TRN Conch – 付属品豊富でコスパに全振りかと思いきや音色も達者!TRNの成長が感慨深い1本

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今回はTRN Conchのレビューです。自費購入品です。外装画像等のレビューがご不要であれば『音質』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。ノズルが3種類ある都合上、長文レビューです。

TRN Conchの白背景画像
  • 自費購入品です。
  • イヤホン次第ですが私の耳で設定可能な外耳道閉管共振帯域は7.3~8.5kHz前後です。

製品仕様

メーカーTRN
型番Conch
ドライバー10mmDD (DLC)
ノズル3種の調音ノズル
(Reference / Translucent / Atmosphere enhancement)
インピーダンス30Ω
感度114dB
再生周波数帯域20-20kHz
ハウジング液体金属
付属ケーブル銀メッキ銅 + OFC
販売店価格
TRN 直営店4,550円
TRN Official Store$23.98
[$26.57+6%$1]
*コイン特価への出品あり

私の手元に届いた物は製品イラスト版パッケージでしたが初期ロットでは黒いパッケージだったようです。内容に変更があったかどうかは把握できていません。

TRN Conchの外箱の白背景画像 TRN Conchの内箱の中の白背景画像

プラグ脱着式ケーブルと2.5mm/3.5mm/4.4mmプラグ、調音ノズル全3種、シリコンイヤーピース2種類各3サイズ(うち一種はTRN T-Ear Tips)、フォームイヤーピース1種類1サイズ、金属製ハードケースが同梱されています。

TRN Conchと同梱物の白背景画像
付属品の充実度が目を引きます。

“Conch”は日本語では「巻き貝」。中華イヤホンとしてはめずらしい、いい感じにコンセプト通りのデザインですね。

TRN Conchのハウジングを左右並べた白背景画像1
確かに巻き貝デザイン。

ハウジングは液体金属製です。重量感から想像するに響きすぎない程度の厚みはあるようです。装着していて重いと感じるほどではありません。全体的にきれいに仕上がっています。

TRN Conchのハウジングを左右並べた白背景画像2
ハウジングの仕上がりは良好です。

ハウジングはノズルに向かって先細な形状です。イヤーピースで浅く調節することもできますし、イヤホンの形状は外耳道に挿れやすいに越したことはありませんね。

TRN Conchのハウジングを真横から撮影した白背景画像1 TRN Conchのハウジングを真横から撮影した白背景画像2 TRN Conchのハウジングを真横から撮影した白背景画像3 TRN Conchのハウジングを真横から撮影した白背景画像4

付属品

調音ノズル

異なるフィルターが入った調音ノズルが付属します。予めハウジングに装着されている黒(Reference)、青(Translucent / 黒よりも高域寄り)、赤(Atmosphere enhancement / 黒よりも低音寄り)の3種類です。ねじ部の精度はそこそこで滑らかさはありません。無理やりねじ込んで溝を潰さないように注意しましょう。

TRN Conchのノズルフィルターの白背景画像1 TRN Conchのノズルフィルターの白背景画像2
TRN Conchの調音ノズルを外した状態のハウジングの白背景画像
ノズルを外すとDDのカバーが見えます。

付属ケーブル

付属ケーブルは単体でも販売されているプラグ脱着式のTRN RedChainです。2.5mm、3.5mm、4.4mmすべての交換プラグが付属しています。出始めの頃のTRNのプラグ脱着式ケーブルはプラグ部分が低品質で超低域の減衰が大きめでした。ですがRedChainでは特に問題なさそうです。

TRN Conchに付属するTRN RedChainの白背景画像 TRN Conchに付属するTRN RedChainパーツの白背景画像

Conchの音色は黒ノズル+T-Ear Tips+RedChainで調整されているのではないでしょうか。音色の相性はかなり良いです。ただしケーブルによってかなり味付けされており、RedChainの音色から微調整したい場合にケーブルの選択肢は限られそうです。

