KBEAR Inspiration-S/KBX4937のレビューです。ケーブル自体の音の変化傾向と所有イヤホンとの相性について評価していきます。イヤホンごとの詳細が不要であれば『音質傾向』から後ろもしくは『総評』だけご覧ください。
中華リケーブルには主に超低域に個体差が感じられる場合があります。そのためレビュー通りの音の変化をしないかもしれません。ご了承ください。
- 私の耳は耳穴入り口付近から外耳道が太めです。これまでの経験上、深く装着しすぎるとバランスが崩れる中華イヤホンも少なくないためアジア人の平均から外れる程度には太めではないかと思います。
- イヤーピース変更の提案もしていますが、耳の形状によっては必ずしも私と同じ感じ方になると限りません。ご了承ください。
- イヤホンレビューの見方や用語の説明などは『当ブログのイヤホン・ヘッドホンレビューの見方(2018/10/24版)』をご覧ください。
目次
製品仕様
- ブランド:KBEAR
- 型番:Inspiration-S(KBX4937)
- 芯数:4芯銀メッキ4N単結晶銅/リッツ構造
- ケーブル端子:2pin/qdc(KZ-C)/TFZ/mmcx
- 重量:38g
- mmcx
- 2pin 0.78mm
- qdc(KZ-C)
- TFZ
- 3.5mm
- 2.5mmバランス
- 4.4mmバランス
KBEAR Inspiration-S/KBX4937は銀メッキ4N単結晶銅線を1芯あたり140本(4芯で540本)編み上げたケーブルです。色は白めの銀色、耳掛けチューブ付き、qdcタイプの+ーはKZタイプC仕様(耳掛け時下側が-)です。
太さ相応の重量に加え分岐部のパーツとスライダーが金属製なため、重量級ではないもののイヤホンを装着していてやや重みを感じ、軽く引っ張られています。耳によくフィットし安定装着できているイヤホンと合わせる必要があります。
音の変化傾向
- 所有するInspiration-S/KBX4937は2pin 2.5mmプラグのみ
- 2.5mmメス→3.5mmオス変換アダプターにはAstrotec AT-P01GOLD(Amazon)を使用
- 2.5mmメス→4.4mmオス変換アダプターにはTRI470(Amazon/AliExpress)を使用
低音が重め濃いめで全体的に少しだけ暗い印象になりやすいようです。沈み込みはやや深まりやすいもののわずかではあり、より下の帯域まで出したいなら惜しいかもしれません。
高音の刺激はわずかに強まりきらびやかさが強化されやすく伸びも良いもののスカッとした抜け感は衰えがちで、ほんの少しだけボーカルが前に出てきやすいです。
リッツ構造が効いているのか明瞭さは向上しますが抜けとボーカルの変化で少しだけ音が近づいたような音場が狭まったような印象になることがあります。逆にボーカル帯域が出てくることで相対的にそれ以外が下がったように感じられ、立体感がぐっと向上することもあります。
他のケーブルとの比較
KBEAR Inspiration-C/KBX4936
KBEAR Inspiration-C/KBX4936はInspiration-Sと同じ単結晶銅線を使用したケーブルです。Inspiration-Sはそれに銀メッキしたものだと販売店に問い合わせて確認が取れています。
Inspiration-Cの/KBX4936音の変化傾向は、ほんの少しだけボーカルが前に出てきやすく低音が重めなもののさほど濃くはならず。あまり味付けせずに重くしつつ見通しが良くなりやすいです。
比較するとInspiration-C/KBX4936の方が気持ちあっさりしています。単結晶銅部分は同じはずなのですがInspiration-S/KBX4936の銀メッキが強化した高音が相対的に重さと濃さを強く感じさせやすいのでしょうか。
KBEAR Show/KBX4926
KBEAR Show/KBX4926もハイ上がりを抑制しやすくどっしりめなケーブルです。高音に強すぎる帯域があることで定位が崩れているのを改善してくれることがあります。
どっしりめではあるもののInspiration-S/KBX4937と比べるとややあっさりとしています。低音の沈み込みはShowの方が深まりやすいです。
後述する金属ハウジングの共振抑制には効果がないようです。また、Inspiration-S/KBX4937は相性が良いイヤホンなら一聴して気づくレベルで立体感が向上するのですが、Show/KBX4926にはそういった傾向はありません。
