今回はBLON BL-05のレビューです。TRI-i3(レビュー)のリケーブル編を予定していたのですが、新型コロナの影響でひとりで作業するまとまった時間が取りにくいため保留にしていたものも含め各イヤホンの1回目のレビューを出していくことにしました。
BL-05のレビュー第1回は箱出しからエージング終了後までレビューして行きます。外装画像等のレビューがご不要であれば『エージング200時間~』から後ろだけご覧ください。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:BLON
- 型番:BL-05
- ドライバ構成:1DD
- インピーダンス:32Ω
- 感度:108dB/mW
- 再生周波数帯域:20Hz-20,000Hz
- ケーブル端子:2pin 0.78mm
- Amazon 5,380円
- DDはBLONの第2世代10mmカーボンナノチューブ(CNT)振動膜
- ケーブル端子は土台のある2pin
BLON BL-05のダイナミックドライバー(以下、DD)にはカーボンナノチューブが採用されています。これはBLON BL-03(レビュー)のDDと同じ素材ですが改良されて第2世代となっています。
外箱はBL-03と同様のTFZ調です…。
付属品は弾丸型シリコンイヤーピース2サイズ、ドーム型シリコンイヤーピース3サイズ、ケーブル、布製巾着ポーチです。
金属ハウジングです。ビルドクオリティに気になる点はありません。
イヤホン側が凸になっている2pinです。専用ケーブルの他にTFZタイプの2pinが使えますが土台は高めになっています。
ノズルフィルターは金網状です。耳に当たる側にベントが1ヶ所あります。
音質
箱出し
箱出し・付属ケーブル・付属イヤーピースではボーカル中心ですっきりめな中高域寄りで低音はやや控えめですがまあまあ下から出ているようです。機器との相性があり、おそらく駆動力が足りないと低音が十分に出せなくて軽くなりやすいような印象でした。
エージング200時間~
エージング50時間経った辺りから低音が出てきました。CNTは硬い素材のようなのでエージングは長めに200時間行いましたが、100時間以降の変化は小さかったです。低音に少しでも不満があるなら就寝中などを利用して50時間ほどエージングすることをおすすめします。
評価環境はPC(foobar2000使用)→aune BU1(Amazon/七福神商事公式)です。音源は主にFLAC、他にAmazon MusicおよびYoutubeの動画なども使用しています。
ケーブルは付属ケーブル(マイクなし)です。付属弾丸型イヤーピースではうまく固定できなかったので、付属イヤーピースはドーム型の方でのみ評価していきます。このイヤーピースは低音が少し弱る傾向があり、高音のピークもごくわずかながら落ちるようです。ちなみにサイズは左L右Mです。
- 『高音の主張』は金属音などの目立ち具合です。
- 『アタック感』は低音のアタック感の音量的な強さ(ドンシャリのドンの強さ)です。
- 低音域から中高音域に向かって右肩上がり気味
- 低音は控えめ
- ボーカル中心
周波数特性チェック用のスイープ音源で耳で聞いてチェックした限りでは低音域は20Hz辺りから振動として聞こえますが音量的にはあまり大きくありません。低音が立ち上がってから高音に向かってあまり大きな音量変化はなく、聴覚上は全体的には軽く右肩上がりなバランスに聞こえます。
高音域はやや主張がありますが刺さりはほとんど気になりません。きらびやかさはまずまず、派手とまでは行きませんが鮮やかさが感じられます。なおこのイヤーピースだとほんのわずかに高音のピークが落ちるようです。解像度は初期装備としては価格相応だと思います。
中音域は音量的にやや大きく、ボーカルが前面に出ています。人の声は現実の声の高さよりもほんのわずかに高めに聞こえやすい気がします。ドライさとサ行の不快感はあまり感じません。高音成分が多いというより低音成分が少ない感じです。
演奏はやや後方からボーカルを際立たせるように鳴ります。生楽器のみの楽曲だと広さを感じて気持ちが良いです。全域の中では解像度が高めです。
低音域は控えめです。低音のアタック感が音量的に強めなBL-03の後継機とのことでもっと強いドンを想像していましたが実際の低音は必要十分な程度。重低音も出てはいますがこちらも控えめで、沈み込みはさほど深くありません。
また、元々少なめな低音の量が再生機器との相性と駆動力不足でかなり軽くなることがあります。相性が良い機器との組み合わせなら低音が抜けがちなこのイヤーピースであっても軽くも薄くもないのですが、相性が悪いとスカスカです。イヤーピース変更とリケーブルでリカバーできるかは検証中。
