネットをしながら使用しているとブツブツと途切れが生じることがありますが、SHADOW FUSIONでは今のところ途切れはさほど発生していませんし、生じてもプツッという程度で音切れはしないことが多いです。ただしWi-Fiの電波が多い都会の街中や電車内でも大丈夫かについては地方在住であまりそういう場所がないため確認できません。
キャリングケース
キャリングケースが付属しています。私は本体ブルーを選んでケースもブルーだったので、本体カラーと同色のものが付属しているようです。素材は薄めですが立体感のある造りになっています。ただしハードケースではないので重い物の下敷きになると潰されてしまうとは思います。
音の評価
音質
ベント(音抜け穴)がないのでベントがあるイヤホンに比べるとどうしても抜けの良さが不足しているように感じられますが、このタイプとしては明瞭さは普通だと思います。一応エージングも行ってみましたが少しだけ明瞭になったくらいであまり変化がありません。わざわざエージング時間は取らなくても良さそうな気がします。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
- やや中音域寄り
- 高音は必要十分
- 低音に厚み
- 低音域に少しボワつき
- 音の抜けはイマイチ
- 音の輪郭は柔らかめ
- マイルドな音色
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは、中音域≧低音域=高音域の軽い中音域寄りで、比較的各音域の音量差は小さいです。音のバランス自体はあまり楽曲を選ばないほうだと思います。
高音域はやや控えめです。金属音の刺激は少なく、しかし音域全体で聞き取った時に不足しすぎていると感じるほどではありません。中音域寄りとしては普通だと思います。
中音域は低音域の厚みの影響か少しだけ柔らかなボリューム感があります。そのため明瞭さや音のシャープさはいまひとつで、シャープでクリアな音色のイヤホンと比べればこもりも感じます。ただこれは付属イヤーピースから市販のイヤーピースに変更することでだいぶ改善し、解像度の向上と軽く艶っぽさも感じられるようになります。
低音域はわりと低い音から音量が出ていてなかなか厚みと重みがあります。楽曲によって差がありますが低音の量と種類によってはややボワつきます。これもイヤーピース変更でだいぶ改善します。アタック感は強すぎず弱すぎず適度です。
中音域寄りなこともあってボーカルが聞きやすく、距離感も近すぎず遠すぎずちょうど良いです。ボーカルが演奏に紛れやすい楽曲でも気にならずに聞くことができます。
低音域の厚みと音の隙間を埋めるような広がりで音源の粗が耳に付きづらいので、圧縮率の高い音源やストリーミングサービス音源にも向いています。
付属イヤーピースでは音の発生源が大きく感じられるような広がり過ぎがあるためイヤーピースの変更推奨です。
final Eタイプ(ブラック)なら適度に締まってだいぶ明瞭になり、低音域に少し厚みがありつつもなかなか自然な音色になりました。私はいつもより選ぶサイズが小さかったです。初購入の際は全サイズ入りを注文することをおすすめします。装着感はやや耳の穴の入り口で止まり気味になりますが頭を振っても落ちることはありません。
自然さよりもメリハリを出したいならaudio-technica SOLID BASS(クリアレッド)もおすすめです。
イヤーピースを変更しても解像度、情報量、分離、定位が甘く感じられますが、わりと自然ではあります。音の距離感は普通か微妙に近いですが、低音域の広がりで音場は意外と広く感じられます。
いずれにしてもマイルドな柔らかい音色なので、くっきりした音や激しい楽曲を好む人は物足りないでしょう。
音漏れ・遮音性
ベント(音抜け穴)がなく耳への装着感も悪くないため音漏れは小さいと思います。大きめに音楽を流しながらイヤーピースの穴を指で塞いでみましたが耳をかなり近づけなければ音漏れは聞こえませんでした。
密閉性と遮音性は高すぎず、音量を控えめにすればある程度は外部の音も聞こえます。徒歩移動や軽い運動を想定するならこれは結構大事なポイントだと思います。
ホワイトノイズ