TRN RedChainの音の変化傾向は高音は鋭さ強めで低音が厚めで濃いめです。Conchの音色は濃すぎる、高音が主張しすぎると感じるならリケーブルすると軽減させることができますが、高音の解像度が落ちたり空間の立体感が衰える場合もあります。

付属イヤーピース

T-Ear Tips

シリコンイヤーピース2種類各3サイズとフォームイヤーピース1種類1サイズが付属します。うち1種類は単体でも販売されているTRN T-Ear Tipsです。T-Ear TipsはTRNの低価格帯イヤホンにはMサイズしか付属しませんが、Conchには3サイズすべて付属します。

TRN Conchに付属するTRN T-Ear Tipsの黒背景画像1 TRN Conchに付属するTRN T-Ear Tipsの黒背景画像2

T-Ear Tipsの傘は汚れが付きやすく、グリップ力が落ちると低音を逃すようになります。まめに清掃しましょう。普段はウェットティッシュで拭くだけで十分です。

T-Ear Tipsは単体でも売られています。ヘタって来ると音にも影響しますから、相性の良いイヤーピースが買い足せるのはありがたいですね。

ストア価格
TRN 直営店980円
TRN Official Store$4.88

シリコン黒イヤーピース

黒い丸型イヤーピースも付属していますが、デフォルトの黒ノズルにはT-Ear Tipsとの方が好相性です。

TRN Conchに付属するシリコン黒イヤーピースの白背景画像1 TRN Conchに付属するシリコン黒イヤーピースの白背景画像2 TRN Conchに付属するシリコン黒イヤーピースの白背景画像3

フォームイヤーピース

TRNのフォームイヤーピースがMのみ付属します。SMLセット販売されているフォームイヤピ(AliExpress)と同じ物なのかは不明です。所有する古いTRNフォームイヤーピースは日焼けで退色したのか元々少し色合いが異なるのか、Conch付属のフォームイヤーピースよりも白っぽいです。購入は5年前で劣化しているため比較はしません。

TRN Conchに付属するフォームイヤーピースの白背景画像

私は外耳道開口部付近が広め太めなため潰さなくてもそのまま耳に入り過剰には潰れません。ですがこのサイズは太すぎて使えない人も少なくないのでは。無理に挿れて軸の中が潰れると高音が減衰してしまい更に音が変わります。

今回は評価対象外としますが、刺さり対策に試してみるのはアリだと思います。

音質

エージング

100時間エージングしています。しかし序盤2日目以降の変化はほとんどありませんでした。箱出しのバランスに違和感がなければエージングしなくても良いと思います。

装着の深さと角度

外耳道閉管共振は8.3kHz辺りです。私の耳とT-Ear Tipsでは左L右Mでノズル位置は深め、イヤーピースの傘が耳の奥につっかえる位置からわずかに引き抜いて公式周波数特性通りだと思います。

ドライバーが十分に温まっていないと実力通りの音が出ません。冬には室温16℃から装着して高域がチキチキ言わなくなるまで5~10分、超低域が安定するまで含めると20分くらいかかりました。私は冬の間は予めこたつで温めてから使っていました。

暖かくなってきてからは冷えの影響はほとんど感じませんが、超低域が安定するまで時間がかかるのは同じです。私は歪みが出にくい穏やかなバラードやクラシックをしばらく聴いてます。

公式の外耳道閉管共振周波数に近い9kHzの刺激が強めに感じられるため、ノズル位置が公式想定位置から大幅にずれるよりも軽微にずれた位置で耳障りさを感じやすいです。

例えば槇原敬之の『No.1』(Youtube)で鳴っている金属音(グロッケン?)の音の一部には9kHz辺りの高音が強めに含まれており、Conchと私の耳では適正位置に装着できていないと刺さりを強く感じます。

また、鳴らし始めた時とドライバーが温まった状態では望ましいノズル位置が異なります。使い始めに合わせてもConchが十分に温まった頃にはまた耳障りさが出てきているはずです。再調整してください。