付属ケーブルは高音がよく出て少し響きが出やすく、このイヤーピースも少し響きを拾いやすいようです。音源相応かちょっとだけ足りない程度の残響具合に聞こえることが多く、しかしリケーブルするとこれが少し衰えてしまいます。この響きが好みでカスタムを想定している人は注意が必要ですね。
分離は非常に良好です。聴覚上右肩上がりに聞こえるバランスの低価格イヤホンにたまにある定位の破綻はなく、生楽器の多い楽曲も気持ちよく聞くことができます。音の距離感は近すぎず、音場はやや広めです。
その他
装着感
付属イヤーピースでは装着が甘くなりやすかったりそもそも人によっては全く固定できなかったBLON BL-03とはハウジング形状が大きく変更になり、イヤーピースも異なるものが付属しています。
しかし装着感が特別良くなったわけではなく、弾丸状のシリコンイヤーピースは私の耳では引っ掛かりが弱くうまく固定出来ませんでした。ドーム状のシリコンイヤーピースは普通に装着できますが固定しやすいというほどではありません。ハウジングは小振りです。
音漏れ・遮音性
遮音性は普通です。イヤーピース変更してきっちり塞いだ状態でPC操作しているとキーボードの打鍵音がある程度聞こえてきます。ベントが耳側なので音漏れは気にしなくても良さそうです。
再生環境と駆動力
重低音のためにある程度は駆動力が必要です。また、低音の量は駆動力というよりも機器の音の傾向との相性がかなりありました。相性の悪い機器しか持っていない人はBL-05を酷評する可能性もあるのではないかと思います。
スマホ(Xperia X Performance)でも問題なく音量は取れます。しかしある程度駆動力がないと重低音が出ず沈み込みが浅くなることが多いようです。
Xperia X Performance+デフォルトのMUSICアプリでは低音の量が増えやすく、イヤホンによっては低音に寄ったりこもったりすることがあります。そのためBL-05だと明瞭さと重低音は微妙なところですがさほど軽くはなっていません。
※ 古いスマホなので使っている人は多くないと思いますがXperia X Performanceは中華イヤホンをイヤホンジャック直差しだとノイズが出やすいです。ご注意ください。
付属ケーブルとケーブル端子
付属ケーブルはおそらくBL-03に付属のものと同じものだと思います。取り回しは普通、タッチノイズは気になりません。耳掛けのカーブは巻きがきつめです。高音がよく出て寒色系に寄りやすい傾向があります。また、BL-05では軽く響いたような高音が出やすいようです。
ケーブル端子はBL-03と同じく土台のプラスチック部分に高さがある2pinです。専用ケーブルの他にTFZタイプのケーブルが使える形状をしていますが土台をカバーしきれません。極性は耳掛けした時に下に来る方がマイナスなのでKZ系と同じようですね。ただしqdc(KZ Cタイプ)は刺さりませんので念のため。
埋め込み2pinに対応したピンの根本に段差があるケーブルは結構出っ張るので、専用アップグレードケーブル以外のケーブルではピンの保護・見た目・耳掛けカーブの装着感を考慮するとTFZタイプの方が安心かもしれません。
BLON BL-03との比較
BLON BL-03(レビュー)はBL-05と同じブランドから昨年初夏に販売開始されたイヤホンです。ハウジング形状が独特で装着感にクセがあり、付属イヤーピースではうまくはまらないという人もそこそこいらしたようです。BL-03は私の耳ではSednaEarfitかスパイラルドット++など大きめで厚みがあるイヤーピースでないと固定できません。しかしきちんと装着できれば音質は好評なようでした。
BL-03は低音および全域のアタック感が音量的に強いため周波数特性以上にドンシャリ傾向と圧を感じやすいイヤホンです。AliExpressの商品ページにBL-03とBL-05の周波数特性上を比較した画像が掲載されており、大きな違いは低音であることがわかります。
同じ条件(アンプはBU1、イヤーピースはSednaEarfit)で聴き比べてみるとBL-05は低音の量がかなり少なく、そのせいもあって周波数特性の変化以上に中高域寄りに感じられます。どの音も低音成分が少ないせいで現実の音よりも少し高めだと感じやすいです。比較するとBL-03の方がだいぶ濃いですね。
高音の主張はBL-05の方が少し強めです。リズムを刻むシンバルの音が入っている楽曲でははっきりと聞こえ続けます。なおSednaEarfitは高音のピークがしっかりめに出るせいもあり、他のイヤーピースでは派手すぎないきらびやかな程度に収まります。
音場の立体感と広がりはBL-05の方が上で、生楽器の多い楽曲の定位の安定感もBL-05の方が良いように感じます。
聴き比べて比較すると概ね周波数特性の比較グラフ通りではあるのかな?
