今回からリケーブル編も含め数回に分けてTRN V90のレビューです。第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。エージング後&付属ケーブルの評価だけでよろしければ『エージング100時間~』から後ろだけご覧ください。
- 中華イヤホンには個体差・ロット差がよくあります。必ずしも本レビューと同様の音が出るとは限りません。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:TRN
- 型番:V90
- ドライバ構成:4BA+1DD
- インピーダンス:22Ω
- 感度:110dB/mW
- 再生周波数帯域:7Hz-40000Hz
- ケーブル端子:2pin(0.75mm)
- TRN V90
- 5,899円 – HiFiHear 2022/1/25
- $28.80-29.40→ストアフォロワー$28.20-28.79 – TRN Promo Discount Store 2022/1/25
外箱は白地でシンプルで小さめ。
付属品はケーブルとイヤーピース1種類3サイズです。
スリット状にやや広めのベント(通気穴)あり。内側にも1ヶ所小さな穴が開いています。ノズルフィルターはパンチングです。
フィルターが外れたりBAがはみ出していたりとビルドクオリティに難があったTRN V30以来手が伸びていなかったTRNのイヤホンですがV90はいい感じにできています。表面はつや消しで汚れが目立ちにくいです。比較的傷も付きにくいような。
アルミハウジングは5ドライバイヤホンとしては比較的小振りで非常に軽いです。
音質
箱出し
箱出しは高音の主張が明瞭で低音の重みもあるややドンシャリ。若干低音域が響いていることと想像したほどは低音が強くありませんでしたが、これはエージングで変わります。
エージング100時間~
ケーブルは付属ケーブル、イヤーピースも付属イヤーピースで聞いていきます。
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- 高音の主張はしっかりめ
- 中音域は相対的に少し凹んでいる
- 低音のドンは強め
- 抜け良し
- 伸び良く音場広め
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは低音域は下の帯域からよく出ていて中音域が相対的に少し凹み高音域はピークも高く音量も大きめに聞こえてきます。高音の主張と重みのあるアタック感が音量的に強いドンシャリ傾向です。
高音域はピークも高く、派手すぎない程度にきらびやかで、伸びも良くやや滑らかです。中年の耳で刺さり一歩手前くらいで、現実の音で刺さりやすい楽器に強めの刺激を感じました。耳の若い方は刺激が強く感じるかもしれません。
中音域は比較的自然な音が出ています。英語圏の歯擦音の強い女性ボーカルではわずかに気になることがありました。日本人ボーカルはさほど気にならず。人の声は現実の音に近いと思います。ドンシャリバランス相応の谷があるようですが大したことはなく、しかしボーカル好きな人にはボーカルが少し遠い・音量的にやや小さいと感じるかもしれません。分離が良いので聞き取りづらいわけではありません。
人の声や物音が比較的リアルです。高音の主張は強いですがハイ上がり気味にはならずボーカルの硬質感やドライ感はありません。
低音域は箱出しではあまり強くは出ていませんが1日ほど鳴らせば一気に出てきます。下の帯域からよく出ていて重みがあります。私は重低音出すぎのイヤホンはあまり好みでなく、その理由はピアノのペダル操作音などの雑音や低音の楽器のゴゴゴゴという余計な余韻が大きく聞こえることが気になるためなのですが、V90ではちょっと聞こえることがあるけれどさほど気にならないレベル。許容範囲内です。
低音の量感も適度にあるのにボワ付きや過剰な濃さは感じません。しかしその分艶っぽさも少なめ。アタック感は音量的に強めです。楽曲によっては少しだけ圧迫感を感じるドンッという音が出ることがあります。
付属ケーブルのわりに解像度は高めだと感じます。情報量は普通です。実力は出し切れておらず、いずれもリケーブルで向上します。
アタック感が全域で強めで適度な伸びがあるのにタイトなキレも感じられ、疾走感のある楽曲も気持ちよく鳴らしてくれます。ただしすっきりめなので生楽器演奏は濃さに少し物足りなさを感じました。また、同じく生楽器で少し響いて聞こえて定位が甘くなりやすいようです。分離は良好です。
音場は広めです。音の距離感は中高音域が少し離れていて低音が近い気がします。広さを出すのには再生環境にある程度の駆動力が必要です。