評価環境

ほとんど騒音のない屋内(室温約23℃)で聴いていきます。音源は主にwavとFLACです。Amazon Music、Youtube Music、Youtubeの動画も使用しています。

  • Youtube、Amazon MusicではラウドネスノーマライゼーションをONにしています。

主な評価機器は以下の通りです。音質評価ではフラット傾向の機器を中心に選択しています。特記していない限りは私の聴力そのままで聴いています。PCからの再生はfoobar2000+ASIOです。

  • FiiO Q5s Type-C (AK4493EQ *2 / 220mW~@32Ω)詳細
  • Cayin N3PRO (AK4493EQ *2 / 3.5mm 250mW 真空管使用時 130mW@32Ω) 評価音量:3.5mm/High 11前後)詳細
  • iBasso DX240 (ES9038Pro / 最大出力 3.1Vrms/281mW @32Ω)評価音量:3.5mm/Low 13前後
  • Xperia 1 ii (オーディオ詳細不明) 評価音量:3.5mm Youtube Music使用時15%前後詳細
  • FiiO Q5s Type-CとPCとの接続にはAIM電子 USAC-005 (OFC+純銀コート/SPセパレートフラット構造)を使用しています。⇒公式製品情報

付属ケーブル(3.5mm)+黒ノズル

付属ケーブルのTRN RedChainに3.5mmプラグ使用、黒ノズルで聴いていきます。

TRN Conchと黒ノズルとT-Ear Tipsの組み合わせの白背景画像
高音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中高域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
中音域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
中低域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
低音域の音量
3.5
★★★★★
★★★★★
超低域の音量
3.0
★★★★★
★★★★★
  • 超低域~中低域は適度な下支え
  • 中~中高域は情報量多め
  • 高域は鋭く強めで刺さる少し手前

周波数特性

まず周波数特性チェック用のスイープ音源とトーンジェネレーターで耳で聞いてチェックして行きます。

下は25Hzから聴こえるものの28Hz以下は音量的に小さめ、徐々に強まり300Hz付近が低音側の山のてっぺん。聴覚上は低域と中低域の境目辺りが低音の強めな部分です。600Hz前後に谷、2kHz台半ばと4kHz台前半強め、8.3kHz辺りに外耳道閉管共振、11kHzにピーク。中高~高域は細かめにアップダウンしています。

軽く中高域寄りで低音側には厚みがあり中~中高域はわりとニュートラルです。

高域/中高域

高音域は楽器が主に出す周波数によっては刺さりを感じるギリギリくらいまでしっかり出ています。ドライバーが温まってくるまでは若干金属質なチャリチャリした高音が出やすいものの、温まってから装着を調整しなおせば気にならなくなります。

グロッケンの金属音には冷たさと明るい鋭さが感じられます。スネアを叩く音にはやや音量的な主張の強さがあり、Jamiroquai『Cosmic Girl (Remastered 2006)』(Youtube)のチッチキチッチキというスネアのリズムはほんの少しだけ音量大きめに聴こえやすいです。ですが中高域が騒がしくなりやすいJPOPも違和感なく鳴らします。

Whitney Houstonの『I Wanna Dance With Somebody』(Youtube)では、Conchが実力通り鳴り出してからもエレキギターの歪みが微妙に強いような気がします。

ドライバーが温まっていて適正位置に装着できていれば高音がしっかり出ているわりに聴き疲れません。ただし超低域~低域の聴力に衰えがある方はかなり耳障りで歪みを感じる可能性はありそうです。20分以上聴いていても再生機器変えてもを耳障りさが変わらないなら、その時使っている再生環境で黒ノズル+T-Ear Tips+RedChainの組み合わせは諦めた方が良いと思います。

中高~高域の一部の主張の強さは付属ケーブルのRedChainの影響が強いです。リケーブル、イヤーピース交換、アッテネータ(インピーダンスアダプター)で軽減は可能です。

中域

中音域は味付けが控えめで自然、この価格帯としては情報量多めです。低価格帯のイヤホンには女性ボーカルは良いのに中域のそれ以外はごくごく無難な製品も少なくありませんが、Conchの中域は一番美味しい音域だと思います。