ホワイトノイズ(無音時のサーッと言う音)は小さいです。さほど気になりません。
ガイダンス
ガイダンスは男性の声で、英語です。ちょっと音量的に大きいような気はしますが、うるさい場所でも聞き取れる大きさだとこれくらいは必要なのかなと感じます。
技術仕様
Bluetoothコーデック
SHADOW FUSIONはSBC、AAC、apt-X、apt-X LLに対応しています。送信されている規格を自動判別して接続します。どの規格を使用するかを選ぶことはできません。より上位の規格を優先します。
SBCは下位の規格です。音声の送受信ができるBluetooth機器なら大抵はSBCに対応しています。現行のBluetooth搭載のスマホ、音楽プレーヤー、タブレット、トランスミッター(送信機)なら問題なく使用できるはずです。
AACはiOSで採用されている規格です。従ってSHADOW FUSIONはiPhoneやiPadでの使用にも向いています。再生する音源データの圧縮率によっては必ずしも下位規格(SBC)より良い音質で聞けるわけではありませんが、基本的にはiPhoneやiPadではAACに対応している製品を使った方が音が良いことが多いはずです。
apt-Xは遅延が小さくCD音質まで対応しています。SBCやAACよりもずっと遅延が小さいですが、人が話している動画などをよく見ていると口の動きと声がずれているのが確認できます。
apt-X LLはCD音質かつapt-Xよりも遅延の小さい規格で、超シビアな音ゲーでもなければゲームも不可能ではない程度に高速です。イヤホンはヘッドホンほど音の出ている場所は分かりやすくはないので、敵の位置が音でわかるタイプのゲームにはあまり向きません。映画などは概ね問題なく鑑賞できると思います。
対応するコーデックが多い製品はその分お値段が上がり、例えばSHADOW FUSIONと対応コーデックが同じ製品にはSennheiser MOMENTUM Free M2 IEBT SWがありますが販売価格は2万円以上します。そう考えるとスペックは高いと言えるでしょう。
なおBluetooth機器には送信側の音量が小さすぎるとミュート(消音)してしまい音が途切れる問題があります。全ての機器で起こるわけではありません。チップセットの仕様で、原因となるのは送信機器(スマホ、音楽プレーヤー、タブレット、トランスミッターなど)です。SHADOW FUSIONで症状が出てもそれは本製品のせいではありません。
症状が出た場合、同じ送信機器で根本的に症状を解消する方法はありませんが、プレーヤー側の音量を上げてイヤホン側の音量を下げることで解決はします。もしも音が途切れる場合には音量調節してみてください。ただしSHADOW FUSIONの音量がプレーヤーと連動している場合はこの対処法は使えません。更に詳しい情報が必要なら当ブログの以下関連記事を参照してください。
- 2018/05/29 Bluetooth接続で音声が小さくなると音が途切れる問題の対処法
ペアリング
初回起動時は自動的にペアリングモードになります。近くでスマホや音楽プレーヤーなど送信機器のBluetoothをONにしてそちらもペアリングモードにすれば接続されます。
2回目以降は最後にSHADOW FUSIONが接続していた機器と自動的に接続されます。その送信機器のBluetoothがOFFの場合はマルチペアリングされたもう1台を探して自動接続するか、ペアリングモードに切り替わります。
マルチペアリング
これは2台の送信機器が動いている状態で切り替えることができるわけではなく、2台分のペアリング情報を記憶しておくことができる機能なようです。
マニュアルによると再生・停止ボタンと音量ボタンの一方を同時に1回押しすると切り替わるようなのですが接続中の機器があると切り替わらず、しかし接続中の機器がなければ自動的に接続先を探しに行きます。接続が切れたのにペアリングモードにならない、2台目に自動的につながらない時にはボタン操作をするとペアリング動作に入ります。
防水
防水機能はIPX5相当です。生活防水なので汗をかいても問題ないようですが小雨でも長時間当たる状況に耐えられるかと言われると微妙かも?
