Tin HiFi T3(Tin Audio T3)のレビューです。第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。エージング後&付属ケーブルの最終評価だけでよろしければ『エージング200時間』から後ろだけご覧ください。
- 中華イヤホンには個体差・ロット差がある場合があります。必ずしも本レビューと同様の音が出るとは限りません。(最近は個体差は減ってきているようです)
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:Tin HiFi(旧 Tin Audio)
- 型番:T3
- ドライバ構成:1BA+1DD
- インピーダンス:16Ω
- 感度:95dB
- 再生周波数帯域:10Hz-40000Hz
- ケーブル端子:mmcx
- Tin HiFi T3
AliExpressで不良品が届いた場合は英語で問い合わせる必要があります。また、迅速に交換返品に対応してくれるとは限りません。自信のない方・保証が欲しい方は割高でもAmazonでの購入がおすすめです。
- 高域にKnowles製BAドライバー使用
- CNC加工金属ハウジング
同梱品はイヤーピースと8芯5N無酸素銅銀メッキケーブル。
イヤーピースは3種類各3サイズずつ付属しています。赤軸グレーは元々装着されていたMサイズが2組。
CNC削りだし加工の金属ハウジングはビルドクオリティが高く、とても綺麗な仕上がりです。左右色分けのプラスチックリングが微妙にチープですが目立たないので気にはなりません。
ベントは小さいものが外側と内側に1ヶ所ずつ。
ノズル先端のフィルターは目の細かい金属メッシュです。
ハウジングは小振りです。
音質
箱出し
ごく最初のうちに高音がちょっと落ち着いて整ったくらいでその後はあまり変化がありませんでした。箱出しから良い音なので積極的に長時間のエージングを行う必要はないと思います。
エージング200時間
付属イヤーピース(赤軸グレー)
- 高音域≧中音域≧低音域
- 高音のピークは高め
- 中音域に目立つ凹みはなし
- 低音は重みあり
- 全域で引き締まった硬質な音色
- 分離、定位良し
- 情報量多め、解像度高め
- 音の距離感は普通
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは、低音域は下の帯域からちゃんと聞こえてきます。中音域にはあまり凹凸がなく高音域は音量的にも出ていてピークも高めです。音域ごとの音量差は大きくはありません。高音域寄りの弱ドンシャリ傾向という印象です。
高音域は音量的に最も出ていて9kHz前後にピークがあります。個人的には刺さるちょっと手前くらいに感じられるものの金属音などの主張は強く、耳の若い方にはシリコンのイヤーピースでは高音がきついと感じられる可能性はありそうです。
中音域は目立つ凹みはなく高音域にも負けないレベルで出ています。あまり脚色のない音色で、比較的現実の音に近い鳴りなのではないかと思います。
低音域は薄さを感じない絶妙なバランスです。重みもあり、フラット傾向から高音域寄りの音色が好みなら十分しっかり出ていると感じられるでしょう。
音の立ち上がりもキレもやや早いすっきりとした音色で、スピード感の欲しい楽曲との相性が非常に良いです。どっしりめな音色のイヤホンと聴き比べるとT3の方は再生速度が早くなったと錯覚しそうになるレベルの疾走感が得られます。
ボーカルは適度に離れているように感じます。人の声自体は実際の音に近い方なんじゃないかと。艶っぽいボーカルが好みな場合はあっさり感じられるかもしれません。日本語ボーカルのサ行はさほど刺さるとは感じませんが、英語ボーカルの歯擦音は多少感じます。
音の距離感は普通です。音場も特別広いわけではありませんがごくわずかに響くのとベントのおかげか開放感があります。
定位は非常に良く、かなりピタッと位置が決まります。分離も良く、しかし良すぎると感じることも。ホール録音のオーケストラ曲などでは実在感に欠けると感じることがありました。
質の良い8芯ケーブルが付属していることもあり情報量も解像度も十分です。この価格帯でリケーブルせずにこれだけの音が出せれば不満はないでしょう。
クールで硬質な音色です。高音の主張が強いため特に高音成分の多い音はリアルとも微妙に違っています。生楽器との相性は良くきれいに鳴らしてくれるものの生々しさを感じづらいです。高音のピークである9kHz前後をイコライザーでちょっと下げてやるとだいぶ改善することから、リアルに聞かせるためにはややピークが高すぎるのかもしれません。
付属イヤーピース(ブラック)
- 高音の主張が弱まる
- 赤軸グレーより低音のアタック感が音量的に弱い
赤軸グレーよりも高音の主張が弱まるため高音成分が多い音のリアリティが上だと感じます。低音のアタック感が音量的に赤軸グレーよりも弱いので、相対的に中音域がやや出てきているように感じられます。
全体的にメリハリが和らぐので聞きやすいです。赤軸グレーはシャープ過ぎると感じるならこちらの方が良いでしょう。
付属イヤーピース(ウレタングレー)
- 高音の主張が弱まる
- 低音のアタック感は音量的に赤軸グレーより弱くブラックより強い
高音に主張があることは変わりませんが、ウレタンで適度に減衰するため付属イヤーピースの中では一番聞きやすいと思います。低音のアタック感は音量的に赤軸グレーとブラックの間くらいです。
付属イヤーピースの中では聞き疲れしにくいと思います。