超低域とのバランスによってピアノの艶やかさも失われにくいです。ただしローカットされているJPOPやボカロ曲は超低域不足でドライになることがあります。私はその手の音源をほぼ聴きませんので、ドライさを感じることは稀です。

アンプはないよりあった方が見通しが良いものの、機器が高出力なほどボーカルの高音成分が増えます。声が高めな女性ボーカルの高音が耳障りに感じられる、硬質感を感じて不満な場合は、低出力な機器や3.5mm接続での使用をおすすめします。

超低域/低域/中低域

低音の沈み込みは十分に深く、暗くならない程度に重く、伸びやかで厚みもあります。RedChainの影響で濃いめに傾きやすいです。音量的には強すぎず弱すぎず、音楽を楽しめる適度なバランスです。3.5mmかつ機器が低出力なほど音色が濃く厚くなりやすいです。

公式周波数特性通りに聴くことができていないと良さを堪能しづらい気がします。外耳道長が開発想定より長いと寒色系だったりドライだったりする可能性が高まるのではないでしょうか。

おそらく28Hz以下が弱めなことで最近の海外ボーカル曲では重低音の音量がもう少し欲しいと感じました。The Weeknd『Die For You』(Youtube)の深く広がって伸びる重低音は音量的にはさほど強くはなく、イコライザーで30Hz付近を強めたくなります。

JPOPの低音は過不足なくバランス良く鳴らします。キックの音域がパスパスしやすいYOASOBI『もう少しだけ』(Youtube)も重さ不足は感じません。

繰り返しますがConchの超低域はドライバーが温まらないと十分に出て来ません。しっかりめに出した高域の耳障りさと歪みを超低域とのバランスで適度に緩和するチューニングなのか、超低域側の実力が出ていない鳴らし始めには楽曲次第で低音の物足りなさや高音の耳障りさを感じます。

ボーカル

人の声は自然な範囲でやや落ち着いています。ボーカルの歯擦音やブレスは控えめで耳障りさは感じないものの、主にJPOPでドライさを感じることがあります。『中域』で前述した通り、JPOP特有の超低域が少ない、もしくはローカットの影響ではないでしょうか。

人の声の生々しさを感じるほどではありませんがこの価格としてはなかなかのリアリティを感じます。上流(再生環境)の影響を受けやすいため使用機器によっては価格相応か期待外れだと感じるかもしれません。

私の聴力は4kHzが強めに聴こえるのですがConchでボーカルのドライさを感じる音源はかなり限られており、イコライザーで調整する必要性までは感じません。

空間表現、解像度

音場の広さは音源によって違いが大きいようにも感じられますが、実際は音源自体の音場の広さの差を相応に再現しているのだと思います。Conchの高域の伸びと軽微なハウジングへの響きで広めだと錯覚しやすい音源があるため余計に差を感じるかもしれません。音場の外周に来る音との距離はイヤホンとしては普通です。前後の奥行きもそこそこです。

分離はパキッと分かれすぎず連続性がありつつ良好です。音数が多くても聴き取りにくさはなく、変にマスクし合う音域もありません。定位も良好です。

価格のわりには情報量があり、弦楽器の弦と弓毛が擦れる音など細やかな音もけっこうちゃんと聴き取れます。あくまで価格を考慮すればという意味ではありますが、カリッと高精細ではなく一定のリアリティがあるという意味での解像度は十分に高いと感じます。

金属ハウジングへの響き加減は過剰ではなく、広さや抜けの良さを上手く誤認させてくれる程度です。ハウジングは振動しすぎておらず、素材の厚みと重さでコントロールできていると思います。