表面素材はポリエステル繊維なので汗ジミの心配は少ないと思います。
総評
見た目のおしゃれさだけでなく、プロダクトデザインとしてなかなか優れています。私はデザイン科ではないものの美術大学を出ているのでデザインや使い勝手の評価は厳しめだと思いますが「この値段だったらこれは気をつけてくれないと納得できないな」と感じる部分はありません。
SHADOW FUSIONは幅広いユーザーに向けてバランスの良い製品です。機能性の高さとイヤホンとしての音質を限られたコストの中で上手く両立しています。Bluetooth機能にコストが割かれるため同価格帯でコストを音質にほぼ全振りしている有線イヤホンに音が負けるのはやむを得ず、それはどのBluetooth製品も同じでしょう。
Bluetooth通信機能は性能が良く、私の生活環境や使い方では不満は全くありません。iOSで採用されているAACと一部Androidで採用されているapt-Xの両方に対応していて、どちらの端末を利用していてもより上位の規格を自動的に選んでくれます。スマホやプレーヤーを複数持ちしている人は便利だと思いますよ。
柔らかめなネックバンドの装着感は快適です。アクティブな動作をしても不快感がなくずれにくいので、体を動かす作業やウォーキングなどの軽い運動にも向いています。首を振った時に頬にケーブルは当たりますがその程度です。
音質傾向は中音域寄りでボーカル曲にも向いており、低音はやや厚く高音は若干控えめながら不足なく出ています。高音に寄りがちな印象のあるBluetoothイヤホンの音とは違う柔らかな音色でした。
付属イヤーピースではオーディオ好きな人には音の広がり方と明瞭さが不満になると思います。是非とも変更しましょう。それでもまだだいぶマイルドな音色なので、激しい楽曲が好きだったり、ドンシャリ傾向やシャキッとした音色のイヤホンを好む人にはおすすめしません。ぼんやりしていると感じると思います。
マイルドな音色のBluetoothイヤホンを探している人、イヤホンの見た目を気にする人、服装とのマッチングを気にする人、AndroidとiOSの両方を使っている人、軽く体を動かしながら使うBluetoothイヤホンを探している人におすすめできます。遮音性が高すぎないので外部音を遮断され過ぎると困る場面にも向いています。
探した範囲ではコーデックを公開している製品の中には対応コーデックがSHADOW FUSIONと同等のイヤホンはSennheiser MOMENTUM Free M2 IEBT SWしか見当たらず、事実上2択なようです。しかしアピールポイントが異なる(Sennheiserはネックバンド式ではない、価格が2万円超え、左右の形状のバランスが均等ではない、音は良いがシャープ系で刺激を感じる人もいるなど)ので、条件が定まっていればどちらを選ぶか迷わないのではないでしょうか。
私にとってはSHADOW FUSIONの方が使い方に合っています。
当初「イヤホンはたくさん持っているし、なんだかんだでさほど使わないかも…」と思っていましたが、これが実は毎日のように使っています。体を動かさなければならない時の使い勝手が非常に良いのです。
2LDKのマンションではリビングで音楽を再生して家事をしながら他のどの部屋に行っても音楽が聞こえなくなることはなく、ケーブルだけでつながっているタイプのBluetoothイヤホンと違って下を向いてもケーブルが垂れて来ないので、すごく快適!
また、私は密閉性が高い有線イヤホンを好んで使用しているため音楽を流していると玄関チャイムの音を聞き落とすことが多いんですが、SHADOW FUSIONでは音量を下げておけばある程度外部の音が聞こえます。宅配待ちの時間帯にはこればかり使っています。
持病の通院の時、呼び出しが聞こえないのでやはりイヤホンは使えていませんでした。今後は使えそうです。花粉症が辛くてサボっているウォーキングを再開したらそちらでも使ってみようと思っています。
ちゃんと音楽を楽しみたい時はやっぱりお気に入りの音色の有線イヤホンやヘッドホンやスピーカーを使うでしょう。ですが今日もこの記事を書きながら宅配を待ちつつSHADOW FUSIONを使用しています。
SHADOW FUSIONはこれまで使っていたイヤホンのどれかと置き換わったのではなく、新たなツールとして私の生活に追加されました。こんなに使うようになるとは思ってなかったです。