T3に付属するちょっとペタペタした触り心地のウレタン素材のイヤーピースは加水分解しやすいため、ヘタって来なくても長期的には交換が必要になってくるかもしれません。似たタイプのイヤーピースは次回おすすめイヤーピース編に書きます。
その他
アンプとDAP
駆動力をあまり必要としないようで、スマホ直挿しでもきれいな音を鳴らしてくれます。しかし適切な駆動力がある方が音がきれいに伸び開放感も向上、音場が広く感じられる傾向がありそうでした。さほどパワフルである必要はなさそうです。
ホワイトノイズがかなり出やすい再生環境ではサーっと聞こえてきますがだいぶ小さい方だと思います。
装着感
小振りで耳にすっぽり収まり、装着感は良いと思います。TIN Audio T2は耳の入口に当たる部分があったのですが、ハウジングの長さが変更されてちょっとだけ長くなっているおかげかT3は当たる部分はありません。
遮音性と音漏れ
小さいとは言えベント(内側と外側に1箇所ずつある穴)があるのと高音寄りの音色なため、イヤーピースの穴を指で塞いで耳を近づけるとシャリシャリ音が漏れているのが分かります。遮音性は普通だと思います。
付属ケーブル
付属ケーブルは8芯5N無酸素銅銀メッキケーブルです。この価格帯のイヤホンに付属するケーブルは良くても4芯でもっと細いことが多いため良いものが付属していると言えます。
比較的柔らかな編組タイプなのでタッチノイズは小さく、取り回しも良いです。熱圧縮チューブで耳掛け(SHURE掛け)用のカーブが付けられています。
Tin Audio T2との比較
Tin Audio T2(以下T2)も所有しているので比べてみます。
ハウジングは耳掛け(SHURE掛け)前提になったため、T3はT2と左右逆になったようなつくりになっています。ちなみに私はT2も耳掛けで使用していましたがフィット感が悪かったので左右を交換(左耳に右ハウジング、右耳に左ハウジング)して使っていました。それが標準になった形ですね。
装着感はT3の方が良くなっています。ハウジングの長さ(画像では高さ)がT3では少し長いです。T2は耳掛けするとハウジングのケーブル付近が耳に当たっていたのでそれを改良したのかもしれません。
T2とT3のすぐに気づく音の違いとしてはT2の方が中域寄りで全体的に耳触りとボーカルが良く、T3はやや主張する高音寄りながらも低音に重みがあり開放的な音場感がかなり良いです。T3を使った後にT2を使うと音場がこじんまりと感じられました。
音の傾向が異なるので単純な上位版とは違うと感じます。
総評
すっきりと明瞭で透明感のある硬質な音色です。きらびやかな高音に見合ったタイトで重みのある低音は非常にバランスが良く、その間に挟まれた中音域も概ね凹みなく鳴ってくれます。適度な伸びやかさがあり開放感のある音場がとても気持ちが良いです。
ただし高音の主張はやや強く、楽器によっては高音成分も多めに感じます。ウレタンフォーム素材のイヤーピースなどで高音が減衰してちょうど良いくらいだと感じる人もそれなりにいるのではないでしょうか。中高音域のリアルさについてはイコライザーで9kHz前後をちょっとだけ下げる、高音を抑えるイヤーピースを選ぶなどすることで向上させることはできます。
低音のアタック感は重みも密度も音量的な大きさも十分ですが低音がドンドンしているイヤホンが好みな場合は物足りない可能性はあると思います。ジャズなどのゆったりした楽曲ではもう少し濃厚さが欲しいと感じました。
スピード感のある楽曲との相性は格別です。分離が良いので細かな音も聞き取ることができます。高音寄りの主張はあるものの意外と騒がしくは感じません。
付属イヤーピースは高音の主張が強い順に赤軸グレー>ブラック>ウレタングレー、低音のアタック感が音量的に強い順では赤軸グレー>ウレタングレー>ブラックです。
付属ケーブルはこの価格帯のイヤホンに付いてくるものとしては質も相性も良く、情報量は多く解像度も高いです。音の傾向が異なる3種類の付属イヤーピースも悪くありません。多くの人が初期装備で満足できそうです。
おすすめできるのは、高音寄りの音が好きな人、ぶ厚い低音域が好みではない人、ちょっとでもこもるのが嫌いな人、スピード感の欲しい楽曲を好んで聞く人です。リケーブルやイヤーピース変更に興味がない人にもおすすめできます。
駆動力によって伸びやかさが大きく違います。可能なら少しで良いので駆動力がある再生環境を用意して欲しいなと感じました。すごくパワフルである必要はないと思います。もちろんスマホでもクリアできれいに鳴るのでおすすめできないわけではありません。
おすすめできないのは、音量的に非常に強い低音のアタック感が欲しい人、ぶ厚い低音がしっかり強めに出て欲しい人、濃い音色が好きな人、生々しさや艶やかさを求める人、主張の強い高音が苦手な人です。
ちなみに耳掛けのクセが付けられていないストレートタイプのケーブルと組み合わせれば耳掛けせずに使うことも可能なことは可能です。ただし耳への挿入が若干浅くなるため上手く支えられるイヤーピースに変える必要がありました。また、この際にもしも耳の形状と合わないようなら左右逆(左耳に右ハウジング、右耳に左ハウジング)に使うと上手く収まる可能性があります。
次回はTin HiFi T3のレビューおすすめイヤーピース編の予定です。付属ウレタンイヤーピース劣化時のおすすめ交換品についても紹介していきます。
- 2019/05/01追記:おすすめイヤーピース編を公開しました。
- 2019/05/01 [レビュー] Tin HiFi T3 (2) おすすめイヤーピース編
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