付属イヤーピースは響きを拾いやすいタイプのようなので、エージングしても気になる場合はイヤーピースを交換すると良いでしょう。高音がよく出ているのでウレタンのイヤーピースで高音の減衰を感じている人も不満を感じにくいのではないでしょうか。
その他
装着感
内側の凹凸は私の耳の形状と相性が良くしっかりフィットします。私はイヤホンを浅く装着するのが苦手なのできっちり入るこのタイプの形状は好みです。
音漏れ・遮音性
ベント(通気穴)はDDの上部に加えてフェイスプレート側にスリット状に開いています。そのため相応に音漏れしますが想像したほどひどくはありませんでした。遮音性はやや低く、PC作業しながら音楽を聞いているとキーボードの打鍵音が聞こえることがあります。
再生環境と駆動力
スマホなど駆動力が小さい再生環境では音場がかなり狭まります。5ドライバ相応に駆動力は必要なようです。アンプは使った方が良いでしょう。
付属ケーブル
付属ケーブルは細めでタッチノイズが少しあります。音の傾向は少しだけ低音強め。TRN V90のバランスを崩すというほどではありませんが奥行きが出づらいです。リケーブルするとぐっと音質が向上したと感じることができますので、ぜひリケーブルにもチャレンジして欲しいです。
付属イヤーピース
TRNのイヤホンの多くに付属しているシリコンの赤軸イヤーピースが付属しています。Mサイズの軸だけ傘の表面側まで赤いですが、ここが赤くないものもあるため場合によってはそちらが入っているかもしれません。
リケーブル
現在Amazonで購入可能なケーブルの中から当たりをつけて数本試した中ではTRN T1(Amazon/AliExpress)との相性が非常に良かったです。
TRN T1はAmazonでも低価格(1,800円)で買える安価なミックスケーブルです。TRN V90との組み合わせではボーカルが出てきて、伸びも良くありつつ元気な印象。音場に立体感が出た気がします。また、定位がかなり良くなりました。
情報量と解像度も向上し、出てきたボーカルのリアリティも増すのでボーカル曲を好む人にはぴったりです。価格も手頃です。個人的には虎柄じゃなかったらもっと良いんですけど…。
予算的に問題ないなら16芯銀メッキ+高純度銅のミックスケーブルHiF4827(Amazon/AliExpress)・HiF4828(Amazonでは2pinバランス端子欠品/AliExpress)をバランス接続かつイヤーピースも変更する(私はAET07で試聴)のが良かったです。※HiF4827とHiF4828はプラグ形状(I字とL字)違いの同じ線材のケーブルです。
TRN T1ほどはボーカルが出ていないようですが他のケーブルよりは良く、全体的な印象は付属ケーブルから大きくは変えずに情報量と解像度が向上します。生楽器の質感も良くなります。ただしその分若干マイルド気味にも感じられます。
他にも試したケーブルがありメモを取ってあるので近日リケーブル編レビューも書く予定です。なおリケーブル編を書くつもりと初回レビューに書いていたイヤホンが溜まっていますがしばらく体調が良くなかったため書けていませんでした。ご理解ください…。
総評
ビルドクオリティの問題と他メーカーの音質が安定的に良くなってきていることから見劣りを感じて一時避けていたTRNのイヤホンですが、V90では驚くほどレベルアップしていました。当たりだと思います。
すっきりしていつつあっさり過ぎない、抜けとバランスが良いドンシャリ傾向です。ただし低音を引き出し響き過ぎを収めるためにエージングが必要で、付属ケーブルがチープなのでリケーブルしないと実力が出し切れていません。
中低音域に盛り上がった強調がないこととベントのおかげか量感も適度にあるのにボワ付きや過剰な濃さは感じません。高音の主張はやや強いものの音量的に高音域全体が極端に強いわけではなくハイ上がりでもなく、上手く調節されています。
心配していたビルドクオリティは高くお値段以上に見えます。音については上手く調整されているとはいえ付属ケーブルと付属イヤーピースではお値段相応かちょっと良い出来かなという程度の印象を受けます。しかしリケーブルすることで大きく音質向上し、一気におすすめ度が上がります。
定位の甘さの改善やせっかく上手く表現できているのに少し遠いボーカルなどを出すためにはミックスケーブルが効果的です。低価格帯ではAmazonで購入しても1,800円と安価なTRN T1(Amazon/AliExpress)がおすすめです。ボーカルが出て、定位が良くなり、情報量と解像度が向上してドンシャリ型万能機としての実力が開花します。