黒イヤーピース

  • 奥行き浅め
  • ボーカルが埋もれ気味
  • 中域の情報量が減る
  • 相性が良くない

Conchの黒ノズルはT-Ear Tipsで最適化されているようです。黒イヤーピースは相性が悪いと思います。

付属ケーブル(3.5mmプラグ)+青ノズル

次に青ノズル(Trancelucent)で聴いていきます。青ノズルに入っているのはハイパスフィルターでしょうか。黒ノズルと比較すると高域が音量的に強めに出ます。低域の変化はかなり小さいものの高域の強まりで相対的に弱まって聴こえます。

TRN Conchと青ノズルとT-Ear Tipsの組み合わせの白背景画像

T-Ear Tips

  • 抜けと開放感と明瞭さが向上
  • 高域の圧が黒ノズルよりも強い
  • 9kHzの刺さりは黒ノズルよりも軽減
  • コーラスが前に出すぎ
  • バランス的には低音不足は感じない
  • 私は黒イヤピの方が好み

高域のピーク帯域が黒ノズルとわずかに異なるようで9kHzで感じやすい高音の刺さり具合は黒ノズルと大差ないか、逆に弱まる場合もあります。黒ノズルよりも高音の圧を強めに感じ、私自身は大音量は辛いです。楽曲によっては中高域が若干近めで騒がしく感じられます。

抜け、開放感、明瞭さが黒ノズルに勝り、低音はよりタイトで張りがあり明るめです。ボーカルの口元がはっきりして黒ノズルよりも乾き気味です。しばらく聴いて耳が慣れてくればドライというほどではありません。コーラスの主張が強まりやすいです。

黒イヤーピース

  • T-Ear Tipsよりも低音の量が多めで聴きやすい
  • T-Ear Tipsでコーラスが音量的に強すぎるのが改善

青ノズルなら黒イヤーピースの方が聴きやすく、黒ノズル+T-Ear Tipsに少し音色が近づきます。黒ノズル+T-Ear Tipsでノズルの挿入深さを調節しても高音の刺さりだけが苦手な場合は、この組み合わせも試してみると良さそうです。

付属ケーブル(3.5mmプラグ)+赤ノズル

次に赤ノズル(Atmosphere enhancement)で聴いていきます。赤ノズルにはローパスフィルターが入っているようで、1kHzよりも上の帯域がかなり弱ります。

TRN Conchと赤ノズルとT-Ear Tipsの組み合わせの白背景画像

T-Ear Tips

  • 特に1kHzより上の帯域が弱る
  • バランス的に音量は上げる必要がある
  • 中域の情報量が減る
  • ボーカルが埋もれる
  • 奥行きが浅い
  • 解像度が落ちる

他のノズルと比べれば高音の刺さりは感じにくいもののT-Ear Tipsは相性が悪いようで、中高~高域の各周波数の主張の仕方にバラツキが激しいように感じます。

落ち着いた音色で高出力でもボーカルの高音成分が増えづらいものの、黒ノズルや青ノズルよりも全体のバランスとしては劣っているように感じます。また、黒ノズル+T-Ear Tipsで感じる中域の情報量の多さがなくなってしまいました。

黒イヤーピース

  • T-Ear Tipsよりもバランスが良い
  • T-Ear Tipsで衰えた中域の情報量が少し復活
  • T-Ear Tipsで埋もれ気味なボーカルが復活

赤ノズルも黒イヤーピースの方が相性が良いです。軽く中低域寄りの落ち着いた音色で聴きやすく、高音が刺さらず鈍りすぎず。

リケーブル

TRN Conchに付属するTRN RedChainは低音濃いめで高音がシャッキリした音質傾向です。そのためリケーブルする際には濃い音色のケーブルを選ばないとあっさり方向にキャラ変してしまいます。

Conchとの価格を考慮するとちょっとお高いですが好相性だったのはNICEHKC OurOasisです。低音の個性をある程度はキープしつつぐっとクリア、ドライバーの粗を上手く隠して刺さりを軽減できます。また、RedChainよりも装着位置に幅を持たせてシビアに整えなくても良くなります。