- 高音の主張:BL-05 > BL-03
- 高音域の音量:BL-05 ≧ BL-03
- 中音域の音量:BL-05 ≦ BL-03
- 低音域の音量:BL-05 << BL-03
- 低音の量:BL-05 <<< BL-03
総評
個人的には好きな音です。ボーカル中心で前面に出つつも近すぎず、ボーカルより少し離れて聞こえる生楽器演奏が映える中高域寄りで、低音は控えめながら個人的には不足しているとまでは感じません。しかしながらおすすめする際の大きな懸念点は機器との相性がかなり出やすいということです。
相性が良い機器でなら、控えめながらも低音の量や全体の濃さに不足は感じません。しかしBL-05に耳が慣れてからBL-03に変えると一瞬「濃い!」となり、BL-03に耳が慣れてからBL-05に変えると一瞬「軽い!」と感じてしまうくらいの差があります。高域寄りでないDD機とシャープでフラットな1BA機を聴き比べた時のようです。
初期装備+aune BU1で評価した際の音のバランスは聴覚上フラットに寄るようにチューニングした1BAイヤホン(実際は低音控えめな中高域寄りに聞こえることが多い)にやや似ているというか…。相性が良いと感じた楽曲も重複しています。お高めフラット1BA機の代替にすすめるのとは違うのですが、音のバランスとしては好みが被る部分があるのではないかと思います。
不満は強いて言えば解像度です。しかしコストカット感の強い付属ケーブルと付属イヤーピースの組み合わせとしては普通なので、その分本体にコストが掛かっていると期待してリケーブルを選んでみたいと思います。
付属ケーブルと付属ドーム型イヤーピースの組み合わせのBLON BL-05をおすすめできるのは、低音の量が控えめな中高域寄りイヤホンが好きな人、複数の再生環境を試すことができる人です。
逆に付属ケーブルと付属ドーム型イヤーピースの組み合わせのBLON BL-05をおすすめできないのは、BL-03の音のバランスをとても気に入ってBL-05に上位機としてのアップグレードを期待している人、低音が控えめなのは好まない人です。
BL-03とBL-05はだいぶ音のバランスが異なるためBL-05は後継機ではあるものの単純な上位機とは違うと思います。また、再生機器をひとつしか持っていない人にとっては好評レビューを参考にして期待する音が必ずしも出ない可能性があるため博打感があります。
BLON BL-05は私と好みが合いそうな人にはおすすめしたいのに色々と躊躇してしまう悩ましいイヤホンでした。付属イヤーピースの装着感(きっちり塞げないと更に低音が減ってシャリシャリ)と再生環境との相性(相性が悪いと軽くてスカスカ)が要因となって評価はかなり分かれるのではないかと思います。
イヤーピース交換とリケーブルによって相性の悪い再生環境でも気持ちよく聞けるようになるか検証してみたいと思ってはいますが、十分な時間が取れるかどうかわからないので近日ブログ記事化するかどうかは未定です…。
なおBLON BL-03およびBL-05に採用された高さのある2pinをきちんとカバーする専用アップグレードケーブルが発売されており、Amazonにも銅色の4芯OCCケーブル(Amazon)の取り扱いがあります。
このBLON用4芯OCCケーブルはBL-05との組み合わせでは高音の主張と中高域への寄り具合が軽減して聞きやすくなります。相性は良いと思いますよ。記事公開時点ではBL-05とアップグレードケーブルとの同時購入でケーブルが値引きになるキャンペーンが実施されています。
また、残り時間が少ないですがAmazonのHiFiHear取り扱いのBLON BL-05は5月の月末キャンペーンで20%OFFになっています。⇒追記:月が変わってキャンペーンは終了しました。
しかし冒頭にも書いたとおり、新型コロナの影響で最近は自宅に家族がいる時間が長くひとりで作業するためのまとまった時間が取りづらいです。そのためすでに第1回レビュー済みイヤホンのおすすめイヤーピース編やおすすめリケーブル編の前に他のイヤホンの第1回レビュー記事を挟む見込みです。
リケーブルの記事のリクエストもいただいていますがもう少々お待ち下さい…。
- タグ “BLON” の記事一覧
- イヤホン関係メモ(毎日更新中)