なおTRN T1の色柄とTRN V90のネイビーは正直見た目が良くないので、T1と合わせるつもりならブラックを買った方が良いと思いました。
初期装備のTRN V90をおすすめできるのはドンシャリバランスが好み人でボーカルが近いのが好みでない人です。音場の広さを引き出すのにある程度の駆動力がいるのでアンプを使用している人には更におすすめできます。
また、ボーカルが出て相性の良いケーブルにリケーブルしたTRN V90はドンシャリバランスが好みの人に広くおすすめできます。リケーブル後に不満に思う点はありません。
逆にTRN V90をおすすめできないのは、低音のドンが強いのを好まない人、高音が穏やかで聞きやすいイヤホンを好む人、ゆったりした音色が好みな人です。付属ケーブルでは生楽器の質感の良さを好む人にも向きません。
- TRN V90
- 5,899円 – HiFiHear 2022/1/25
- $28.80-29.40→ストアフォロワー$28.20-28.79 – TRN Promo Discount Store 2022/1/25
- 2019/10/31 [レビュー] TRN V90 (1) 音場広めで意外とリアルな中高域のドンシャリ傾向*本記事
- 2019/11/04 [レビュー] TRN V90 (2) おすすめイヤーピース編
- 2019/12/10 [レビュー] TRN V90 (3) おすすめリケーブル編
- 2022/01/25追記:画像を追加、価格情報を更新しました。
- 2019/12/10追記:おすすめリケーブルの記事を公開しました。
- 2019/11/04追記:おすすめイヤーピースの記事を公開しました。
コメント
初めてコメントします。
今までケーブルの差異については懐疑的でしたのですが、
V90にT1ケーブルの組み合わせと付属ケーブルとの差にビックリしました。
特に軽やかな低音と清々しい高音が付属ケーブルと段違い。
イヤピースの有意性は理解してましたが、皆さんがリケーブルに心血注ぐのが分かりました。T2も買いましたが悪くはないですが、T1の方が合ってます。
Markさん、コメントありがとうございます。
その後リケーブル編のレビューを書くにあたってかなり多くのケーブルを試したのですが、やはりドンピシャなのはT1だと感じました。
こういう大当たりな組み合わせを経験するとリケーブルを試さずににいられなくなりますね。
初めまして、magnoliaさんの記事を最近読ませていただかせているイヤホン初心者なのですが
ある方がスピード狂はV90とおっしゃられていたのですが
magnoliaさんのV90の記事では疾走感などについて書かれてなかったのでin HiFi T3のレビュー記事で透明感と疾走感を感じられるイヤホンとおっしゃられていたのでどちらを買うか迷っているのですがどちらがいいのでしょうか?
スピード感とクリア感でいうとどちらがどう優れていますでしょいうか?
教えていただければ幸いです
疾走感と透明感だけで評価したときにはT3の方が上回っているもののV90も疾走感は十分ありますよ。ただしV90は個人的にも巷の評価的にもリケーブルを推奨しているので、その予算も見る必要があります。
T3とV90では音の傾向がだいぶ違います。2択で考えるとT3の方が高音の刺激が強めなことと低音が音量的にはドンドンと強かったり厚かったりはせずすっきりめです。芯がある音色なのでか細さはありませんが、ドンシャリ傾向で低音が強い方が好みなら物足りないかもしれません。
生楽器の多い楽曲をよく聴くならT3の方がきれいで気持ちが良いです。V90はその辺は普通です。また、V90は透明感ではT3に劣ります。明瞭さに不満を感じるというほどではないものの「透明感」と評価するほどではありません。
ちなみに発売されたばかりで評判もまだ聞こえてきませんがV90には後継機(?)にV90sが出ています。あくまでイメージ画像ではありますが商品ページにある周波数特性イメージも形状が似ているように見受けられます。V90sは付属ケーブルもアップグレードしているようですし、購入を急いでいないのならV90sの評価が出るのを待ってみてはいかがでしょうか。
また、もしもご予算があるならTRN VXもご要望に合いそうな気がします。
なるほど、、、予算は一万円以内で購入予定ですし自分は低音があまり好みではないためやはりT3を購入したい意欲が増しました、、、
ですがV90sも出るとのことですのでV90sとVXの比較の評価を見てから考えてみようと思います!
とても丁寧で分かりやすい解説ありがとうございましたm(_ _”m)