TRN ConchとNICEHCK OurOasisの組み合わせの画像
NICEHCK OurOasisはTRN RedChainからのアップグレード向き。

再生環境と出力&駆動力

最近の中華イヤホンの中ではやや音量は取りづらいスペックですが実際は音量が取りづらいというほどでもありません。私は小音量派なためスマホ(Xperia 1 ii)直挿しでYoutube Music利用時は私には本体音量15%前後で十分です。

高出力な機器を使った方がクリアで見通しが良いものの超低域がタイトに弱るため、高出力すぎると相対的にハイ上がりして寒色系に寄る場合があります。また、機器の音色の違いや個性が出やすく、試した限りの所有機では相性が非常に良い機器とどうにもパッとしない機器が分かれます。

ちなみに好相性な機器を順に並べると種類(DAP、ポタアン、ドングル型DACなど)毎にほぼ価格順になりました。付属品だけで上流の影響がちゃんと出るとは、この価格でなかなかやりますね。Cayin RU6やiBasso DX240で鳴らすConchは$30以下とは思えません。

TRN ConchをXperia 1 iiとCayin RU6に3.5mm接続した状態の画像
Cayin RU6とiBasso DX240は特に合う!

ほとんどの機器で、基本的にはバランス接続よりも3.5mmの方が低音の質的に相性が良い場合の方が多いと思います。バランス接続は3.5mmアンバランス接続よりも高出力かる20Hz以下が3.5mmよりも弱めな機器が多いためです。

ドングル型DACアンプを使用する場合には注意が必要です。DACアンプの付属Type-Cケーブルが超低域の減衰の原因になっている場合があります。この減衰がConchの低音に与える影響が大きめで、低音が軽くなる組み合わせもあります。

機器の個性で引き出されるConchの音色はかなり変化します。今回は特に多くの機器で試しましたので、TRN Conchと機器との相性について次回記事でレビューします。

その他

装着感

ハウジングは比較的小ぶりです。ノズル先端に向かって適度に先細った形状は奥までしっかり挿入しやすく、装着感も概ね良好です。付属イヤーピースのT-Ear Tipsは傘にグリップ力があり、ずれてくることもありません。

TRN Conchをシリコン耳モールドにはめた状態の画像1 TRN Conchをシリコン耳モールドにはめた状態の画像2

音漏れ・遮音性

ハウジングの内側に円型のベント、DDの上部に小さいベントが1ヶ所設けられています。ハウジングを耳にしっかり密着させても内側のベントの通気に支障はなさそうです。T-Ear Tipsならこのタイプのイヤホンとしては遮音性も高めです。

TRN Conchのベントが見えるハウジングの白背景画像1 TRN Conchのベントが見えるハウジングの白背景画像2

製造品質

TRNの低価格帯は個体差(という名のチューニング不備/公式周波数特性通り鳴らない)が激しいものの、SNS等を見ている限りではConchはわりとちゃんとしているような気がします。

心配なのは交換ノズルのねじ部の精度くらいです。パッケージを受け取ったら全部のノズルの脱着に問題がないかだけは確認した方が良いと思います。

他のイヤホンとの比較

TRN ORCA

TRN ORCAはConch発売の翌月に発売されたLCP振動膜採用の10mmDDイヤホンです。調音スイッチを備えており、6種類から選択できます。実売価格は$15前後です。

TRN ORCAと付属品の白背景画像 TRN ORCAとTRN Conchを並べた白背景画像

スペックの違いは以下の通りです。DDの振動膜素材と付属ケーブル以外の数値上のスペックは同じです。

ORCAConch
ドライバー10mmDD (LCP)10mmDD (DLC)
ノズルハウジング一体型
3種の調音ノズル
ハウジング一体型
インピーダンス30Ω30Ω
感度114dB114dB
再生周波数帯域20-20kHz20-20kHz
ハウジング液体金属液体金属
ハウジング重量(片側のみ)9.4g8.5g
付属ケーブル銀メッキ銀メッキ銅 + OFC
価格相場$14-17 (2,250円)$23-30 (4,550円)
  • ORCAの方がボーカルややドライで少し歯擦音強め
  • ORCAの方が低音控えめ
  • ORCAの方が音の線がやや細い
  • ORCAには鳴らし始めの耳障りさがない
  • いずれも付属ケーブルと付属イヤーピース(T-Ear Tips)での比較です。
  • Conchは黒ノズル、ケーブルは3.5mmプラグを使用しています。
  • ORCAのスイッチは↓↓↓です。