相性の良いイヤホン
TRN V90
TRN V90(Amazon 5,899円/AliExpress)は2019年秋発売の4BA+1DDイヤホンです。高音の主張と重みのあるアタック感が音量的に強いドンシャリ傾向でアルミハウジングを採用したビルドクオリティが当時のこの価格帯としては非常に高く、発売直後から音も見た目も好評でした。
- 2019/10/31 [レビュー] TRN V90 (1) 音場広めで意外とリアルな中高域のドンシャリ傾向
- 2019/11/04 [レビュー] TRN V90 (2) おすすめイヤーピース編
- 2019/12/10 [レビュー] TRN V90 (3) おすすめリケーブル編
ボーカル以外はそのままにボーカルだけが少しだけ近づくような変化があり、付属ケーブルとの組み合わせにおける不満のひとつ、奥行きのなさが大きく改善されます。
なおTRN V90Sとは高域の強めな帯域が近いせいで金属音が強まってしまい相性が悪いです。
TRN VX
TRN VX(Amazon 7,992円→15%OFF/AilExpress)は2020年5月発売の6BA+1DDイヤホンです。ハウジングはマグネシウム合金です。私の購入したVXはかなり早期にステムの接着が外れてしまったため最近になって補修(言及ツイート)するまであまり使用していませんでした。
濃さと厚みが出て少し重心が落ちます。高音の抑制で抜けの良さは少しだけ衰えるものの元々VXはかなりスカッと音が抜けるためか衰えすぎたとは感じません。イヤーピースは付属イヤーピースよりもKBEAR 07(Amazon/AliExpress)との相性が良かったです。
TinHiFi T5
TinHiFi T5(インプレコメント/Amazon/AliExpress)DOC振動膜採用の1DDイヤホンです。内部の空洞を広めに取った薄めのアルミニウムハウジングに力強いDDの音がかなり響いており、私の起き耳にはビリビリと振動が伝わってしまって非常に気になります。そのため制振対策としてPUバンドを巻いて(言及ツイート)います。
PUバンドを巻くことで私の耳に伝わるビリビリとした振動はギリギリ気にならないくらいまで抑えることができますが、Inspiration-S/KBX4937との組み合わせではPUバンドなしでもPUバンドあり以上に共振が抑制されます。
抜けの良さの衰えは大きいです。見通しの良さは十分です。音場も狭まります。
まとめ
- 金属ハウジングの共振抑制が期待できる
- 重心が落ちつつも重苦しくなりにくい
- 好相性なら立体感と奥行きが大幅に向上
- 抜けの良さが衰えやすい
- 音場が狭まりやすい
- ケーブル重量がやや重め
機器との相性で高域が強まりすぎるイヤホンでそれを抑制しつつも鋭さはキープしてくれます。相性が良いイヤホンでは立体感と奥行きが大幅に向上する場合もあります。
高域が強めでハウジングの金属が薄いイヤホンとは非常に相性が良いようで、ハウジングへの共振を抑制しやすいです。金属の種類と厚みにもよるとは思いますが、試した範囲ではハウジングへの高音の響きが強いイヤホンでは高確率でそれが抑えられました。きらびやかさは強まりやすいので高音の鋭さが犠牲になる心配はなさそうです。
ただしスカッと音が広がるような抜けの良さが衰え、中高域を中心に音との距離も少し近づいてしまいます。相性が良ければ立体感が劇的に向上しますが、相性が悪いと音場が狭まったような印象を受けることがあります。
KZ AS16のように機器との相性でハイ上がりになりやすく抜けが良くなりすぎたような方向に高音が強まりすぎるイヤホンとの相性も良さそうです。KBEAR Lark(おそらく高音が強い4kと呼ばれるロット)を高駆動力で鳴らした時のハイ上がり抑制にも効果的でした。ただしAS16とLarkにはもっと合うケーブルがあるような気はします。
低音の重さで重心が落ちるわりに沈み込みはさほど深まりません。ですが重苦しさを感じにくく明瞭さの妨げになるような低音の強まり方をしないのはメリットだと思います。
金属音が鋭く強めなイヤホンとは相性が悪かったです。Inspiration-S/KBX4937が強めやすい帯域と近いため、刺さる方向には強まらないものの音量が強まって本来小さく入っているはずの金属音がしっかり聴こえてくることがあります。