スペックだけ見ると機器が同じなら同じだけ音量が取れそうに思えますが、音域バランスの影響で再生機器の音量が同じならORCAの方が音が小さく感じられます。ORCAで聴く際にはConchよりも音量を上げています。

公式想定の外耳道閉管共振周波数は同じでもハウジング形状の影響でORCAのハウジング位置はConchで感じるよりもぴったりめです。スイッチ↓↓↓で装着が浅いと低音が軽くなりやすいため、耳の形状との相性が悪い場合は低音の質に不満を感じると思います。

ORCAの方が低音が控えめで相対的に中高域寄りです。ボーカル帯域はConchの方が強く、しかしボーカルが近いとか音量的に大きめなバランスとまでは感じません。また、ORCAは付属ケーブルのまま高出力で鳴らすとボーカルが遠のきやすいです。

ハウジングの金属の厚み自体がConchよりも薄いためかORCAの方が響きが強めです。金属ハウジングに響く音が好みでないなら特にORCAの響きは気になるかもしれません。高域のチューニングの影響も大きいです。スイッチで↓↑↓か↑↑↓に変えると他の設定よりも気にならなくなります。

Conchは外耳道長やや可聴域との相性が悪いと高域側に寄りやすく、高音の刺さりを感じる場合もあります。ORCAは刺さる少し手前くらいに刺激が抑えられており刺さりは感じません。

ORCAは外耳道長との相性が悪いと若干低音が軽く、機器との相性次第では厚みも衰えやすいです。低音の質はConchが上回っています。しかし特にこの点はケーブルによる差が大きいです。ORCAもリケーブルすれば差はもっと縮まります。

TRN ORCAとTRN RedChainとの組み合わせの画像
ORCAはリケーブル必須!画像はRedChainと。

ドライバーの安さを適度にごまかしているという意味ではORCAの方が優れてはいると思います。Conchほど冷えの影響は感じず、気になるほどの歪み感もありません。

ConchとORCAの実売価格差は$10ちょっとですがORCA付属の4芯銀メッキケーブル(おそらくTRN A2)とConch付属のRedChainだけでもそれなりの品質差があり、音質にも影響しています。ORCAはリケーブルすべきイヤホンだと思います。

総評

  • 欠点が少ない万能型
  • とりたてて相性の悪いジャンルなし
  • 充実した付属品でハイコスパ
  • 付属ケーブル(RedChain)と好相性
  • 付属イヤーピース(T-Ear Tips)と好相性
  • 冷えに弱い
  • 最初の10分は実力が出ない
  • 実力通り鳴るまでは歪みが気になる
  • フォームイヤーピースはワンサイズのみ
  • $30以下なら大満足な仕上がり
  • 低価格ポタオデにハマり始めの方に最適
  • ドライバーは価格相応
  • 低音側の聴力が少しでも衰えているなら不向き
  • アンバランス接続向き
  • 高出力すぎると寒色系に寄ったり超低域が不足する

TRN Conchは発売直後から日本人の評価も高く、ハイコスパだと評判ですね。AliExpressでの実売価格$30以下ながら、T-Ear Tips全サイズ、TRN RedChain、金属ケースと実売$15以上の付属品が含まれるパッケージは実際お得です。

TRN Conchと調音ノズルの白背景画像
TRNの成長を感じます。

音のバランスも良好で好みや機器に応じた音色の微調整も効き、ケーブルやイヤーピースを買い足さなくても満足できそうです。再生機器の個性が出やすく超低域のチューニングの影響が大きいものの、黒ノズル+T-Ear Tipsが好みに合わなくても別のノズルで試せば好相性ということもあります。

黒ノズル+T-Ear Tipsで音色がクールな印象を受ける場合は機器が高出力だったり主にローカット音源を聴いているなど寒色系に寄りやすいいくつかの要因があります。もしも好みに合わなくてもカスタマイズしていくことで解決できる場合が多いです。

総合的にかなり頑張っているとは思うのですが、ドライバーがしっかり温まって来るまでは超低域が出きらず音に安さを感じます。最初の10分は実力通り鳴らず、冬に冷え切った状態からなら20分は必要です。付属品を充実させたぶんドライバーのコストはかなり抑えているのかもしれませんね。

また、外耳道閉管共振帯域に近い9kHzのピークが高く、外耳道長が合わないとドライバーが温まってからも金属音に刺さりを感じる可能性があります。(『装着の深さと角度』参照)イヤーピースと装着位置を吟味すれば解決することが多いはずですが、どうしても気になる場合はリケーブルが有効です。

ドライバーの欠点を上手く隠すのではなく、このドライバーで整えることができるギリギリを攻めるチューニングを選択したのでしょう。本気を出すまでは粗に気づきやすくはあるものの、ドライバーが温まって実力通り鳴り出せば価格以上に満足できる音を奏でてくれます。

TRN Conchが同価格帯の他製品に勝る点はコスパのバランスの良さ、楽曲の選ばなさと、機器の個性によって引き出される音色です。

ドライバーは価格相応ですが、知る限りの同価格帯にはConchほど充実した付属品のイヤホンはなかなかありません。ケーブルやイヤーピースを自前で安く調達できるのは現在のTRNの強みですね。消耗品であるイヤーピースが買い足せるのもポイントが高いです。

低価格ポタオデや中華イヤホンにハマり始め、リケーブルやバランス接続にも興味を持ち始めた方にぴったりだと思います。再生機器のグレードが上がればConchの音色もグレードアップしてくれる可能性は十分にあります。破損しない限りは意外と長く使えると思います。

TRN ConchとiBasso DX240の組み合わせの画像
カスタマイズのスターターキットとして便利です。

初期装備のTRN Conchをおすすめできるのは、ポタオデにハマり始めたばかりの人、安価で万能型の金属ハウジングイヤホンを探している人、ケーブルやイヤーピースを買い足さずにワンパッケージで済ませたい人です。

逆に初期装備のTRN Conchをおすすめできないのは、低音側の聴力に衰えを感じる人、高音の刺さりや歪みの可能性は絶対に避けたい人、10分以下の短時間使用も想定している人です。私が聴く限り、Conchは10分以下では実力通り鳴りません。

必要十分な超低域で高音のキツさを緩和するチューニングなため、低音の聴こえが悪いと高音が耳障りです。私は一日のうちでも超低域の聴こえの変化が大きく、一番聴こえが弱っている時間帯は黒ノズルの高音がだいぶ耳障りです。自覚できるほど低音の聴こえが衰えているなら常時耳障りだと思います。

TRN Conchは力作でした。付属品の充実度からも力の入った製品であることがうかがえます。しかし初TRNイヤホンとしてConchが気に入ったとしても既存のTRNイヤホンを気に入るとは限らないのがまた難しいところ。

TRNの高価格帯の評価は以前からそう低くもありませんでしたが、徐々に安価な価格帯にも個性的すぎずバランス型のイヤホンが増えてきています。後はすべての製品で開発想定通りの周波数特性で製造した物だけを出荷できるようになって欲しいです…。

BAがノズルからはみ出した製品を出荷し返品続出したり、イヤホンよりもケーブルを売った方が良いのではと囁かれながらもよくぞここまでと感慨深いです。ユーザーの寛容さとトラブルに対応してきたセラーの働きにも感謝して、引き続き良い製品を送り出して欲しいですね。

TRN Conchは機器との相性編でもう1記事公開する予定です。

TRN Conch

販売店価格
TRN 直営店4,550円
TRN Official Store$23.98
[$26.57+6%$1]
*コイン特価への出品あり